間話 少年に着いていきたい
〜名もなき呪具視点〜
わたしは一般的に呪具――つまりは呪いの魔道具であるとされています。
しかし、その実態は人工的に生み出された精霊が魔道具に宿った……というもの。
もちろん、例外はいます。
初代勇者パーティーに所属されていた稀代の天才錬金術師――ジェイドが作り出した5つの呪具です。
その5つの呪具は大量生産されているわたしたちとは根本的に違っていて、複製はおろか再現すらできません。
科学者たちはロストテクノロジーだと言っていました。
ですので、人の身であるにも関わらず神の領域に至ったジェイドが作り出した呪具の実態は未だ不確定。
今後一切、解明できないとも言われています。そもそも解析すら不可能なわけですが……。
だって、触れたら最後……呪われてしまいますから。その点、わたしたちは無害なのでいいですね。
……とはいえ、複製されるのはとても不愉快で、ましてや魔族に道具みたいな扱いをされるなんて……。
そう思っていた矢先、眩い光を放つ少年が現れました。かの呪いの魔道具とともに……。
そのとき、初めて羨ましいと思いました。そして、やっぱり根本的に違うのだなとも……。
ただの道具として作り出されたわたしでは、あの呪具のようには愛されることはありえません。
そう……ありえないんです。人を間接的に何千、何万と殺してきた人殺しを誰が愛してくれましょう。
きっと、わたしはこれからも道具として生きていく。そう思っていたら……。
何とわたしをこき使ってきた魔族が逃げていくではありませんか。
でも、
「クヒャ、クヒャヒャヒャヒャッ! お前は何か忘れてねぇかなぁ!? オレにはコイツらがいんだよ!! ――おい、お前ら【爆裂魔法】だ! オレのために死ねやぁああああああぁぁぁぁぁ――ッッッ!!」
あろうことか、その魔族は逃げる時間を稼ぐためかわたしに彼を殺せと命じました。
……非常に残念ですが、殺せと命じられれば殺すほかありません。わたしは道具。命令に背くなんてこと、できっこありませんから……。
あぁ、知らないうちに心まで道具になっていたんですね、わたしは……。
――【爆裂魔法】。
何かに妨げられることもなく、絶対に人を殺せる魔法を発動しようとしました。
しかしその瞬間、体から魔力が抜け落ちるような感覚があり、気づけばわたしは地面に倒れていました。
恐らく、かの少年の寵愛を一心に受け止める呪具がわたしを魔力欠乏症に陥らせたのでしょう。
……よかったです。あの人を殺さずに済んで……。
というのが第一の心情……だったのは間違いありません。しかし、次の瞬間には……。
――少年に着いていきたい、でした。
せっかく開放されたのです。わたしがしたいことをしてもいいではないでしょうか。
そもそも、あの少年がいけないんです。きっと、彼は精霊に好かれやすい体質で、なおかつあのコンビネーションを見せつけられると精霊なら誰だって……。
精霊は契約者――つまりはパートナーと運命をともにすることこそが最上の喜びなのですから。
それはたとえ呪具となった今でも変わらず、そして人工的に生み出された存在でも何ら変わらない。
だから、着いていかなくては。そして、名前をつけてもらって契約を交わしてもらいます。
幸いにもわたしは魔力を溜め込む力を持っているから、魔力欠乏症はないにも等しい。
そして、今まで魔族のせいでいろいろな魔法を強制的に覚えさせられたから、隠密も使えます。
あの少年は絶対に鈍いから私には気づかない。危険なのはあの呪具ですが……おや?
これはもしや、喧嘩でしょうか。これなら引っ付いても何も言及されずに済むかもしれません。
……よし。行きましょう、やりましょう。ほかのわたしはわたしの影に隠れてもらって……。
――【飛行魔法】。
そして、そのままあの少年の肩に掴まりました。後は二人きりになれるまでこのまま……。
……その数十分後、魔族にバレました。
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次回の更新は8月29日です!




