第14話 北の古代遺跡
受付嬢カレンの依頼――古代遺跡調査。
ルキア村から北に位置する古代遺跡までは、歩いて丸一日の行程だった。
「ミミ、足元に気をつけるんじゃぞ。前回みたいに転ぶでないぞ?」
「だ、だいじょうぶだよ! 今回はちゃんと靴も新しいのだしっ!」
ミミは少し大きめのブーツを誇らしげに見せる。
「お店のひとが滑りにくいやつだって言ってたよ?」
相変わらず受け答えは怪しいが、足取りは以前よりも確かで、ほんのわずかな成長が感じられた。
――が、その直後。
横に伸びていた木の枝に、見事に引っかかる。
「……ほら、言わんこっちゃない。気を付けるのは足元ばかりではないぞ」
「むうっ!」
頬をぷくっと膨らませ、ミミは両手で枝を外す。
「今のはね、枝が勝手に伸びてたんだよ! だからノーカン!」
「いや、枝は勝手に伸びるもんじゃろう……」
「ねっ、リアナちゃんもそう思うよね?」
「えっ……あっ、はい。今のは……枝の方が悪いです」
その言葉に満足したのか、ミミは「ほらね?」とでも言いたげにセイへ視線を向ける。
後ろからその様子を見守りつつ、リアナが小さく呟いた。
「……この調子で、本当に遺跡調査なんてできるのかしら」
◇
進むにつれて道は荒れ、土はぬかるみ、空気に湿り気が混じりはじめる。
遠くに見える森の稜線が、まるで不気味な影絵のように揺らめいていた。
「……妙じゃ。空気がやけに重い」
セイは足を止め、周囲に意識を向ける。
耳を澄ませても、聞こえてくるはずの小動物の気配がない。
森全体が、息を潜めているかのようだった。
「生態系が乱れてる……?」
リアナが剣の鞘に指を掛けたまま、警戒を強める。
「うむ。明らかに、何か大きな存在がこの地に居座っておるようじゃ」
ミミは不安を隠しきれず、セイの袖を掴んだ。
「セイ……怖いの、出てこないよね?」
「心配せんでええ。もし出てきたとしても、ワシがおる。
それに、今回は“正式な”パーティじゃ。頼れる前衛もおるしの」
その言葉に、リアナはそっぽを向き、ミミは少しだけ表情を和らげ、ぎゅっと腕にしがみつく。
だが、その安心は長く続かなかった。
谷間を抜けた瞬間、不意に耳を裂くような咆哮が響いた。
「グ、グオオォォォン……ッ!」
「な、なに今の!?」
ミミが身体を強張らせ、リアナは即座に剣に手を掛ける。
セイもまた、音の届いた方角へと意識を集中させた。
「これは……間違いなく大型の魔物じゃ。
あの鳴き声、この辺りの生態系にそぐわぬ存在……」
「どうする?」
リアナが短く問いかける。
「まずは遺跡に向かい、状況を把握するのが先決じゃ。
あくまで調査依頼、討伐は成り行き次第としよう」
「うん……がんばる」
ミミは不安そうにしながらも、小さく拳を握りしめた。
一行は足取りを抑え、慎重に森の奥へと進んでいく。
やがて、木々の隙間の向こうに、苔に覆われた石造りの影が姿を現した。
――古代遺跡。
崩れかけた石柱と、半ば崩壊したアーチ。
そこは長い時間の中で忘れ去られ、森とも世界とも切り離されたような、異質な空間だった。
「……これが、古代遺跡……」
リアナが思わず息を呑む。
「ふむ、見るからに曰くありげじゃのう……」
その瞬間だった。
遺跡の奥から、再び――あの咆哮が轟く。
「グ、グオォォォン……ッ!!」
先ほどよりも、明らかに近い。
低く、腹の底に響く音が、遺跡全体を震わせた。
「来るぞ――!」
セイは即座に腰を落とし、戦闘態勢に移る。
リアナは剣を抜き放ち、ミミも小さく息を吸い込むと、両手に淡い魔法陣の光を浮かび上がらせた。
「今度こそ、わたしも……やるよっ!」
森の影から、その巨大な影が姿を現す――
現れたのは、異形の魔獣だった。
全身は黒く艶めいた鱗に覆われ、まるで古代のドラゴンを思わせる威圧感。
とはいえ、その体躯は想像したほど大きくはない。むしろ、大型犬を一回り大きくした程度。
しかし、その全身から溢れ出る魔力は、サイズとは釣り合っていなかった。
「セイ……あれって……」
「む。通常では見ない魔物じゃな。
恐らく、遺跡内部の魔力が影響して、変異したのかもしれん」
魔獣は鋭い咆哮を上げると、地を蹴り、一直線に突進してくる。
「リアナ、前に出ろ。ミミは後方から支援じゃ!」
「了解!」
「は、はいっ!」
リアナは即座に剣を構え、正面から迫る魔獣に身を向ける。
ミミも慌てて両手を掲げ、展開していた魔法陣を前に押し出した。
「えいっ! これでみんなを守って!」
淡い光が広がり、セイとリアナの周囲を包み込む。
「助かる、ミミ!」「ありがとうミミさん!」
結界越しに、迫る魔獣の気配が一段遠のいた。
「《時間停止》!」
セイの低い声と同時に、魔獣の動きが不自然に引き延ばされる。
完全に止まったわけではない。ただ、踏み込みが遅れ、重心がわずかに崩れた。
その隙を逃さず、リアナが踏み込み、斬る。
剣先が魔獣の脇腹をかすめた。
「浅いっ……!」
魔獣は即座に反転し、怒りに任せて爪を振り下ろす。
だが、その攻撃が届く前に、セイが正面から割り込んだ。
「《威圧》! 《加速支援》じゃ!」
間合いに踏み込んだ拳が、一直線に魔獣の頬を打つ。
鈍い衝撃音と共に、魔獣の身体が横へ弾かれ、遺跡の石壁に叩きつけられた。
それでも、魔獣は崩れない。
低く唸りながら、再び立ち上がる。
「……なかなか、しぶといのう」
セイは一瞬だけ魔獣を見据え、即座に判断を下す。
「ミミ、浄化じゃ。
こやつの魔力は本来のものではない。暴走しとる……浄化が効くはずじゃ」
一瞬だけ戸惑ったあと、ミミは大きくうなずいた。
「……うん!」
一歩踏み出し、魔獣へ向けて両手を伸ばす。
「《浄化の光》!」
ミミの手のひらから淡い光が溢れ出し、魔獣をやさしく包み込む。
荒れていた魔力の流れが鎮まり、動きが目に見えて鈍っていった。
「もう一押しじゃ……リアナ、決めるぞ!」
「ええっ!」
二人が息を合わせる。
セイが間合いを詰めて魔獣の意識を引きつけ、その隙を突いて、リアナの剣が正確に急所を貫いた。
「やった……!」
魔獣は苦しげに咆哮を上げ、そのまま力を失って崩れ落ちる。
二度と動くことはなかった。
森に、再び静寂が戻る。
「ふぅ……ようやく終わったかのう」
セイは額の汗を拭い、二人へ視線を向ける。
「ミミ、リアナ、無事か?」
「うん、わたし、大丈夫……!」
「こちらも問題なし」
リアナは剣を収めると、魔獣の亡骸に近づく。
「よく浄化魔法が効くって分かったわね?」
「いや、確信があったわけではないが……なんとなくじゃ」
「なにそれ?
でもこの魔獣、やっぱり何か妙ね……体内の魔力、やけに偏ってるように見える」
その言葉に、セイは眉をひそめた。
「この奥に潜む魔物は……いったいどんな魔物かのう」
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】14(+3)
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:ちょっと高(ブーツを見せびらかしたい)
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:旅人風の白いワンピースを装備。滑りにくい新しいブーツも新調。
- 補足:魔獣討伐のきっかけを作れたことが嬉しく、戦闘後にこっそり飛び跳ねて喜んでいた。
・リアナ(元騎士団の見習い/18歳)
- 好感度:ちょい高めの中(戦闘での連携は意外と合っている)
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:結構高そうな銀の胸当てを装備。未知の魔獣との交戦で疲弊
- 補足:セイへの信頼も着実に高まりつつあるが相変わらずツンデレ。でもデレ要素の大半はミミに向かっていることは自覚していない
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しっかり次につなげるべく、泣きながら執筆します。
それと、本作とは少し雰囲気の違う シリアス寄りのファンタジー作品
『暁のアストラニア』( https://ncode.syosetu.com/n2326kx/ )もぜひぜひ!
気分転換に「じっくり読める作品が欲しいな」と思ったときにでも、
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それでは、次回もぜひよろしくお願いします!




