5話 逃げられない理由
呪われた魔道具――呪具のことをジュジュと名乗った幼女に教えてもらって数時間。
俺は気を失ったことで中断していた遺品整理を再開していた。その間、ジュジュはずっとべったりだ。
どうやら、俺と離れたくたないらしい。
そのせいでずっと話すことになったんだが、驚いたことにジュジュは1600年前の魔道具だった。
1600年前って言うと初代勇者が活躍した時代で、これまた驚いたことに、ジュジュは初代勇者パーティーのメンバーに会ったことがあるらしい。
そのことを嬉々として話していたが、それと同時にその時代で使われて以降、使われなくなったとも。
つまり、俺はジュジュを1600年振りに使用した所有者ということになる。
だから、ジュジュはここまでべったりくっついてくるのかもしれないな。
そして、今現在――俺たちは妙に騒がしくなっている家の外を眺めていた。
外には村の住人が数十人規模で集まっていて、みな大なり小なり荷物を抱えている。
「……ノロアさん。あの方たちは、引っ越しの準備でもしているんですの?」
「どう考えても違うだろ、あれは」
「じゃあ、なんですの?」
「魔物がこの村を襲う可能性があるから、避難の準備をしているんだろう」
「それにしては、落ち着いて見えますわね」
「そりゃな。これが初めてってわけでもないし」
たしか、俺の記憶が正しければ、すでにこの村は何度も魔物の群れに蹂躙されている。
俺が生まれてからも4回襲われてるはずだ。その4回とも、死者数は0だけど。
というのも、魔物の群れがやってくるのは村に隣接してある森からだとわかっている。
わかっているなら定期的に森を探索しておけば、襲われる前に魔物の群れを見つけることができる。
魔物の群れを見つけてしまった場合は、教会の下に作った地下室に避難すればいい。
結界を張っているから、魔物は地下室はおろか教会にすら侵入できないからな。
だから、村人たちは恐れもしないし、焦りもしない。
「それなら、ノロアさんも避難の準備をした方がいいんじゃありませんの?」
「まぁ、そうなんだが……」
それができるんなら苦労しない。俺だって死にたくないし、今すぐ避難したいところだ。
だが、逃げられない理由が俺にはある。
両親の遺品をそのままにしておけないのもそうなんだけど……なにより、もう奪われたくはないんだ。
この家には今はもういない母さんと父さん、そして俺とは違って優秀な妹との思い出が詰まってるから。
もちろん、バカなことを言っているのはわかる。死んだら元も子もないことだって……。
だけど、魔物ごときに俺たちの思い出を踏み躙らせたくはないんだ……。
「なぁジュジュ。魔物の群れを追い返すことはできないか?」
「無理ですわ。ワタクシにできるのは、『ワタクシで書かれた文字を読み取って、オリジナルの鏡像を作り出す』ことだけですもの」
「それって、なんでも作り出せるのか?」
「生物とワタクシが見たことがないモノ以外なら、聖剣だって作り出せますわ」
……なるほど。基本的に、ジュジュが見たことがあるモノならなんでも作り出せるのか。
……よし、それなら魔物を追い返すどころか、殲滅だってできるかもしれない。
でも、そのためには……。
「なぁジュジュ、無限の魔力を作り出すことはできないか?」
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