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第25話 思ったよりも重い過去

「ただいまーっ!」


 扉を開けるなり、ミミの元気な声が家中に響いた。

 その声に呼ばれたかのように、ふわりと小さな幽霊――モフルが姿を現す。


「リアナさん、ミミさん、お帰りなさ――」


 次の瞬間。


「うわああああああっ! せ、聖なる光がっ、聖なる光があああっ!!」


「えええっ!? ど、どうしたのモフル!?」


 ミミが慌てて駆け寄るが、モフルはぶるぶると震えながら、部屋の隅へ逃げ込んでしまった。


「……そういえば、エリシアは聖女様じゃからの。幽霊体のモフルとは、相性最悪かもしれんのう」


「だ、大丈夫よ、モフル……ほら、こっちに来て」


 少し遅れて入ってきたリアナがそう声をかけ、モフルを抱き上げて自室へと連れていく。


 その場に残されたエリシアは、申し訳なさそうに小さく頭を下げた。


「……本当に、私……ここにいて大丈夫なのでしょうか?」


「大丈夫大丈夫! 部屋もたくさんあるし、モフルも普段は消えてるし!」


「まあ、そうじゃな。気にすることは無かろう。

 エリシアは目的を果たせば、いずれ戻る身じゃ。仮住まいと思って、気楽に過ごせばよい」


 セイの言葉に、エリシアは小さくうなずき、気まずそうに家の中へ入っていった。


 それを見送ったミミは、むくっと頬を膨らませ、唇を尖らせる。


「ええ~。ずっと一緒がいいよ。エリシアちゃんみたいな綺麗なお姉ちゃん、ほしかったんだもん!」


「うむ。居てくれると心強いのは確かじゃが……まあ、そのあたりは本人の気持ち次第じゃな」


「そっかぁ……。そうだね……あとでエリシアちゃんと話してみるよ」


 やがて夕方になり、モフルがいつものように夕飯の支度を始めた。

 ――しかし今夜は、決まって聞こえてくるはずの「夕飯の準備が整いました!」という元気な声がなかった。


 それでも食卓には、香ばしいシチューと焼きたてのパンが並び、皆でわいわいと賑やかに食事を楽しんだ。


 食後、それぞれが自室へ引き上げていく中、ミミが元気よく手を挙げる。


「今日はエリシアちゃんと一緒に寝たい!」


「えっ、私と……ですか?」


「うんっ。お話しよーっ!」


 少し戸惑いながらも、エリシアはやさしくうなずいた。


 二人で同じ部屋に入り、並んで布団に潜り込む。

 他愛のない話を交わしながら、夜はゆっくりと更けていった。


「ねえねえ、どうしてエリシアちゃんって“聖女”って呼ばれるようになったの?」


「……そうですね。もともとは、小さな教会で働く、ただのシスターだったんです」


 エリシアは胸の前で手を組み、少し懐かしそうに語り始めた。


「祈りの力が、ほんの少しだけ人より強くて……それだけで“奇跡”だって、皆さんが喜んでくださって。

 気づけば、“聖女様”なんて呼ばれるようになっていました」


「ふぇぇ~……やっぱりすごい力なんだね!」


「ふふ、最初のころは……本当にありがたがってもらえて、嬉しかったんです。

 でも、だんだんと……癒すのが“当たり前”みたいになっていって……」


 エリシアの微笑みから、ふっと明るさが消えた。


「……疲れていても、泣いていても、どれだけ無理をしても。

 “聖女様なら癒せて当然”って顔で頼まれるようになっていました」


「……そっか……」


「いつの間にか、“ありがとう”の声も聞こえなくなっていて……」


「あ、あのさ、わたしが聞いといてなんだけどさ……エリシアちゃん……ちょっと、重いよ……」


「ふふっ、ごめんなさい。でも、それが本当に――辛かったんです」


 エリシアは小さく息を吐き、声を落とす。


「そんなときに、“歪みの泉”の噂を聞いたんです。強い呪いに侵された泉があって、調査員を募っている、と……」


「それで……行こうって思ったの?」


「はい。皆さんには嘘をついていましたが……本当は、教会の外に出たくて。あの生活から抜け出したくて……自分から応募しました。

 “聖女なら、呪いも祓えるかもしれません”って」


「……選ばれて、嬉しかった?」


「ええ。“やっと、自分で選んだ道”だって、そう思えたんです。実際に泉に向かって、調査も少しずつ進めていきました。

 ……でも、呪いの力は想像以上で……一人では、どうすることもできなくなって……」


「うん……だから、わたしたちが出会えたんだね」


「はい。皆さんが来てくださらなかったら、私は……もう……」


「えへへ、でも来たよっ! そして今は、エリシアちゃんも“キラキラ☆おひさま団”の仲間なんだからっ!」


 満面の笑みでそう言われ、エリシアは思わず吹き出しそうになりながら、やわらかく笑った。


「よーし! そんな大変だったエリシアちゃんには、ミミがマッサージしてあげるよ!

 リアナちゃんにも好評なんだよ。はい、うつぶせになって~」


 ミミはきゅっと布団から這い出して、手をぐるぐると回す。


「ふふ……ありがとうございます。では、お言葉に甘えて……」


 うつぶせになったエリシアの背中にミミがちょこんと跨った。

 肩に手を置き、ぎゅっと軽く力を入れる。


「じゃあ、いくよ。力抜いててね? えいっ!」


 ミミは様子を確かめるように、丁寧に揉みほぐしていく。


「おお~、やっぱり気持ちいいね~。えへへ、くすぐったい?」


「んふふ……少し、くすぐったいかも……でも、とても気持ちいいです」


 シーツに顔をうずめるエリシアを見て、ミミはくすくす笑いながら、力を少し緩めた。


「ねえねえ、エリシアちゃんってさ……なんか“お姉ちゃん”って感じがするよね」


「……お姉ちゃん、ですか?」


「うん。優しくて、おっとりしてて、あったかくて……ちょっと憧れちゃうかも」


 背中越しに、エリシアはそっと微笑む。


「そう言ってもらえるなんて、嬉しいです。妹がいたことはありませんけど……

 ミミさんが妹だったら、きっと可愛いでしょうね」


「じゃあじゃあ、そんなお姉ちゃんには大サービスっ!」


 ミミは得意げに手を伸ばし、肩から腰のあたりまでをやさしくなで下ろす。

 そのまま指先に少し力を込め、こりを探すように円を描く。


「よーしよしよし。今日のミミさんは癒しの天才だよ~。どう? とろけそう?」


「ふふ……本当に……とろけてしまいそうです……」


 エリシアの声が、息に混じってどんどんやわらかくなっていく。


「……すぅ……」


「えっ?」


 返ってきたのは、穏やかな寝息だった。

 見ると、エリシアはうつぶせのまま、深い眠りに落ちている。


「うぅ……このままくすぐり合いになだれ込もうと思ったのに……」


 しょんぼり肩を落としたミミは、そっと布団を抜け出した。


「……セイのとこ、行こ……」


 小さくつぶやき、ミミは夜の廊下をぽてぽてと歩いていった。



────────────────

▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】25(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】18

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復


【同行者】

 ・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)

 - 好感度:かなり高

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:淡い色のぴったりとした薄手のパジャマを装備。《ミミさん特別マッサージ》の使用で少し疲労

 - 補足:エリシアに甘える“妹ポジ”を狙い始めた節あり


 ・リアナ(元騎士団の見習い/18歳)

 - 好感度:ちょい高めの中

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:ゆったりしたキャラクターもののパジャマを装備。旅の疲れは少し残ってる

 - 補足:エリシア加入により「ポジション再考」フェーズ入り


 ・エリシア(元聖女様/24歳)

 - 好感度:ちょっと高

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:ちょっと大人な薄手のネグリジェを装備。ミミのマッサージで心も身体もふわふわ

 - 補足:暗い過去を乗り越えて、正式に《キラキラ☆おひさま団》にパーティ加入


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

ブックマークや感想で応援していただけると嬉しいです。泣いて喜びます。


もちろん「面白くなかった」などのご意見も大歓迎です!

しっかり次につなげるべく、泣きながら執筆します。


それと、本作とは少し雰囲気の違う シリアス寄りのファンタジー作品

『暁のアストラニア』( https://ncode.syosetu.com/n2326kx/ )もぜひぜひ!


気分転換に「じっくり読める作品が欲しいな」と思ったときにでも、

ふらっと覗いていただけたら、すごく嬉しいです。


皆さまの感想が、何よりのモチベーションです。

それでは、次回もぜひよろしくお願いします!

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