第20話 キラキラ☆おひさま団
その日は、気持ちのいい青空が広がる晴れた日だった。
朝からギルドに足を運んだ三人――セイ、ミミ、リアナは、並んだ依頼書の前で、揃って腕を組んでいた。
「ふむ……なんか、ちょうどええ依頼はないもんかのう」
顎に手を当てて唸るセイの横で、ミミがひょいっと前に出る。
依頼書の束を覗き込み、ぱっと表情を明るくした。
「これなんかどう? 南東の“歪みの泉”調査! 身体も温まって、ぽかぽかしそうだよ!」
「ミミさん、それ……温泉じゃないですからね?」
リアナの即座のツッコミに、ミミはむぅっと唇を尖らせ、ぷくっと頬を膨らませた。
「えー、ちがうの?」
納得いかない様子で拗ねるミミに、セイは思わず苦笑する。
「まあ、今日は遠出する気分でもないしの。なら、こっちはどうじゃ?」
そう言って差し出された別の依頼書を、リアナとミミが並んで覗き込む。
「日帰りできるし、報酬も悪くないぞ」
「うん。悪くないわね。強敵の可能性はあるけど、距離も内容もちょうどいいバランスかも」
リアナは真剣な表情で頷いた。
一方、ミミは依頼書から視線を離さず、少しだけ眉を寄せる。
「え~……でも、それってやっぱり危ないんじゃないの~?」
「何言ってるんですか、ミミさん。ミミさんの結界と回復魔法があれば、へっちゃらですよ!」
にこりと微笑んで言われた瞬間、ミミの表情は一気に明るくなった。
「えへへ……そっかぁ。リアナちゃんがそう言うなら、がんばっちゃうよ!」
(……リアナめ、いつの間にかミミの扱いがずいぶん上手くなっとるのう)
内心で感心しつつ、セイは肩をすくめる。
そして気持ちを切り替えるように、パンと手を打った。
「よし、決まりじゃな!」
三人はそのままギルドのカウンターへ向かう。
受付嬢のカレンが、いつもの明るい笑顔で迎え入れた。
「こちらの依頼ですね。三名様での受注、よろしいでしょうか?」
「うむ。いつもの三人じゃ」
「かしこまりました! それでは――
“キラキラ☆おひさま団”の皆さま! 本日もどうぞお気をつけて、いってらっしゃいませ!」
張りのある声がギルド内に響き渡り、周囲の視線が一斉に集まる。
「はーいっ!」
ミミが元気よく手を挙げた。
その無邪気な返事に、リアナは小さく微笑み、静かに頷く。
「むぅ……やっぱり、パーティ名を声に出されると恥ずかしいのう……」
ギルドを出て、三人はお互いの装備を確認する。
「キラキラ☆おひさま団、しゅっぱーつ!!」
こうして――
“キラキラ☆おひさま団”の、本日の冒険が幕を開けた。
◇
目的地の森のふもとに辿り着くと、苔むした岩と低木が入り混じる一帯が広がっていた。
湿った空気が肌にまとわりつき、重なり合う木々の影が地面に濃く落ちている。昼間だというのに、視界はどこか薄暗い。
「……む。気配が濃いのう。すぐ近くじゃ」
セイが足を止め、剣の柄に手をかける。
その直後――前方の茂みが、がさりと大きく揺れた。
現れたのは、硬質な甲殻に覆われた四つ足の魔獣――背に棘を生やした“ブロックホルン”。
退化した眼の代わりに、音や振動を捉える感覚器を発達させた、戦闘に特化した個体だ。
「リアナ、前を頼む! ミミは支援に回れ!」
「了解!」
「う、うんっ!」
号令と同時に、リアナが風のように駆け出す。
雷撃をまとった剣が閃き、低い姿勢のまま魔獣の懐へと滑り込んだ。
脚を斬り裂いた瞬間、ほとばしる電光が痺れとなって走る。
「ナイスじゃ、リアナ!」
セイも間髪入れずに踏み込み、正面から斬りかかる。
しかし刃は分厚い装甲に弾かれ、火花を散らした。
だが、その衝撃でブロックホルンの体勢が一瞬崩れる。
「ミミ、今じゃ! 結界を頼む!」
「うん、いくよ!」
ミミは短く息を整え、手を前に突き出した。
「えいっ、《防御結界》発動〜……ぽん!」
掌から淡い光が広がり、弧を描くようにしてセイとリアナを包み込む。
薄い膜のような結界が展開された、その直後――
ブロックホルンが唸り声を上げ、背中の棘を勢いよく振り払った。
射出された数本の棘が、矢のように空を裂いて飛んでくる。
「っ、リアナ!」
セイが反射的に叫ぶ。
だが次の瞬間、光の結界がバチッと音を立てて反応した。
棘は弾かれて地面へ突き刺さり、細かな土煙が舞い上がった。
結界の表面はビリビリと波打つように揺れ、歪みながらも――砕けない。
「……すごっ」
「うむ、やるのうミミ! 見事な結界じゃ!」
「えへへー! わたし、がんばったよっ!」
その喜びも束の間、ブロックホルンが大きく跳ね上がり、鋭利な前脚を振り下ろしてくる。
セイはとっさに剣を構えて受け止めたが――
「ぐっ……!」
重い衝撃に身体を押され、刃がかすめた肩口から血が滲んだ。
「セイ!」
ミミが声を張り上げ、すぐさま駆け寄る。
ぎゅっと拳を握りしめ、震える手を差し伸べた。
「待ってて、今すぐ……
セイをやさしく包んで……《癒しの手》!」
柔らかな光がセイの身体を包み込む。
温かい輝きが傷口をなぞり、滲んでいた血がすっと止まった。
そのときだった。
【新スキル】
《精霊感応》:周囲に存在する精霊の気配や、他者の魔力に宿る精霊因子を感知する。意識を向けるだけで感知が可能。戦闘支援・情報分析に応用できる。
(おっ、久しぶりの新スキルじゃが……精霊感応? 何に使うんじゃ?)
疑問を抱きつつ、セイはミミへと視線を向けた。
すると――
ミミの身体が、淡く、ぼんやりと輝いていた。
「セイ、大丈夫? もう一回結界はっておくね!
《防御結界》発動〜……えいっ!」
その瞬間、ミミの光が一際強くなる。
彼女とセイを包み込むように、再び結界が展開された。
(……なるほど、そういうことか)
セイは内心で納得しつつ、剣を握り直す。
「じゃが、まずはこの場を何とかするのが最優先じゃな」
リアナが機敏に動き、魔獣の注意を引きつける。
ミミは結界と回復で支援を続ける。
生まれた一瞬の隙を逃さず、セイが跳躍――魔獣の頭上へ踏み込んだ。
「はぁっ……!」
渾身の一撃が頭部を叩きつける。
甲殻を貫くには至らなかったが、その衝撃でブロックホルンの動きが鈍る。
そこへ――横合いから雷撃が走った。
雷をまとったリアナの剣が首元を切り裂き、ブロックホルンは唸り声を残して地面へと崩れ落ちる。
しばしの静寂ののち、三人が見合わせた。
「ふぅ……」
「やった……かな?」
「うむ。見事な連携じゃった」
ミミがほっとしたように笑い、両手をぱっと広げる。
「みんな、けがしてない? よかった〜!」
その声に、セイとリアナが小さく頷いた。
こうして依頼は無事に完了し、三人は夕暮れに染まる森を後にする。
足取りは軽く、ルキア村への帰路についた。
◇
ギルドで討伐証明を提出すると、受付のカレンが満面の笑みで迎えてくれた。
「依頼達成、ありがとうございますっ!
キラキラ☆おひさま団の皆様、こちらが報酬になりますっ!」
ひときわ大きな声が、ギルド内に響き渡る。
「……うぐ……またそれを……
こやつ、絶対わざと言うとるな……」
セイは顔を手で覆い、赤くなった耳を隠すように俯いた。
リアナは気まずそうに視線を逸らし、ミミは楽しそうに笑っている。
その後、馴染みの商店で簡単な買い物を済ませると、三人は古びたレンガ造りのマイホームへと向かった。
戦いの余韻を残した身体を、夕暮れの風がやさしく包み込んでいく。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】17(+2)
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応(New)
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:高(ちょっとした怪我でもすぐ癒したい)
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:旅人風の白いワンピースを装備。回復と結界魔法を連発し、魔力は枯渇気味
- 補足:今回はしっかり活躍できたことが嬉しかったらしく、帰り道では胸を張って自慢していた
・リアナ(元騎士団の見習い/18歳)
- 好感度:ちょい高めの中(連携が板についてきた)
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:結構高そうな銀の胸当てを装備。ミミの結界のおかげで怪我はないが、ちょっとだけ疲労
- 補足:「温泉」という言葉が妙に引っかかっている様子。次の依頼先は、たぶん温泉絡み
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それと、本作とは少し雰囲気の違う シリアス寄りのファンタジー作品
『暁のアストラニア』( https://ncode.syosetu.com/n2326kx/ )もぜひぜひ!
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