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第30話 リアナ最高の一日

 朝の陽射しが王都の石畳を明るく照らしていた。


「ふぅ……緊張する……。ただ見に行くだけなのに……」


 リアナは胸の前で手を組み、小さく深呼吸する。

 今日は、王国騎士団が年に一度行う公開演習の日。民衆に向けて訓練の一端が披露される、恒例の行事だ。

 幼い頃から“本物の騎士”に憧れてきたリアナにとって、彼らを間近で見られるこの日は、待ち望んでいた機会だった。


 ――そんな彼女の隣には、


「おおっ、見えてきた見えてきた! あれが噂の騎士団演習場か!」


 なぜか、セイの姿があった。


 ◇ ◇ ◇


 それは、その日の朝のこと。


 身支度を整え、受付票を改めて確認していたリアナは、ある一文に目を留めて眉をひそめる。


「……ペア必須?」


 騎士団の規定で、見学者は二人一組での入場が必要らしい。混雑対策と誘導のためとのことだ。


「……しまった。そんなこと書いてあったっけ……いや、受付で言われたような気も……」


 一人で行くつもり満々だったリアナは、慌てて部屋を見回し、まずミミに声をかけた。


「ねえ、ミミさん。今日って何か予定ありますか? もし空いてたら、公開演習、一緒に行きません?」


「えっ……そうだね……あっ、ごめんねリアナちゃん! 今日はちょっと行きたいところがあってさ……ほんとごめんっ」


「……そっか。ううん、大丈夫です」


 少し肩を落とし、次にエリシアへと視線を向ける。


「エリシアさんは……どう? もし予定が決まってなかったら、一緒に――」


「えっ、えーと、申し訳ありません。今日は王都の教会を訪ねる予定がありまして……」


「……そうなんですね。わかりました」


 どうしよう、と途方に暮れかけたそのとき。

 ふと顔を上げると、エリシアの後ろから、妙に期待に満ちた顔が覗いていた。


「……一応、聞いてみるけど。セイ、あなた、騎士団の演習なんて興味ないわよね?」


「何を言うか! 王国騎士団を生で拝める機会じゃぞ? これは行かねばなるまい!」


 胸を張るセイに、リアナは半信半疑の視線を向ける。


「……ほんとに? 別に無理して来てもらわなくていいのよ?」


「無理とはなんじゃ。ワシと行くのがそんなに嫌なのか?」


「別に、そうは言ってないけど……。まあ、いいわ。ほかに当てもないし……一緒に行きましょ」


 ◇ ◇ ◇


 そして今――

 石畳の道を並んで歩きながら、演習会場へと向かっている。


「……そういえば、あなたと二人で出かけるのって、初めてよね」


「ああ。言われてみればそうじゃのう。いつもはミミが間におるからな」


 リアナはふと立ち止まり、少し振り返って言った。


「……それにしても、ミミさんとエリシアさん、今朝なんだか様子がおかしかった気がするけど……大丈夫かな?」


「まあ、あやつらなら平気じゃろ。それより今日はしっかりと演習を楽しまんとな」


「まあ、そうね。せっかくだし、今日はひとりで思いっきり楽しませてもらうわ」


「おいっ! ワシもおるじゃろうが」


 冗談を交わしながら、二人は何だかんだで楽しげに演習場へと足を踏み入れた。


 ――だが、門をくぐった瞬間、その空気が一変する。


 場内に満ちていたのは、研ぎ澄まされた緊張感と、騎士たちの剣気がぶつかり合う鋭い気迫。

 見物人たちのざわめきさえ、遠くに感じられるほどだった。


 リアナは思わず息を呑み、足を止めてしまう。


「リアナよ、観覧スペースはあっちじゃ。立ち止まっておらず、行くぞい」


 セイの声に我に返り、リアナは慌てて歩き出した。


 観覧スペースは広く設けられ、石段に腰かける形で演習場全体を見下ろせる。

 二人は空いている席を見つけて腰を下ろすと、目の前で展開される模擬戦に自然と引き込まれていった。


 鋼の甲冑が陽光を反射し、剣と盾がぶつかるたびに鈍い音が響く。

 その迫力に圧倒されながらも、リアナの瞳は次第に輝きを増していく。


「……見て、あの白いマントの人。第一近衛の隊長よ。去年、魔獣討伐で中央街道を守った人。剣の構えが独特なの」


 ぽつりとこぼれたその一言をきっかけに、リアナは楽しげに語り始めた。


「ほら、あの突撃隊の前列、あの槍の動き。教本どおりの型なんだけど、実戦で使えるようになるまでには、相当な訓練が必要なの。騎馬隊の動きも無駄がなくて……ほんと、格好いい」


「ふむふむ、なるほどじゃのう」


 相槌を打ちながらも、セイの視線は半ばリアナの横顔に向けられていた。

 普段は落ち着いた彼女が、目を輝かせて語る姿が新鮮だったのだ。


「それに、あれ! あの剣技の型、たぶん西方式だと思う。東の騎士団じゃ滅多に見ないはずなのに……誰が伝えたのかしら……?」


 言葉が止まらない。目が追いつかないほどに視線が忙しい。

 憧れを前にしたリアナは、まるで子どものようだった。


「……おぬし、本当に好きなんじゃのう、騎士が」


「……だって、小さいころから、ずっと……憧れてたから」


 照れくさそうに呟くその声には、揺るぎない想いが滲んでいた。


 その後もリアナは、騎士たちの動きに目を輝かせながら、あれこれとセイへ説明を加えつつ、熱心に演習を見守り続けた。


 やがて、演習が終盤に差しかかったころ――

 リアナは静かに立ち上がる。


「……そろそろ、行きましょうか」


「もうええんか? まだ続いとるみたいじゃが……」


 リアナは訓練場を見つめたまま、小さく微笑んだ。


「うん。……もう十分。

 憧れてるだけじゃ、ダメなんだってよく分かったから。私ももっと頑張らなきゃ」


「そうか、それじゃあ行くとするか」


 そうして二人は演習場を後にした。


 ◇


「このまま帰るには早いのう。飯でも食っていかんか?」


「えっ、あなたと二人で?」


「いや、朝からずっと二人じゃったろ。今さら飯を食ったところで、おかしくもなかろう」


「……それもそうね。じゃあ行きましょうか。何がいい? セイ」


「そうじゃのう……」


 こうして二人は、少し遅めの昼食をとり、街の散策という名目で少し遠回りをしながら宿へ戻ることにした。

 リアナも終始楽しげで、歩く足取りもどこか軽い。


 やがて日が傾き始めたころ、二人は街歩きの余韻を残したまま宿へと戻ってきた。


「……ミミさんたち、もう戻ってきてるかな?」


 そう言いながら扉を開ける。

 部屋の中は真っ暗だった。


「あれ? カーテン閉めてたっけ?……まだ帰ってきてないみたいね」


 リアナが一歩足を踏み入れた、その瞬間――


 パーン! パーンッ!


 弾ける音が立て続けに響き、同時に部屋の明かりがぱっと灯る。


「「リアナちゃん! お誕生日おめでとうーっ!!」」


 ミミとエリシアが、色とりどりのリボンや小物で飾り立てた仮装姿で、満面の笑顔のまま飛び出してきた。


「えっ、あっ……ええっ!?」


 リアナは思わず足を止め、目を瞬かせる。


「た、たしかに今日……私の誕生日、ですけど……なんで、知ってるんですか?」


「えへへ。リアナちゃん、出発するときに言ってたよー。

 “公開演習と誕生日が同じなんて、運命感じちゃう”って。すっごく嬉しそうだった!」


「そ……そんなこと言いましたっけ……!?」


 顔を真っ赤にしてうつむくリアナの背に、そっと手が添えられた。


「こちらへどうぞ、リアナさん」


 エリシアに促され、飾り付けられたテーブルへ向かう。

 ふんわりとした生クリームのケーキの上で、小さなろうそくの灯りが揺れていた。


 胸の奥が、じんと熱くなる。


「……ありがとう。本当に……こんなの、初めてかもしれない」


 照れと喜びが入り混じった、少し震える声。

 そっと椅子に腰を下ろし、改めてテーブルの上のケーキを見つめる。


「……すごく、きれい……」


「でしょでしょっ! クリームはね、エリシアちゃんがやってくれたんだよ~!」


「えっ、そうなんですか……?」


「はい。ミミさんが土台を焼いてくれたので……私は、その仕上げを少しだけ」


「……でも、お二人とも、今日は予定があったんじゃ……?」


 不思議そうに尋ねると、ミミは一瞬、肩をぴくっと跳ねさせた。


「えっ……あ、うん! あったあった、ちゃんとあったよ、用事! そのあと、準備したんだよっ」


「……そのあと?」


「そ、そうそうっ。ちゃんと用事済ませて、それから急いで飾り付けして! けっこうギリギリだったんだから~!」


 早口でまくし立てながら、ミミは話題をそらすように紙吹雪を指さす。


「……ミミさん、落ち着いてください」


 エリシアは苦笑しつつ、リアナに向き直った。


「私たち……今日は、どうしても、このお祝いをちゃんとしたくて。

 本当は、リアナさんが見学に行っている間に三人で準備をする予定だったのです。でも今朝、お誘いをいただいたときに……とっさにごまかしてしまって……」


「あーっ! エリシアちゃん、言っちゃったー! せっかく“予定があった”ってことにしてたのにぃ~!」


「えっ……あっ、ごめんなさい……!」


 あたふたと焦るエリシアを見て、リアナは思わずくすりと笑ってしまう。


「ミミさん、エリシアさん、それにセイも。

 本当にありがとう。……最高の一日です」


 そっとこぼれたその言葉には、飾りのない感謝と喜びが込められていた。


 それを聞いたミミは、にこっと笑ってリアナに人差し指を向ける。


「リアナちゃん、今日こそは寝かさないよーっ!」


「ミミさんっ、だからその言い方、誤解されますって……!」


 リアナが頬を赤らめてツッコむと、ミミは悪びれもせずにえへへと笑う。


「いーのいーの! いっぱいしゃべろうね。朝まででもいいよっ!」


 その様子を見て、エリシアも控えめに微笑んだ。


「……ほどほどに、ですけどね?」


 和やかな空気の中、セイがぽんと手を叩く。


「おいおい、おぬしら。Dランクの昇格試験、明日ってこと、忘れておらんじゃろうのう?」


「……えっ?」


 リアナが固まる。


「えっ、明日だったっけ?」


 ミミもぽかんと目を丸くし、


「……あら?」


 エリシアも小さく首をかしげた。


 しばしの沈黙――そして。


「じゃあ、今日のうちにお祝い全部詰め込まなきゃだね!」


「そういうことじゃないっ!」


 リアナの叫び声が、笑いに包まれた部屋の中に響いた。



────────────────

▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】25(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】18

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復


【同行者】

 ・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)

 - 好感度:かなり高(サプライズのため、自然にリアナに付き添ってくれたことに感謝)

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:旅人風の白いワンピースを装備。サプライズが成功し、リアナの喜ぶ顔を見られて大満足

 - 補足:本当は少しだけ、自分もリアナと一緒に公開演習を見に行きたかったらしい


 ・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)

 - 好感度:高(二人の時間を素直に楽しんだ)

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:結構高そうな銀の胸当てを装備。仲間たちからサプライズに、心からの感謝と喜びを感じている

 - 補足:王国騎士団の公開演習を見て、「憧れだけでは足りない」と実感。騎士としての覚悟を新たにする


 ・エリシア(元聖女様/24歳)

 - 好感度:かなり高(さりげない気遣いに感動)

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:青と白のシスターっぽい洋服を装備。サプライズが成功し、ほっとしている

 - 補足:サプライズするのは初めてらしく、準備中は気づかれないようにずっと緊張していたようだ


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

ブックマークや感想で応援していただけると嬉しいです。泣いて喜びます。


もちろん「面白くなかった」などのご意見も大歓迎です!

しっかり次につなげるべく、泣きながら執筆します。


それと、本作とは少し雰囲気の違う シリアス寄りのファンタジー作品

『暁のアストラニア』( https://ncode.syosetu.com/n2326kx/ )もぜひぜひ!


気分転換に「じっくり読める作品が欲しいな」と思ったときにでも、

ふらっと覗いていただけたら、すごく嬉しいです。


皆さまの感想が、何よりのモチベーションです。

それでは、次回もぜひよろしくお願いします!

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