第26話 Dランク昇格試験
真っ白な空間の中、白いうさ耳の少女が軽快に跳ね回っていた。
身にまとうシルクの布の裾をひらひらと揺らし、うさ耳をぴくぴくさせながら、にっこりと微笑む。
「うふふ、清太郎さん。おっとり聖女さんも仲間に加わって、温泉回までコンプリート。
私からのギフト、ぜーんぶ受け取ってもらえたみたいですね!」
うさ耳をぴたりと揃えて軽く一礼すると、そのまま空を仰ぐように顔を上げた。
「ここから先は、あなた次第ですよ」
そのとき、背後からぽつりと静かな声が聞こえた。
「……たのしそうだね」
振り返ると、黒い耳の少女――もも神が果実を抱えて立っていた。
ふわりと浮かぶように佇み、もぐもぐとゆっくり咀嚼している。
「あっ、もも神ちゃん! そっちの調子はどう?」
「うーん……もう少しで復活できそうな、できなさそうな」
ぼんやりした口調に、ゆるやかなまばたき。
その様子を見て、うさ神は耳をぴんと立て、元気よく言い返した。
「そう簡単にはいかせないよ! 今回の勇者は清太郎さんなんだから!」
いたずらっぽく笑いながら、くるりと回って胸を張る。
「うひひっ、また勝っちゃうかもね!」
「……またですか」
もも神は表情を変えないまま、ぽつりと呟く。
「まあ、うまくいくといいですね。……さっさと消滅しちゃえばいいのに」
「ちょっと! 聞こえてるよ!? 怖いことをさらっと言わないでよー。傷つくんだから!」
「ごめんごめん。でも、今回は私も負けないつもり」
そう言い残すと、もも神は白い空間の奥へ、ふわりと溶けるように消えていった。
取り残されたうさ神は、小さくため息をつく。
「……あの黒モモンガ、可愛い顔してたまにトンデモ発言するんだから」
肩をすくめ、耳をぴこぴこと動かして、にやりと笑う。
「ま、どうせ私が勝つんですけどねー!」
◇ ◇ ◇
場所は変わって、ルキア村の街外れ――セイたちのマイホーム。
朝の光がやわらかく差し込む食堂には、湯気の立つスープと素朴なパンの香りが漂っていた。
木の器を囲む一行の間に、穏やかな朝の空気が流れている。
そんな中、セイがふと口を開く。
「エリシアよ。無理には言わんが……おぬし、ここに残ってはくれんか?」
エリシアは顔を上げ、戸惑ったように瞬きをした。
「え……? でも、泉の呪いを解くまで、というお話だったのでは……?」
「まあ、それもそうなんじゃがの。とはいえ、あの呪い……今のワシらにどうこうできるとも思えんし」
そう言いながら、セイは隣でパンをほおばっているミミにちらりと視線を送る。
ミミは口いっぱいに頬張ったまま、にやりと笑った。
「――まあなんじゃ。おぬしの帰る場所は、一つである必要はない。
もし望むなら、ここもそのひとつにすればええ」
「……でも、私、皆さんと出会って、まだほんの少しなのに……
こんなに優しくしてくださるのは、どうして……?」
首をかしげるエリシアに、リアナがすっと腰を浮かせ、まっすぐな声で応える。
「そんなの、理由なんていりませんよ。エリシアさんはもう、キラキラ☆おひさま団の一員なんですから!」
「うんうんっ!」
ミミはパンを片手に満面の笑みで頷いた。
そして、セイは少し照れたように鼻を鳴らして続ける。
「まあ、そういうことじゃ。今はまだ旅の途中じゃしな。やるべきこと終えてから、ゆっくり考えればええ」
「……はい。ありがとうございます」
エリシアは頬をほんのり染めながら、まっすぐにセイを見つめて微笑んだ。
「よし、朝飯を食って……今日からはスローライフじゃ!」
セイが手を叩いて宣言した、その時――
「でもセイ、ギルド受付のカレンさんが“お話があります”って言ってたわよ」
「なぬっ……!」
セイの顔が、ぴくりと引きつる。
「また面倒な話でなければよいのじゃが……」
そんな会話を交わしながら朝食を終えた一行は、軽く身支度を整え、のんびりとギルドへ向かった。
ギルドに着くと、受付にはいつものようにカレンが穏やかな笑みを浮かべて待っていた。
「セイさんたち、そろそろDランクへの昇格試験、受けてみませんか?」
呼び出しの内容に身構えていたセイだったが、話を聞くと拍子抜けしたように肩の力を抜く。
「なんじゃ、もっと厄介な話かと思ったわい。
……いや、昇格試験も十分面倒ではあるがの」
肩をすくめつつ苦笑するセイに、カレンもつられてやわらかく笑った。
「まあ、そう言わずに。
最近の実績を考えれば、おひさま団の皆さんはCランクでもおかしくないんですよ!まずはDランクからいきましょう!」
「キラキラ☆おひさま団だよ!」
ミミが元気よく訂正すると、その後ろでリアナが「そこ大事」と言いたげに、うんうんと頷く。
その様子を見て、セイはふと思い出したように口を開いた。
「じゃがのう、エリシアはまだ加入したばかりじゃ。
Dランクは少々早すぎるのではないか?」
カレンは小さく肩をすくめると、あっさりと返す。
「何を言ってるんですか。先日、エリシアさんのギルド登録時にステータスは確認されましたよね?
あの数値なら、Dランクでもまったく問題ありません」
「そうなんか……ランクの基準というやつが、どうにもよう分からんくてのう」
セイが頭をぽりぽりかくと、リアナが呆れたように突っ込む。
「考えてるようで、全然考えてないのね、あなた」
「いや、考えておったような……気もするのじゃが……」
ごまかすように視線を逸らしつつ、セイは話を先に進めた。
「それで、その昇格試験とやらは……いつあるんじゃ?」
「この辺りのエリアだと、試験会場は王都ですね」
カレンは手元の資料をめくりながら続ける。
「えーっと……五日後です。明日にでも出発すれば、余裕をもって到着できますよ」
「おいおい、すっかり行く前提の話になっておるのう……」
肩をすくめるセイの隣に、エリシアがそっと歩み寄り、遠慮がちに声をかけた。
「……あの、セイさん。
私……王都に、一度行ってみたかったんです。……一緒に、行きませんか?」
その瞳に揺れる期待を見て、セイは一瞬だけ目を細める。
「エリシアよ……なんだか観光が目的になっておる気もするが……
まあよい。仲間も増えたことじゃし、昇格試験、受けてみるかの」
「やったーっ! 王都って、おいしいものいっぱいあるんでしょ!? 楽しみだなー!」
ミミがぱっと顔を輝かせると、リアナも負けじと笑みを浮かべた。
「“いっぱい”なんてもんじゃありませんよ。
あっちもこっちも、おいしい匂いが漂ってるんですから!」
「じゃあ、もう決まりだねっ!」
ミミは拳をぎゅっと握りしめ、勢いよく叫んだ。
「えいえいおーっ!」
その明るい声に、ギルドの空気がふわっと和らいだ。
そして翌日――
一行は王都へ向けて出発するのであった。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】18
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:かなり高(エリシアを迎え入れてくれた優しさが嬉しい)
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:旅人風の白いワンピースを装備。お家でしっかり寝たから体力万全
- 補足:ミミの中で、王都に行くことはもう確定事項である。ただしランク昇格試験のことは頭にないらしい
・リアナ(元騎士団の見習い/18歳)
- 好感度:ちょい高めの中
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:結構高そうな銀の胸当てを装備。お家でしっかり寝たから体力万全
- 補足:何だかんだで”キラキラ☆おひさま団”の名前がとてもお気に入りだったみたい
・エリシア(元聖女様/24歳)
- 好感度:かなり高(帰る場所にすればええにグッと来た)
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:青と白のシスターっぽい洋服を装備。みんなの優しさにほっこり
- 補足:王都へ行ってみたすぎて、セイにちょっとあざとくしてしまったことが少し恥ずかしい
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