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0.5秒のディレイ  作者: 水鶏にさ
chapter.1 代官山Refrain
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01.デイドリーム

ーーーそれでは、第47回ジャパンアカデミー賞最優秀主演男優賞の発表に移ります。


"こういうの"とはひたすらに平凡な無縁な僕にとって、とにかく煌びやかなで豪勢だといか言い様がなくて。


ここは、超一流の東京・高輪のホテルの宴会場を用いられた式場。宝石塗れのシャンデリア、どう口に運べば良いのかよくわからない派手な食事、丁寧にアレンジメントされ活けられた花、純白のクロスが被せられた円形のパーティテーブルは、会場中央に通ったレッドカーペットの両脇に幾つか配置されており、そのテーブルを囲み座る面々は、テレビ、街中の広告、ありとあらゆるところで見る顔触ればかりで、俗に言うイケメン人気俳優、女優、ベテランの大御所、バイプレイヤー、様々に謂れている人達が堂々とそれぞれに着席している。何故か、この僕が、そんな憧れの人たちと同じようにタキシードを纏い、同じように座っているのが、違和感を拭えなくて仕方がない。


とはいえ、僕の座るテーブルは、授賞式の舞台から遠ざかっている如何にも目立たない事が確約された隅の方に位置しており、何故僕がこの授与式に招待されているかというと、僕も一応俳優であるからだ。とはいえ、去年高校を卒業してすぐに小さな芸能事務所を所属してからまだ1年未満程度のド新人であり、事務所の企画で制作された小さな映画に、特に個性がなく普通の大学生っぽいからという理由だけだ主演に抜擢されただけの僕であり、その映画がたまたまSNS話題特別賞にノミネートされ、あくまで映画の制作陣と出演者の"顔ぶれ"として、参加しているだけなので、その扱いには納得している。


しかし、年に一度、由緒正しき格式のあるこの授賞式に、幼い頃からついこの間まで、テレビ越しにやれ誰が大賞を獲っただの眺めるだけであった僕がこの会場の一員の人間でいるというのは、不安で入り混じってごっちゃごちゃであり、非常に居心地が悪い。緊張で視界は霞むし、手が震えているのは、自分自身の功績でも何もないのに、たまたまの縁だけで憧れの場所に居座っているという申し訳なさでいっぱいだった。


「はいはい、どうせ主演男優賞は"はちゃ"だろー」


そんな僕の隣に座っている男が、茶の間の視聴者の感想かのようにため息混じりに口出した。


同様にタキシード姿で少々パーマがかった特徴的な藍色の髪はに"ジャパン"アカデミー賞と冠したこの場になんて不似合いな外国人顔、耳にはシルバーのフープピアスを両耳に2個ずつ付けており、見てくれのガラは随分悪いが、平凡無個性無特徴の僕とは違い、華がある。彼もまた、僕と同じ事務所の俳優で、年齢も芸歴も4つほど上の先輩にあたる。彼はふてくされたように椅子にのけぞった。


「しーっ、オンエア乗ったらヤバいっすよ、ミシェル先輩」


そんな彼の態度が悪目立ちするのではないかと恐れ、咄嗟に人差し指を口元に当て、小声でぼそぼそと注意をした。


「俺たちの事、拾ってるわけねえだろ」


そう言ってミシェル先輩は態度を特に変えず、辺りのカメラやマイク機材を眺めるように見渡した。この"ジャパンアカデミー賞"に参加している俳優達は受賞候補者として皆着席している。僕と、隣に座るミシェル先輩は、その煌めく人たちとは全く毛色が違っていた。先輩の言う"拾ってるわけがない"というのは、この授与式の様子を、現在時刻は17時で、今晩22時にテレビ放映するために、収録用にカメラやマイクが用意されているが、僕らに見向きもするわけがないだろう、とミシェルは言いたいだ。その一言に、確かに、と僕の中の傲りの気持ちがあった事に気恥ずかしくなり、改めて縮こまる。


「俺たちはな、この場では"エキストラ"なんだよ、それが今日の俺らのお仕事。輝かしい大俳優サマ達の晴れ舞台を際立たせるための、"モブ俳優役"な」


ミシェル先輩は少し憂いた表情でワイングラスに口をつけようとして、これ酒か?と疑って結局再度テーブルにグラスを置き戻した。


ミシェル先輩も、"フェイクリアル"に出演していて、一応主演の僕と、作中でも先輩役だったミシェル先輩は出演者代表として、この場に参加させてもらえた。ここよりも舞台へ近い方の別のテーブルには、監督と脚本家が座っていて、作品自体が話題賞にノミネートされたので、僕らの作品チームがこの授与式に招待されたのだ。残念ながら話題賞の受賞は逃したけれど、ノミネート作品の紹介や監督のインタビュー登壇の後ろに立って拍手したり受賞を祈る、というのが今日の僕らの仕事で、もう既に出番は済んだのだ。主演した自分がこの作品に対してどれほど力になったのか、はたまた僕じゃない誰かでも済むぐらい特に僕が成した要素がなかったとしても、作品が評価されているということはそれでも曲がりなりにもSNS話題特別賞という名誉を得たのはとても嬉しかった。


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