3話 呪い殺した理由
体が重い。特に右腕だ。柔らかく温かな『何か』がまとわりついているのか、身動きが取れない。
一体、なんなんだ……。今までこんなことなかったから、不安になってくる。
もしかして、これも呪いの魔道具に触れてしまったがための弊害なのか?
だとしたら、おちおち寝ていられない。今すぐ起きて、この得体の知れない『何か』の正体を確認しなければ……。
そう思い、右腕に力を入れたところ……
「んむぅ……」
耳元で女の子の声が聞こえた。
おいおい、そんなホラーな展開はいらないよ。そんなの、求めてすらいない……。
横を向いたら人が寝てるとか、ありえないでしょ……。
え? どうしたらいい? 目を開けて確認するべき? もう完全に目も覚めてしまっている。
だから、知らないフリをして眠ることはできない。というか、気になって寝れるわけがない。
「…………」
よし。3、2、1で横を向く。行くぞ。行くからな。3、2、1で行くからな……! 本当だぞ!
――3。
――2。
――1。
「――――っ!」
俺は勢いよく右を向いて目をかっ開き、そこにいるだろう『何か』の正体を見極める――!
……幼女だった。そこにいたのは紛れもなく幼女だった。一糸まとわぬ姿で、黒髪の幼女は眠っていた。
……誰ぇ? ほんまに誰ぇ?
……ちょっと不安になってきた。俺、無理やり女の子を連れてきたわけじゃないよな?
いや、それはない。そんなことをした記憶はないし、夢遊病でもないはずだ。
だとしたら、この子は一体……。
「あっ……」
目がかち合った。視線がかち合ってしまった。
しかし、目の前の幼女の表情に変化はない。それとは裏腹に、俺の心臓はバクバクと高鳴っている。
それは別に目が合ったからとか、恥ずかしいからとか、そんなことが原因じゃない。
ただ、綺麗だと感じてしまったんだ。理由は、なんでなのかわからないけれど。
そんな俺の大胆な視線が気になったのか、
「あらあらノロアさん、そんなに見つめられてしまいますと照れてしまいますわ」
と、頬を赤らめる。
しかし、俺にとってそれどころではなかった。
「――っ!?」
「なんで俺の名前を!? とでも言いたげな表情ですわね。でも、当然のことですのよ? ワタクシ、あなたのことをずっと見てきましたもの……」
「俺を、見てきた?」
「えぇ。あなたがこの世に生まれてからずっと……」
あぁ、そうか。やっぱり、この幼女の正体は……。だとしたら、聞かずにはいられない。
もちろん、聞いてどうこうするつもりはない。ただ、聞いておきたいんだ。
「なぁ、お前はなんで俺の母さんと父さんを……」
「聞きたいんですの? 聞いても、理解なんてできませんわよ?」
「それでも、聞かせてくれ……」
「……わかりましたわ。あなたがそう言うのでしたら……。ワタクシがあなたの両親を呪い殺した理由、それは……ただの私怨のほかありませんわ」
幼女の姿で現れた――呪具の人格は淡々と告げた。私怨で殺したとは思えない無表情で……。
しかし次の瞬間、幼女は必死になって訴えかけてくるのだった。
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