第24話 ☆がつくんです
ノキア村南東の街道――山の湯からの帰路。
森の小道を抜け、村の気配が近づくと、一行の足取りは自然と軽くなった。
「ふあぁ~、やっと帰ってきたよぉ……」
ミミがぐっと背中を反らし、空に向かって両腕を大きく伸ばす。
「温泉の後って、体がぽかぽかして……歩いてても眠くなりますね」
リアナがそう言うと、ミミは大きく頷いた。
「だよね? 実はさっきから、ちょっと眠いんだよ~」
「……本当に眠かったんですね」
「へへへっ。リアナちゃん、おんぶして?」
ミミはふらりとリアナと距離を詰め、体を寄せる。
「ダメです。ちゃんと歩いてください」
そう言って、リアナは苦笑する。
「とはいえ、帰りもかなり歩きましたし……さすがに疲れましたね」
額の汗を拭いながらも、リアナの表情にはどこか達成感が漂っていた。
「まあ、泉の周辺に異常がなかっただけでも儲けもんじゃろう。
呪いの本体なんぞが出てきとったら、割に合わん依頼になるところじゃったしな」
肩を回すセイの言葉に、後ろを歩いていたエリシアが小さく頷く。
「……皆さまには、本当にお世話になりました。私一人だったら、きっと戻れなかったと思います」
「えへへ、そんなの気にしないで!
……エリシアちゃんが無事で、本当によかったよ!」
ミミはくるりと振り返り、満面の笑みで両手を広げる。
「それにさ、背中も洗わせてもらったし、うんと仲良くなったでしょ!」
「ふふ……ありがとうございます。
えっと……私、仲間ってことで、いいんでしょうか……?」
小さく笑い、髪を耳にかけながら尋ねるエリシアに、ミミは力強く頷いた。
「うん! もちろん! セイもリアナちゃんもそうだよね?」
「ええ、もちろんです」
「まあ、ここまで一緒に行動してきたんじゃ。依頼の報告が終わったら、改めてギルド登録も考えた方がええかもしれんな」
そんなやり取りを交わすうち、見慣れた村の中心街が建物の影から少しずつ姿を現す。
「……さて、久々に戻ってきたのう」
石畳の路地を抜けると、木の看板を掲げたギルドの建物が視界に入った。
一行は足を進め、木製の大扉の前で立ち止まる。セイが扉を押し開けると、木の香りと冒険者たちの賑わいが一気に押し寄せてきた。
カウンターの奥で、見慣れた制服姿の受付嬢が顔を上げる。
「皆さん、お帰りなさい。ご無事で何よりです」
「ただいま、カレンさんっ。温泉、最高だったよ!」
ミミが満面の笑みで手を振ると、カレンはわずかに首をかしげた。
「……温泉?」
「ち、違うんじゃ! その、依頼のついでに偶然そういう場所があっただけでな!」
「別に、温泉旅行のついでに依頼をこなしたわけじゃありませんからね。断じて」
セイとリアナが、ほとんど同時に否定する。
カレンは一瞬きょとんとしたものの、すぐに事情を察したように微笑んだ。
「……ふふ、だいたい分かりました。では、依頼のご報告を承りますね」
そう言いながら、カレンの視線がふとミミたちの背後へと向く。
「ちなみに……そちらの方は?」
視線の先、青い髪を揺らしながら立つエリシアは、少し緊張した様子で胸元に手を添え、ぺこりと頭を下げた。
「はじめまして。エリシアと申します。今回の調査では、皆さまに助けていただきました」
「調査の途中で偶然出会ってな。事情があって、しばらく共に行動しておったのじゃ」
セイが簡潔に補足すると、リアナも頷いて続ける。
「泉の異常についても、エリシアさんが先に調べてくれていました。
……彼女の助けがなければ、私たちも呪いの本質までは辿り着けなかったと思います」
カレンは少し考え込むように視線を伏せたあと、納得したように微笑む。
「そうでしたか。では、そのあたりも含めて、お話を聞かせていただけますか?」
「うむ」
短い返事とともに、一行はギルドの応接用テーブルへ案内され、腰を下ろす。
セイを中心に、エリシアが時折補足を加えながら、依頼内容の報告が始まった。
泉で確認された呪いが、《惑心》と呼ばれる精神系の魔王由来のものであったこと。
エリシアとミミがその影響を受け、泉に引き寄せられるような混乱状態に陥っていたこと。
干渉自体は解除できたものの、泉にかけられた呪力は強く、完全な浄化には至らなかったこと。
一通りの報告を聞いたカレンは、しばし思案したのち、記録用紙をまとめ直す。
「なるほど。承知しました。
今回もまた、魔王に関わる案件だったようですね。ギルドマスターへの報告は、私の方で行っておきます」
いつもの落ち着いた口調で話をまとめながら、手元にメモを取る。
「皆さんにはこれまで通り、“調査完了”として記録させていただきますね」
書き込みを終えたカレンは顔を上げ、穏やかに微笑んだ。
「それと、エリシアさん。せっかくですし、冒険者登録とパーティ登録も一緒に済ませておきましょうか」
「えっ……私も、パーティに?」
思わず問い返すエリシアに、ミミが身を乗り出して大きく頷く。
「うんうんっ! せっかくだから、みんな一緒がいいと思ってたんだよ~!」
リアナも微笑みながら頷く。
「もう立派な仲間ですし……こうして正式に登録しておけば、今後の活動もスムーズになるでしょうしね」
「ま、ワシらもその方が何かとやりやすいしの」
セイの一言に、エリシアは小さく目を見開き、やがて表情を和らげて深く一礼した。
「……はい。ぜひ、お願いします」
カレンは頷き、カウンターの奥から小さな箱を取り出して蓋を開ける。
「では、こちらの魔石を……はい、少しだけ手を当ててくださいね」
緊張した面持ちのまま手を添えるエリシア。
魔石は淡い光を帯び、ふわりと輝きを放つ。その光の中に、文字が浮かび上がった。
【名前】エリシア
【職業】聖女(適性:祈祷師)
【レベル】12
【スキル】清めの祈り(敵へのデバフ効果)/聖域の加護(味方にバフ効果)
【属性傾向】神聖
【適性魔法】浄化・加護
【称号】神に仕えし祝福の徒
「えっ、エリシアちゃん、本当に聖女様だったんだ!」
ミミが目を丸くして声を上げる。
「……スキルも魔法適性も、本当に“聖なるもの”ばかりですね……」
リアナも感心したように、浮かび上がったステータスをじっと見つめる。
「称号まできっちり付いておるのう。“神に仕えし祝福の徒”とは、いかにも由緒ありげじゃ」
セイが顎に手を当てて頷くと、エリシアは頬を赤らめ、少し身をすくめる。
「そ、そんな……私なんて、今は力もほとんど使えませんし……」
「うわぁ、謙遜まで聖女さまっぽい……!」
ミミの感嘆に、エリシアは照れたように小さく笑った。
「エリシアちゃんの活躍、期待してるね!」
「ですね! エリシアさんのサポートがあればとても心強いです」
リアナも微笑みながら続ける。
「えっ、わたしの回復魔法や結界だって役に立ってたよね?」
少し不安げに問いかけるミミに、リアナは当たり前のように答えた。
「もちろんですよ。ミミさんとエリシアさんがいれば、怖いものなしです!」
「へへへ、やっぱりそうかなぁ」
ミミは目を細めて嬉しそうに笑う。
(リアナめ……ミミの扱いがどんどん上達しとる。とはいえ、ミミはちょろすぎじゃろう)
セイは心の中で呆れつつも、どこか楽しげにその光景を眺めていた。
そんな中、エリシアがふと首をかしげる。
「ところで……このパーティには、名前などはあるのでしょうか?」
その問いに、ミミは待ってましたとばかりに胸を張って答える。
「あるよっ! 『キラキラ☆おひさま団』!」
「な……なるほど、“☆”がつくんですね」
一瞬遠い目をしたエリシアを見て、セイが小声でつぶやいた。
「最初に聞いたときの、わしと同じ反応じゃな……」
そんなやり取りを挟みつつ、ギルドでの手続きは無事に終わった。
一行は昼食を済ませ、数日ぶりのマイホームへと向かうのだった。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】18
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:かなり高
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:旅人風の白いワンピースを装備。帰り道の徒歩移動でかなりお疲れモード
- 補足:自分のサポート魔法もみんなの役に立ってるよね?という不安が、心のどこかに残っているみたい
・リアナ(元騎士団の見習い/18歳)
- 好感度:ちょい高めの中
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:結構高そうな銀の胸当てを装備。温泉の名残で身体はポカポカ
- 補足:ミミの扱いは、ただおだてればいいといった簡単なものではないらしい(リアナ談)
・エリシア(元聖女様/24歳)
- 好感度:ちょっと高(助けられたこと、仲間にむかえ入れられたことを感謝)
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:青と白のシスターっぽい洋服を装備。温泉の名残で身体はポカポカ
- 補足:パーティ加入にて謙虚ではあったが、役に立ちたい気持ちは人一倍
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それと、本作とは少し雰囲気の違う シリアス寄りのファンタジー作品
『暁のアストラニア』( https://ncode.syosetu.com/n2326kx/ )もぜひぜひ!
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