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第32話 ダルセナ

「……あ、あれ……もう、逃げるの無理じゃない……?」


「ごくり……」


 ミミの呟きにつられるように、リアナは思わず唾を飲み込んだ。

 喉を鳴らす乾いた音が、やけに大きく響く。


 そして、影――いや、異形の女が、静かに口を開いた。


「妾は、魔王四天王がひとり……ダルセナ。

 魔王の娘にして、サキュバスの王でもある」


 低く艶を含んだ声が、空気をなぞるように広がる。


「……貴様ら人間を、なぶり殺しに――」


 だが、その言葉は途中で途切れた。


 ダルセナの視線が、セイのもとへ吸い寄せられる。


「……え?」


 目を見開き、虚を突かれたような表情を浮かべるダルセナ。

 射抜くようなその視線に、セイは思わず一歩後ずさった。


「……何故ここにおられるのですか?

 もうお帰りになったものとばかり……!」


「……な、何を言っておるんじゃ……

 わしはおぬしと会った覚えはないぞ。人違いではないかの……?」


 青ざめた顔でそう告げた、その瞬間――

 ダルセナの頬が、はっとしたように朱に染まった。


「そんなはずはありません……妾が、セイ様を見間違えるなど……!」


「……はっ!?」


「せ、セイ様!?」


「えっ……?」


 ミミたち三人の視線が、示し合わせたかのように一斉にセイへ突き刺さる。


 誰も何も言わぬまま、ただ呆然と「セイ様」を凝視していた。


(まさか、こやつもヒロイン枠……なのか?)


 沈黙に包まれる中、ダルセナはしおらしく微笑んだ。


「こうしてお会いできたのも、何年ぶりでしょうか。久しゅうございます。

 本当は、ずっとセイ様のおそばにいたいのですが……妾にも、魔族としての務めがございますゆえ……」


「……じゃから、ワシはおぬしと会ったのは初めてじゃと言っとろうが……」


 セイの困惑など意に介さず、ダルセナはふと視線を横に流す。


「ところで、セイ様――その”おなご”たちは?」


 リアナ、エリシア、ミミ。

 一人ひとりをなぞるように向けられる視線に、空気がひやりと凍りつく。


 ――鋭い。

 まるで、次の言葉ひとつで命運が決まるかのような、そんな眼差しだった。


「ダルセナよ、こやつらは……旅の仲間じゃ。

 ワシの命を預け合う、信頼できる者たち。手出しは一切許さんぞ」


 ミミへ向けられていた執拗な視線を遮るように、セイは一歩、ゆっくりと前に出る。


 一瞬、風が止まったような沈黙。


 だがその直後、ダルセナは頬を赤らめ、手を口元に添えて小さく身を震わせた。


「……あぁっ、セイ様……!

 そんな……そんなふうに、面と向かって“宣言”されるなんて……!」


「いや、宣言ではない。誤解を解くための……」


「もちろん、そういった“癖”も妾は理解しております。

 他の女とあえて旅をし、関係を深められることで興奮するという……なるほど、これが“背徳的快楽”……!」


「いやいやいや、勝手に理解を深めるな!」


 セイの制止もむなしく、ダルセナは恍惚とした笑みを浮かべる。


「ふふ……でも、構いません。

 妾は妾として、いつかセイ様のお側に――正妻として戻ってまいりますので……」


「正妻!? 妄想がどんどん重たくなっとるんじゃが!!」


 リアナは口を開けたまま固まり、

 エリシアは両手を胸に当て、真顔で言い放った。


「今のうちに、神に祈っておいたほうがよろしいでしょうか……?」


 その隣で、ミミがぽかんとした顔のまま呟く。


「セイ、モテモテ……だね?」


 セイはそっと額を押さえ、深く息をついた。

 場には、なんとも言えぬ気まずい沈黙が流れる。


 そんな中、ダルセナが名残惜しげに口を開いた。


「では、そろそろ失礼いたします。

 またすぐに……セイ様とお会いできる日を、楽しみにしております」


 余裕の笑みを浮かべたダルセナは、ひらりと身を翻す。

 その姿は、闇の帳に溶け込むように――ぬるりと消えていった。


 ……その場に残されたのは、妙に居心地の悪い空気と――

 ガクン、と膝をつく四人の姿だった。


「……死ぬかと思ったぞい……」


 セイが腰を抜かしたまま、額の汗を拭いぼやく。


「わたしも〜……心臓止まるかと思ったよ〜……」


 ミミはぺたりと座り込み、腕を広げてごろんと大の字になる。


「ところで、セイ。さっきの……あのダルセナって魔族、明らかにあなたのこと知ってたけど?」


 リアナが、どこか警戒の色を残したまま視線を向ける。


「名前もはっきり“セイ”って呼んでたし、人違いって感じでもなかったわよね」


「……と、とはいってものう。

 ほんとうに初めて会ったし、何がどうしてああなったのか、さっぱりじゃ……」


 セイはぶつぶつと呟きつつ首をかしげていたが、やがて何かを思い出したように目を細めた。


「……そうじゃ、ダルセナという名――

 確か、レオナードが口にしておった名じゃ」


「魔王の娘……ともおっしゃってましたね。どう考えても厄介な存在です」


 エリシアが真顔で告げると、リアナも思わず頷く。


「というか、あれもう完全に“試験どころじゃない”レベルだったわよね……」


「……ええ。試験としては、失敗ですかね……」


 少し残念そうに、エリシアが呟いた。


「うぅ〜……とりあえず、もう戻ろうよぉ……おなか、すいた……」


 ミミの涙目の訴えに、全員が無言で頷いた。


 ◇ ◇ ◇


 冒険者ギルド王都支部――受付。


「……以上が、東の祠での一連の出来事じゃ」


 セイが説明を終えると、机越しに向かい合っていたヴァイルの表情が固まった。


「……魔王四天王。その名が……ダルセナ、だと?」


 わずかに目を伏せ、深く息を吐く。


「……先に戻ってきていたパーティや試験官から、封印が破られたという報告はすでに上がっていた。

 だが、まさか封印対象が……魔王四天王の一人だったとは……」


 低く、絞り出すようなヴァイルの声に、応接室の空気が重く沈む。


 その沈黙を破るように――


「えっと……それで、その……」


 ミミがおずおずと手を挙げ、落ち着かない様子で口を開いた。


「試験結果って……どうなるんですか……?」


 ヴァイルは一瞬だけ目を伏せ、やがて小さく苦笑する。


「まあ、正式には“試験不能”として報告は上がってきているが……」


 そう前置きしてから、軽く肩をすくめた。


「魔王四天王と遭遇しながら、無傷で帰還した。それを成し遂げた判断力と対応力――評価しない理由はない。

 ……昇格……しておいてやるか?」


「おおっ!」


 こうしてセイたちの昇格試験は、思いがけない“特別認定”という形で幕を下ろしたのだった。



────────────────

▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】25(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】21

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復


【同行者】

 ・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)

 - 好感度:かなり高(魔族との関係にも嫉妬?)

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:旅人風の白いワンピースを装備。ダルセナとの遭遇による強い恐怖で、心身ともに疲労困憊

 - 補足:試験不能と思われる状況から試験結果を確認しにいくあたり、さすがである


 ・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)

 - 好感度:高(魔物討伐の連携が板についてきた)

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:結構高そうな銀の胸当てを装備。ダルセナとの遭遇による強い恐怖で、心身ともに疲労困憊

 - 補足:セイとダルセナの関係性に対して警戒と不信を抱きつつも、感情が揺れてるみたい


 ・エリシア(元聖女様/24歳)

 - 好感度:かなり高(なんだかんだで今回も助けられたと思ってる)

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:青と白のシスターっぽい洋服を装備。ダルセナとの遭遇による強い恐怖で、心身ともに疲労困憊

 - 補足:相手が誰であろうと幸せを祈れる、まさに“聖女”である


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

ブックマークや感想で応援していただけると嬉しいです。泣いて喜びます。


もちろん「面白くなかった」などのご意見も大歓迎です!

しっかり次につなげるべく、泣きながら執筆します。


それと、本作とは少し雰囲気の違う シリアス寄りのファンタジー作品

『暁のアストラニア』( https://ncode.syosetu.com/n2326kx/ )もぜひぜひ!


気分転換に「じっくり読める作品が欲しいな」と思ったときにでも、

ふらっと覗いていただけたら、すごく嬉しいです。


皆さまの感想が、何よりのモチベーションです。

それでは、次回もぜひよろしくお願いします!

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