終盤
大砲が船に着弾した。
大破までは行かないが帆が折れてしまった。
まずい! これじゃ逃げられねぇ!
後ろを振り返るとオッサン達は魔法を止めていた。
このままじゃ追いつかれちゃうよ?!
「おい、船傷つけるのはちげぇだろ」
「流石に人の船といえども、漁師の命。見過ごせませんね」
船を急旋回させて海賊船の方に急発進した。
え、ちょっと待って、「急発進した」じゃなくてさ、なにやってんの?? 敵の方向かってってるよ?!
ブーブーブー!!
めちゃくちゃ汽笛鳴らして煽るじゃん…
「死んでろ! クソ海賊ども!!」
「おらおらおら!! 死になさい!」
勇者のおっさんは特大の火球を片手の上に作り上げ、かたや魔王のおっさんはぶつぶつ言っている。
な、なにやるつもりなんだこの人たち。
前方の海賊は急旋回して漁船から離れていく。
「逃すかアホども!!」
火球はおっさんの手から投げられた。
緩やかな放物線を描きながら、海賊船前方に着弾する。
ドカーン!!
着弾と共に5倍の大きさに膨れ上がった。
例えるなら東京ドーム何個ぶんとかいうアレだろ。
「え、えぇ…出鱈目すぎんだろ…なんなんこのおっさん」
魔王のおっさんはぶつぶつを言い終えた。
「沈めぇぇえー!」
すごい形相だ。
晴天だったはずの空にどんよりした雲がかかり、雷が海賊船にあたる。
いや、稲妻というより、これもう爆発だな。
爆発が空から降ってきてる。
目の前の海には船だったはずの木片がぷかぷか浮かんでいる。
「ちょいと雷はやりすぎたかの…」
こいつら規格外すぎる…
なんか…やばい奴らと関わっちまったかもしれない…