2 ホワイトデー
今回は、真司と麻子がまだ両想いになっていないホワイトデーの物語です。
3月のホワイトデー前のある日曜日、真司は自転車でシーサイドタウンに行き、センター街をブラブラしていた。
日曜日のセンター街は人でごった返している。でも、まだ中学生の真司にはそんなこと関係ない。真司は麻子にもらったバレンタインチョコのお返しのキャンディーを買おうとセンター街に来たのだった。
最近できた風変わりな雑貨屋に行こうと思った。公平の情報によると、オーナーのお気に入りの品しか売っていない。本、パワーストーン、輸入菓子、食料品、ハンカチなど本当にいろいろなものが陳列されていた。ホームズのヴィクトリア王朝時代のイギリスのお店のような。
ホワイトデーのコーナーを覗いて、真司は、思わずこれだ!と手に取った。
ホワイトデー当日の放課後。
『真司の小説どう? 見せて、見せて!』
麻子は真司から創作ノートを取り上げると、開いていたページに目を移した。
『うわぁ、やめろ! まだ初めの方だから』
真司がやけに慌てている様子がおかしくって、麻子はそのまま、真司の小説を読んでみた。
『何っ、これ? わたしじゃない。真司、男の子なのに、女の子の気持ちが分かるの?』
麻子がおどけていった。
真司は、麻子のことでいつもあふれ返っているとはとてもいえなかった。コップに注ぐ水に例えたら、コップだけでは足りずにバケツがいるくらいだった。
『ほっとけ! 俺が主人公なんて恥ずかしいからなー』
真司は、麻子に創作ノートを見られたことに気が動転し、とても冷静でいられなかった。
でも、今日はホワイトデー。麻子にもらったチョコのお返しをしなければ。お返し? 本当にそれだけなのか?
真司は頭の中で自問自答した。
『これ、今日はホワイトデーだろう? だから、これ!』
真司は気を落ち着かせることもできずに、カバンから、先日、雑貨屋で買った包みを麻子に差し出した。
『わたしに?』
麻子は、今日は朝からホワイトデーのことを気にしていたが、昼休みも真司はその素振りを見せなかったので、自分の片想いだと諦めていた。でも、期待してもいいのかな?
麻子が真司に差し出された包みを開くと、鹿打ち帽とインバネスコートと、あのホームズさんのコスチュームのスヌーピーとウッドストックの黄緑色の丸い缶が出てきた。
『かわいい!』
麻子は思わずつぶやいた。
『いいかー、俺はいつかそのスヌーピーのようになるからなー!』
今日の真司はハチャメチャで、ホワイトデーの甘い雰囲気は微塵も感じられなかった。真司はまた、創作ノートに何やら書いている。
麻子は、このキャンディーの缶が、イエスかノーかどっちなの?と聞きたかったが、今はこうして、2人でいられるのだから、まあ、いいかなと思った。
真司が少し顔を赤らめて創作ノートを書いている姿を見て、麻子は、何とも言えない幸せな気分になるのだった。
それは、校庭の桜のつぼみがまだ色づいていない2人が中学1年生のホワイトデーの話。
読んでいただき、ありがとうございます。
ホワイトデーって、私は女性なのでピンとこないのですが、想像を膨らませて描いてみました。
真司が創作ノートに書いている小説は、この物語のシリーズ最初の「シャーロック・ホームズ未来からの依頼人ー麻子と真司の時空旅行ー」のことです。
こちらもよろしくお願いいたします。
1 シャーロック・ホームズ未来からの依頼人ー麻子と真司の時空旅行ー 長編
2 青いガーネット クリスマス短編
3 悪魔の足 バレンタイン短編
4 青いガーネットの奇跡 学園もの長編
5 ドキドキサマーデート 夏休み短編
6 麻子と真司の物語 ショートショート集
7 真司と麻子の物語 ショートショート集2




