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35話 わたしのことはこれから

「えっ?」


 今……彼女はなんて言った? 俺には研究室が魔族に乗っ取られてるって聞こえたんだけど。

 ……いやいや、まさかそんなわけないじゃん。きっと何かの聞き間違いか何かだろうな。


 ……しゃんとしろ、俺。14歳という若さで耳がおかしくなってきているとかシャレにならないぞ。


「すまない、よく聞き取れなかった。もう一度、言ってくれないか?」


「ですから、王国魔法師団の研究室は完全に魔族に乗っ取られているって話です」


「…………」


 ……あ、あれぇー? 聞き間違いじゃない? ってことは本当に研究室は乗っ取られてるの……?

 ……ははは、シャレにならねぇ。だって、量産されている呪具すべてが魔族側の兵器ってことだろ?


 ただでさえ魔族は人間より身体能力が上なのに、そこに無限の魔力が加わるってことだから……


「……勝ち目無くね?」


 だって、こんなの魔法ブッパで全滅だ。魔力が尽きないってだけでこうも戦力に差が生まれるとはな。

 これじゃあ数的優位なんて無いも同然だ。それに加えて、人間側に魔王幹部を倒せる奴もいない。

 

 ……なるほど。これが敗色濃厚って奴か。


「えっ? まさか、魔法師団全体が魔族に乗っ取られてるってことはないよな?」


「流石にないでしょう。仮にそうならすでに人間は魔族に敗北しているはずです」


「……それはよかった。……もしかして、国王は魔族と通じてたりする?」


「それも大丈夫かと。初代魔王の血を受け継ぐ人が格下の魔族と繋がっている可能性は低いでしょう」


 あぁそうだった。てっきり忘れていたよ。


 第二王女のオリビアが魔王の妹の子孫ってことは、当然国王も魔王の血を受け継いでいるよな。

 ……あまり頼りにならなそうだけど。というのも、その国王の話をまったく聞いたことがない。


 それどころか、名前すら聞いたことがないよ。


「……まぁ、話はわかった」


「わたしと契約する気にはなりましたか?」


「まぁ、そうだな。お前と契約した方がいろいろと情報も集まりそうだし……契約してもいいか」


「……当然です。ここで契約しない選択をしていたら、無理やりにでも首を縦に振らせるところでした」


 えぇぇ……。無理やりにって……俺、契約するって言わなかったら何されてたんだろう?

 ……まさか、大人のお店でしてもらえるようなことをされていたのでは? ってことはいま目の前で裸なのはその一環だったのかもしれない。


 ……策士だな。この頭脳、使えるぞ。


「で? 契約ってどうするんだ? そもそも呪具に契約なんてあんの? ジュジュとはしてないけど」


「……ふむ。やはりわたしとあの呪具おんなとでは、根本的に違うということでしょうか。何と忌々しい」


「え? 何の話?」


「いえ、こちらの話です。……話を戻しますが、マスターの言っている通り呪具に契約などない。しかし、わたしは呪具以前に一人の精霊。今回は精霊として契約するということです」


 ……ん? 呪具って精霊なの? ……というか、そもそも精霊ってどういう存在なんだっけ?

 英雄譚にちょこちょこ出てきていたのはわかるけど、俺の記憶が正しければ精霊って人型じゃなかったような……。


 それ以前に、こうやって意思疎通を図れる存在ではなかったはずなんだけど……。

 もしかして俺の中の常識って間違えてたりする?


 いやでも、意思疎通できるのは精霊をまとめ上げている四大精霊ぐらいだと母さんも言ってたし……。


「……お前、本当に精霊?」


「疑っているのですか? わたしは紛れもなく精霊です。……人工的に作り出された、ね」


「……ふ〜ん。仮にお前が精霊だとして、何で呪具なんかやってんだ?」


「当然の疑問ですね。ですが、わたしたちはたまたま呪具という便利な言葉があったからそう呼ばれているだけで、マスターが持つ呪具とは存在がまるで違う。わたしたちを適切に言い表すなら、魔道具を依代にされた哀れな精霊でしょう」


 ……う、うん。そうなんだ。何にもわからないからこれ以上は聞かなくていいや。

 いま思ったら、俺まともな教育受けてないからこんな話されても理解できるわけないんだよな。


 俺ができるのはせいぜい読み書きぐらいだし。


「で、どうやって契約するんだ?」


「わたしに名前をつけてくれるだけでいい」


「……それだけ?」


「もちろん条件もありますが、それは出会った瞬間からクリアしていますので」


「そういうものなのか?」


「マスターに限って言えば……ですけど」


 ……ふむ。何が俺に限って言えば、なのかはわからないけど名前をつけてあげればいいらしい。

 とはいえ、適当につけるのはどうかと思うし。何か特徴から付けられたらいいんだけど……。


「お前の依代ってどんなのだ?」


「これですが……」


 ……指輪、か。これがどういう力を発揮する魔道具なのかはわからないけど、とても綺麗な指輪だ。

 特にはめ込まれている宝石が美しい。光なんて少ししか当たっていないのに、煌びやかに輝いている。


 もちろん、リングの部分も何らかの模様が綺麗に彫られていてカッコいい。


 そうなると、こいつの名前は……。


「ルーナっていうのはどうだ?」


「それがわたしの名前、でしょうか?」


「気に入らないなら、付け直すけど……」


「付け直す必要はありません。わたしのことはこれからルーナと、そう呼んでください――マスター」


 ……これは喜んでもらえてると思っていいのか? 表情がまったく変わらないからわからないや。

 しかし、安直だな。宝石が夜空に輝く月のようだからと、月の女神の名前をそのままとか。


 とはいえ、ルーナがこれでいいというなら俺がどうこう考える理由もないだろう。

 というか、それ以前に考えるのが難しくなってきた。どうやらのぼせる寸前まで来ているみたいだ。


「……そろそろ出るとしようかな」


 まだ女性陣は出ていないだろうから、多少待つことにはなるだろうけど……。

 確か、コーヒー牛乳なるものが売店にあったはずだから、それを飲みながら気長に待つとするか。


 そう思いながら、浴場から出るのだった。

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次の更新は9月2日です!

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