第18話 ギルドマスターアルト
ルキア村の中心部から少し離れた街道――ギルドへ向かう道のり。
ギルドマスターとの話のため、三人は朝のうちにギルドへ向かっていた。
その道中、朝露に濡れた林道には、彼らの賑やかな声が響き渡る。
「おーっ、きれいなお花はっけーん!」
ミミが声を上げると、楽しそうに茂みに飛び込んだ。
「ミミさん、あんまり奥には行かないほうが……」
リアナが慌てて声をかけるが、その背中はもう見えない。
――しばらくして。
「いったたたたた……! なんかトゲみたいなの、いっぱい刺さっちゃったよ~……」
半泣きの声とともに、ミミが戻ってくる。
手には小さな白い花と、細い草がいくつも握られていた。
「でもでも! 可愛いから摘んできちゃった。ね、リアナちゃん、ちょっとしゃがんで?」
「えっ? は、はい……」
戸惑いながらもしゃがむリアナの背後に回り、ミミは慣れた様子で髪に手を添える。
「ポニーテール、ちょっとだけ丸めさせてね~」
高い位置で結ばれた髪を、ふわり、くるり。
お団子状にまとめられた髪の根元に草花で編んだ飾りを添え、軽く指先で整える。
「……よし、完成!」
「え……これ、わたしに?」
そっと後ろに手を伸ばし、髪の感触を確かめる。
気づけば、リアナの頬はわずかに赤く染まり、自然と微笑みが浮かんでいた。
「すごく……かわいいですね。ありがとうございます、ミミさん」
「うんうん、やっぱり似合う~!
……あれ? まだちょっと余ってるな……」
くるりと振り返って、じっとセイを見上げる。
「セイ、しゃがんで?」
「な、なんじゃと?」
「いいでしょ~? ちょっとだけ! セイにもつけてあげるよ!」
「……うーむ、まったく……まあ、こういうのも旅の思い出じゃな」
半ば諦めたように腰を落とすと、ミミは楽しそうに笑いながら、同じように花を留めた。
「はいっ! これでセイも“花の戦士”だね!」
「なんじゃそれ……」
リアナが思わず、くすっと吹き出す。
「ふふっ……意外と、似合ってるわよ?」
「む……笑うなよ、おぬしら」
そんな冗談を交わしながら、三人はギルドへと向かった。
◇
やがて、ルキア村のギルドが見えてくる。
「お待ちしておりました!
セイさん、ミミさん、リアナさん!」
明るい声とともに現れたのは、受付嬢のカレン。
栗色のポニーテールを揺らしながら、いつもの朗らかな笑顔で迎えてくれた。
ふと、カレンの視線がセイの頭に向けられる。
「では、ご案内しますね。
ギルドマスターを呼んでくるので、応接室でお待ちください」
一瞬、口元に小さな笑みを浮かべたものの、何も言わずに三人をギルド奥の応接室へと案内した。
そこは装飾を抑えた静かな空間。
木目の机と椅子、そして壁に掛けられた簡素な紋章が、わずかな緊張感を生んでいる。
ほどなくして、扉がノックされた。
「失礼します――ここでギルドマスターをさせてもらってますアルト・ネヴァンです」
現れたのは、どこか理知的な雰囲気をまとった青年だった。
(なんじゃ。ギルドマスターと言うからには、もっと熊のようないかついのが出てくると思ったが……えらく華奢な男じゃのう)
そんなことを思いながらも、セイは軽く頷いて応じる。
ふと、アルトの視線がセイの頭に向けられる。
ほんの一瞬、口元に小さな笑みを浮かべたものの、そのまま話を続けた。
「本日は、わざわざご足労ありがとうございます」
「いや、どうせ依頼で来る予定じゃったからの。全然問題ない」
その言葉を受け、アルトはすぐに本題へと切り出した。
「ありがとうございます。本日お越しいただいたのは……
まあ、すでにお察しかと思いますが、遺跡での件について、少し詳しくお話を伺いたくて」
「ふむ、まあ、そうじゃろうな」
セイは腕を組み、椅子の背にもたれた。
「改めて確認させてください。
遺跡の奥で遭遇したという魔物――“レオナード”と名乗っていたのは、間違いありませんか?」
「ああ、そうじゃ。間違いない。自分から名乗っておったよ」
「そして、“探し物をしていたが見つからなかった”と?」
セイは背もたれに寄りかかったまま、ゆっくりと頷く。
「うむ。そう言うておったのう」
「他に、何か印象に残る発言はありましたか?」
セイはわずかに眉を寄せ、記憶を辿った。
(ミミのことは――とりあえず伏せておくかのう)
「……はっきりとは聞き取れんかったが、“守護者”がどうのこうの……
そんな言葉をつぶやいとった気がする」
「なるほど。他には?」
「いや、それくらいじゃ。
そのあとは、逃げるようにしてその場を離れてしもうた。それ以上は分からん」
そう締めくくると、アルトはミミとリアナへと視線を移した。
「ほかのお二人――ミミさんとリアナさんも、同様ですか?」
「いや、レオナードと会ったのはワシ一人じゃ。
二人は奥の部屋の手前で待たせとったからの」
「承知しました。ありがとうございます」
ひと息置き、アルトは姿勢を正し、口調を改める。
「では、改めて本題に入りましょう。
レオナードの“探し物”ですが――まず間違いなく、“賢者のカケラ”と見て間違いありません」
「賢者の……カケラ、とな?」
「セイさん、前回の祠調査を覚えておられますか?」
「ああ、覚えとるよ。祠の奥で、本のような遺物を見つけた時のことじゃな」
「はい。その遺物こそが、“賢者のカケラ”と呼ばれるものです。
この世に三つ存在するとされる、そのひとつですね」
「なんと……では、レオナードが探しとったのは――?」
「今回の遺跡ではなく、あの祠に安置されていた“カケラ”の方だった、と考えられます」
話が核心へと近づく中、セイがぽつりと呟いた。
「……なるほどのう。当たりがいいと言うべきか、悪いと言うべきか……」
アルトは短く頷き、話を継いだ。
「はい。少なくとも、セイさんの勇者の称号については疑いようがありません。
セイさんが関わってきた出来事は、いずれも“魔王”に強く結びつくものばかりです」
「いや、ワシとしては、好き好んで関わっとるつもりはないんじゃがな……」
(……勇者といったって、“テンプレ詰込み勇者”なんて、どう考えてもまがい物の称号じゃろうに)
内心そうぼやきながら、セイはふと眉をひそめる。
「ところで、“賢者のカケラ”とは一体なんなんじゃ?
そして、レオナードはなぜそれを探しておったと思うんじゃ?」
すると、アルトの表情が引き締まった。
「セイさんが“勇者”であることに、我々としても疑念はありません。
ですので――本来であれば秘匿とされている情報を、お伝えする義務があると判断しました」
「……なんじゃか、仰々しい雰囲気になってきおったのう」
そこへ、カレンが一礼して口を開く。
「では、私はこれで失礼します」
そう言い残して部屋をあとにすると、扉が音もなく閉じられた。
その直後、ミミが小さな声でぽつりと呟く。
「ねぇ、セイ。わたしたちも……ここにいていいのかなぁ?
なんだか、すごく大事なお話っぽいけど……」
セイは隣の二人にちらりと視線を送り、ひとつ頷くと、アルトへ問いかけた。
「ミミとリアナは、同席してもええのか?」
アルトは穏やかに頷く。
「セイさんのパーティメンバーである以上、無関係ではありません。
いずれお伝えいただくのであれば、今ここで一緒に聞いていただいた方がよろしいでしょう」
セイは軽く肩をすくめる。
それを合図に、アルトは話を核心へと移した。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】15
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:ちょっと高(セイを花の戦士に任命するほどの信頼)
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:旅人風の白いワンピースを装備。大事な話ばかりで精神的に疲弊
- 補足:花の戦士は、ミミの中で自分を守ってくれる王子様設定である
・リアナ(元騎士団の見習い/18歳)
- 好感度:中
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:結構高そうな銀の胸当てを装備。ミミが結わいてくれた草花も装備。体調は万全
- 補足:応接室に入ってから口数少なめ。緊張しすぎ
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それと、本作とは少し雰囲気の違う シリアス寄りのファンタジー作品
『暁のアストラニア』( https://ncode.syosetu.com/n2326kx/ )もぜひぜひ!
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