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34話 わたしと契約しましょう、マスター

2章開幕です!

 唐突に思ったことがあるんだ。俺はこのまま魔王幹部と相手し続けてもよいのか……と。

 だって、俺はこの世界の主人公じゃない。仮にこれが英雄譚の世界なら、俺は出てきちゃいけない存在だ。こんなぽっと出の奴なんか……。


 なのに、本来の主人公である勇者の役割を乗っ取りつつある。……まったく望んでないことだけど。


 ――さて、なぜこんなことを思い始めたのか……だが、少し考える時間ができたんだ。

 というのも現在、俺たちは『フェルド』で最高級の旅館に泊まっている。……しかも貸切で。


 流石はアルトリア王国の第二王女って感じで、オリビアがいろいろ手配してくれたんだ。

 まぁ、別に俺は育ちが貧乏だから安宿でもよかったんだけど、せっかくならと満喫することにして……。


 そして今現在、俺は銭湯にいる。もちろん貸切だ。ゆえにめちゃくちゃ寂しい。

 だって、こんなだだっ広い男湯に一人。多分、100人全員がくつろいでいても余裕で入ると思う。


 あぁ……こんなことになるなら、多少の無理をしてでも混浴に入るべきだったか。

 混浴ならジュジュも入れただろうし……いや、結局のところ寂しいことには変わらないか。


 俺、まだジュジュと仲直りしてないし。


 ……ちなみに、ほかの女性陣たちはみんな仲良く女湯でキャッキャしていることだろう。

 ……はぁ、いいなぁ。きっとそこは俺……いいや男にとっては楽園エデンそのもののはず。


 一度でいいから見てみたいな、そういうの。


 ……なんていう煩悩を抱えながら、一人思考に耽っていたら俺はぽっと出のモブだよなと思ったのだ。


「しっかし凄ぇなこの湯。筋肉痛やら関節痛やらが和らいでいってる……」


 俺の勘違いでなければ、そういう効能があるんだろう。ちなみにこの湯は『治湯』という名前がある。

 だから、当然と言えば当然なんだけど、そもそもこのデカい風呂に入るという行為そのものに癒しがあるんじゃないだろうか。


 今までお湯に浸かるということをしたことがないからイマイチわからないけど。


「……はぁ。ずっとこのままで居てぇわ。本音を言うなら魔王幹部なんかと戦いたくねぇし」


「それならあんな呪具おんな捨てて、わたしと運命をともにしましょう?」


「…………」


 ……えっ? 思わず固まっちゃったけど、えっ? さっき隣から女の子の声が聞こえたんだけど。

 もしかして幽霊? 俺、幽霊とかそういう心霊はダメなんだってば……!


 と、どうしていいのかわからないでいると。


 ――ピトっ。


 ……ヒェっ!?!? これは敏感になりすぎてしまっているんだろうか……?

 俺の左腕に銭湯の湯とは違う温かく柔らかな感触を感じたような気がするんだけど……。


 ……ん? 今までにもこんなことが何度かあったような気がする。

 いやでも、ジュジュとは仲直りしていないからジュジュではないだろうし……。


 ……じゃあ、誰? さっきまでここには俺しかいなかったし、そもそもここは貸切で……。


 やっぱ、幽霊? と結論を出そうとしたそのとき、


「こちらを見てほしいです、マスター」


 と、声が聞こえてきて……グイッと顔の向きを変えられて、俺の視界に見覚えのある裸の幼女が映った。


「お前は……」


「やっと二人きりになれましたね」


 あぁ、そうだ。やっぱりそうだ。満喫しすぎて忘れてたけど、俺には呪具が引っ付いてたんだった。

 確かこいつはアリスの話では、王国魔法師団の研究室で量産されている呪具だったはずだ。


 どうして俺に着いてきたのかわからないけど。


「……一応、聞いておく。お前は俺の――俺たちの敵か? 返答次第では……」


「殺しますか? わたしを、わたしたちを」


「そりゃ、厄介な力を持っているからな」


「厄介……。その言葉が聞けて、とても嬉しいです」


 ……何を考えてやがる。今のところ敵意は感じないけど……どういう目的で俺に接触した?


 魔族の指示か、それとも別の理由があるのか……。


「――わたしと契約しましょう、マスター」


「……は?」


「マスターはわたしと敵対したくない。そして、わたしはマスターと運命をともにしたいと思っている。つまりこれはお互いにとって、ウィンウィンの関係ということ。反対する理由があるなら聞きますが……」


 ……やべぇ。本格的に何を思って接触を試みたのかがわからなくなってきた……。

 まず契約ってなに。呪具に契約なんてあるのか? というか、マスターって俺のこと?


 それ……めっちゃカッコよくね? もはやそう呼ばれたいがために契約したくなるんだけど。

 ノロアさん、主人様……そうジュジュには呼ばれてきたけど、マスターはその上を行く。


 だがこいつを信用していいのかがわからない以上、身近な存在にはしたくないというのもまた事実。

 だって、表情がまるで読めない。というより、表情筋が死んでいて、信じようにも信じきれない。


 まぁ、目が死んでる俺には言われたくないだろうけど。


 それに、


「お前と契約してこっちに何のメリットがある? 量産型ってことはお前はお前以外に何人もいるってことだ。だから、お前と契約したところで厄介な能力が俺たちに牙を剥かない理由にはならないだろ?」


「……確かにわたしは量産型。別個体がマスターに敵対しないという保証はありません。しかし、わたしにはそれ以上に有用性がある。別個体と言えども元は同一個体であるがゆえに情報を共有でき、わたしはあなたが知り得ない情報を知ることができると断言します」


「なるほどな」


 確かにそれはすごく魅力的な提案だ。魔族が王国の内部に入り込んでいるならとても有用性がある。

 ただ……手に入る情報はかなり限られたものになるはず。だから、まだこれでは……。


「むむむむむ、マスターは強情です。しかし、マスターが考えている以上にわたしはやれると思う。研究室が機能し続ける以上、わたしの残機は無限なのでいろいろな場所に侵入可能です。それによほどのことがない限り見つからないほどの隠密性を持っているので、マスターの要望には想定以上に応えられることをここで約束しましょう」


 ……めっちゃ自分をアピールするじゃん。しかも、無い胸を張って「ふふんっ」とでも言いたげだ。

 それほどまでに自信があるんだろうな。それに、一糸纏わぬその姿で胸を張っているのに表情一つ変えない。


 つまり、恥ずかしくないということ。


 それすなわち動揺する可能性は皆無。であるならば、偵察隊としては有能も有能……超有能だ。

 こいつがいるだけで魔族の動きに遅れを取らなくてもいいかもしれない。


「……わかった。お前の有用性は認める。じゃあ最後にお前がいま知っていることを話してくれ」


 ――と、安易に話すキッカケを与えたのがマズかったのかもしれない。

 もう少し用心するべきだった。どんな情報が飛び出してきても動揺しないように……。


 しかし、時すでに遅し。次の瞬間には、彼女の小さな口が開いていた。


「わたしが知っていること……。――王国魔法師団の研究室は完全に魔族に乗っ取られているとかでしょうか?」



最後までお読みいただきありがとうございます!

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次の更新は8月31日です!

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