中盤
「おい! 坊主! 船出すぞ!」
「へい!」
すっかりおっさんの見習いみたいになっちまった。
先日釣り上げた巨大魚は高値で売れたらしく、それが嬉しかったのかおっさんに気に入られてしまった。
あのあと、お酒もご馳走になって、この世界のことをたくさん教えてもらった。
なんか、話を聞いたところによるとこのおっさん、昔勇者のパーティにいたそうだ。
どうりでこの体格なのか。
巨大魚が出た時もモリで殺そうとしてたしな。
「あ、ゲンジさんだ」
ゲンジさん。
この人もやばい。
見た目温厚だしめちゃくちゃ良い人そうなおっさん漁師なんだけどこの人、元魔王軍幹部。
なんで人間と共存できているのか聞いてみたんだけど
「そんなもの漁師の世界に関係ない」
と一蹴されてしまった。
今日はこの3人で漁に出る。
正直めちゃくちゃ心強い。
おっさんからもらったメモ帳っぽい紙束を持参する。
これで色んな魚を記録してやるぞ。
漁を始めて一つ目のポイントについた。
網を引き上げると綺麗な魚や大きく太った魚、見た目モンスターだろ!って思える魚など、多種多様な魚がたんまりかかっている、
1匹1匹綺麗に模写をしていく。
やっば、めちゃくちゃ綺麗に模写できるんですけど…
俺、ピ○ソ?
これもアスリートのソレか…ありがとう。
約20種類の魚を模写した。
できれば捌いて味とか特徴も描きたいが、売り物になるだろうしそれはできない。
自分で釣ったやつだけにしないとなー。
釣竿に反応があった。
「お! 食いついてんじゃねぇか! ひけひけ!」
勇者のおっさんと魔王のオッサンが俺を煽る。
「頑張れ頑張れ! 糸切らさないようにな!!」
「うおおおおおおお!」
みんなの期待を胸に、おれ、引きます!!
ザバァン!
ちっこい紫色の魚が釣り上がった。
「ちっこ!!」
「うわ! 坊主、また変なの引きやがったな! がははは!」
「え?」
「それは毒魚だな! ぶほほほ!」
「全く価値がないな」
「そんなぁ…」
食えないのは辛いが、図鑑に模写してドクロマークを書き足す。
「リベンジ!!」
—ザバァン!
俺じゃない。
海の方から聞こえた。
「まずいぞ…海賊だ!!」
「坊主!! 帆を広げろ! 逃げるぞ!!」
「はい!!」
しかし、相手は海賊船。スピードに特化している。
漁船が勝てるはずもなかった。
後ろから大砲が放たれる。