表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/41

8話 技術に体が追いつかない

 ゴブリンを凄まじい体捌きと殺しに特化した剣技で斬り伏せる。それと同時に体が軋む音が絶えず鳴る。

 なのに、俺の攻撃は止まらない。止められないんだ。俺の体なのに、体が言うことを聞かない。


 一体、これはどういうことだ。


 かろうじて首から上は動くので、ついてきているジュジュに助けを求めた。


 しかし、


「ワタクシ、どうなっても知りませんと言いましたわ」


 との一点張りで、聞く耳を持ってくれない。


 これは予想外の展開だ。自分の意のままに無双してやるつもりだったのに、勝手に無双しちゃってる。


 ……あかん。このままだとゴブリンの群れを殲滅する前に、俺の体が使いものにならなくなる。

 それに、意識が朦朧としてきてヤバい。体調不良なのにこの運動量は本当にキツい。


 正直、舐めていた。


 どれだけゴブリンいるんだよ。まだ魔力に余裕はあるけど、終わりが見えなくて焦っている。


 そんなことを考えながらも、今も絶えずゴブリンを殺し続けてるんだけど……驚きを隠せない。

 こんなにも勇者の身体能力は高くて、剣聖の剣技は研ぎ澄まされているのか……。


 もちろん、聖剣――武器の性能もあるだろうが、ゴブリンの体をバターのように斬っている。

 ……そして、なにより斬った場所から血が噴き出すのは別のゴブリンの首を跳ね飛ばした後。


 つまり、ゴブリンの体が斬られたことを知るのに、遅れが生じているのだ。


 それほどまでに剣聖の剣技は静かかつ正確で、死を悟らせない。


「……よかった。勇者も剣聖も、敵じゃなくて。敵だったら悪魔だぞ……」


「心配しなくても大丈夫ですわ。勇者は聖剣がある限り、人を襲えませんもの」


「聖剣がある限り? 勇者の意思で動けないのか?」


「聖剣は魔物を殺すためだけに作られていますの。決して、人に向けることは許されませんわ」


「なるほどなぁ」


 勇者に選ばれたら、聖剣を肌身離さず持っている必要があると聞いたことがあるから……しんどいな。

 なにがあっても人を守らないといけないってことだし。……たとえ、親を殺した犯罪者でも。


 嫌なら捨てればいいって思うかもしれないけど、手放しても戻ってくるっていう話もあるしな。

 そう考えると、絶対に勇者にはなりたくないなぁ。もうなれないけど。


 たしか、勇者に選ばれた者は生まれながらにして手の甲に勇者の紋章が刻まれているらしい。

 

「そういや、今って勇者は生まれてんのかなぁ」


「それはわかりませんけど、勇者は生まれてこない方が世界のためですわ。勇者がいるということは、魔王が復活したということですもの」


「そうだな。……で、ジュジュ。さっきの話を聞いて思ったんだけど、聖剣って呪具みたいだよなぁ?」


「な、なんのことですの?」


「しらばっくれるなって。聖剣にも人格があるんだろ。お前もゴミ箱に捨てたのに戻ってきたし。つまり、俺の体が勝手に動いてるのは聖剣のせいだな」


「…………」


 お、図星か。といっても、どうこうするつもりはない。俺が言い出したことだし。

 でも、対処法は教えてもらいたいところだ。話しているときもずっとゴブリンを殺し続けていて、しんどい。


 あと、舌を噛みまくって血の味がする。早く動きの止め方を教えてほしいものだな。

 これでは貧血の症状も出かねないし。


 そう思っていると、


「し、知りませんわ!」


「え?」


「たしかに聖剣には人格がありますけど、ワタクシが作り出した聖剣にはありませんの! 体が勝手に動くのは、聖剣の副効果でワタクシにはどうにもできませんわ!」


「じゃ、じゃあ……俺ずっとこのまま?」


「ノロアさんの魔力が枯渇するか、魔物を殲滅すれば動きが止まると思いますわ……多分ですけれど」


「嘘やん……」


 思いもよらない言葉に、俺はショックを受けて項垂れる。……ゴブリンを殺しながら。

 こんなにも落ち込んでいるのに、動きには一切迷いがなく――刃物そのものだ。


 その瞬間、


「きゃあああああぁぁぁぁぁあああああ――ッッッ!」


 少女の悲鳴が村中に響き渡った。それと同時に、俺の体も無理やり方向転換する。


 どうやらこっちの方角にいるらしい。


 いや、そんなことよりも……!


「くそ……! なんで外に出ているんだ! 避難したんじゃないのかよ!?」

 

最後までお読みいただきありがとうございます!

少しでも面白い、続きが読みたいと思っていただけたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


評価ボタンはモチベーションアップにも繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ