結界の髪乙女~その長き髪は結界の証~
リーシェア・ゲルダは地面に付くほど長い髪の令嬢。
王太子と婚姻関係にあったが、その王太子が彼女の長い髪を切り落としてしまう。
髪を長くしている理由を忘れて──
「リーシェア・ゲルタ。お前のその長い髪が僕は鬱陶しくてたまらないんだ!」
私、リーシェア・ゲルタ。
ゲルタ侯爵の令嬢。
地面につくほどの長い髪を持って居る。
だからいつも結い上げている。
だが、長い髪には理由がある。
私の婚約者たる王子は、そんな事すっかり忘れて女にうつつを抜かしているようだが。
「その女を引っ捕らえて髪を切り落とせ!」
「ですがガスト殿下! それは……」
「ええい、お前達がやらないなら僕がやる!」
拘束されている私の髪を王子がじょきりと切り落とした。
ああ、なんて馬鹿な人達。
「ああ、鬱陶しい髪だわね」
王妃が髪を踏みつける。
何も知らない馬鹿な人達。
騒ぎを聞きつけて大公様と、陛下、お父様がやってくる。
「リーシェア!」
「お父様……」
「その髪、まさか……!」
「ええ、ガスト殿下に切られてしまいました」
「ガスト殿下……!」
お父様がガスト殿下を睨み付ける。
国王陛下や大公様も殿下と髪を踏みつけている王妃を睨み付けている。
「ガスト、ミスティ、お前達とんでもないことをしてくれたな!」
「な、なにがです、父上⁇」
「ゲルタ侯爵家の娘は代々その魔力を帯びた髪の結界で国を守っていたのだ! それをよくも……!」
「兄上の代ではゲルタ侯爵家に娘は生まれませんでしたから、兄上はミスティ王妃、貴方と結婚したのです、娘が生まれて居れば結婚してません」
「な、何を貴方達は言って──」
空にけたたましい魔物の声が響く。
「ああ、魔物だ‼」
貴族達がおびえ始める。
「リーシェア嬢、すまぬ。王妃とガストはどうなっても良いから国を守ってくれ!」
私は国王陛下の言葉に頷く。
そして私は切られた髪を持ち、祈る。
王妃とガスト殿下以外が光りに包まれる。
魔物は王妃とガスト殿下を捕まえて飛び去っていってしまった。
私がしたことではない、髪を切り、踏みにじった結果、髪自体が結界を張るのを拒んだのだ。
「国王陛下、という訳で婚約破棄でお願いします」
「うむ。分かった」
「そして王妃様と、ガスト殿下の命は諦めください」
私はそう言って髪に手をかけた。
ばさっと、髪の毛が元に戻る。
「これで結界は元通り、今まで通り私は国を守りましょう」
そう言って、私はお父様と共に城を後にした。
後ほど、二人がどうなったのか詳細を調べようとした国王陛下が、水晶玉で王妃と殿下の現状を映し出させると、生きたまま、何度も肉を食われる王妃と殿下の姿が映ったそうだ。
凶悪な魔物はそういう術を持つから、私の髪の結界が必要なのだ。
後に、私は大公様のご子息と結婚した。
政略結婚ではあったけど、ご子息は私を大切にしてくれ、髪を愛してくれた。
ご子息と私が国を継ぎ、国王陛下は身を引いた。
愚かな妃と愚かな息子を育ててしまった罪を生涯償い続けたそうだ。
確かに、元王妃と殿下を愚かにしてしまったのは確かに国王陛下の身内への甘さが原因だと思う。
そうでなくては、こういう自体にならなかったから。
私は結界の髪の乙女。
今宵も長い髪が国中に結界を張り、魔物達から国を守っている──
短編です。
色々書いているのですが、上げるには至らないのが悲しい限りです。
一日も早く上げられるようにしたいです。