33話 やるべきことはこれまでと変わらない
『飛行魔法』で空を行く。ジェイド特製のくそマズポーションのおかげで魔力は満タンだ。
……しかし、あれだな。今さらこんなことを言うのもなんだけど、魔力効率悪すぎじゃね?
5分ほど飛行しただけなのに、1割ほど消費したような気がする。……気がするだけだけど。
……いや、もしかしたら魔法の才能が皆無の俺だから、魔力の消費量が半端ないだけなのかもしれない。
確か魔法は魔力操作が難しいモノほど魔力がダダ漏れになってしまうという話を聞いたことがある。
俺が『火球』を連発できていたのは、単純な魔法だった……ということなのかも。
やっぱり、幾ら魔力を増やそうと俺のスペックが低すぎるから無駄が多いな。
これからはあまり魔法に頼らない方がいいかもしれない。正直、魔法は上達しそうにもないし。
……と、そんなこんなで空の旅を堪能した俺たちはオリビアの元に合流した。
のだが……。
「どうした、お前ら」
と、アイギスに一発で見抜かれてしまった。
そう、何を隠そう……ジュジュは今、めちゃくちゃに拗ねてて話を聞いてくれない状態なのだ。
どれだけ謝っても無視の一点張りで、結局このまま機嫌を直してくれることはなく……。
……はぁ。女ってめんどくせぇ。
「……アイギス、俺はお前みたいにサバサバしている方が接していて楽だって気づいたよ」
「――――ッ!?」
「ん? どうした、アイギス」
「いや、何でもねぇ。ただ、アイツと同じことを言ったから驚いただけだ」
「そうか? それにしても……」
あれだけいた魔物が1匹残らず氷漬けになっててビビるんだけど……。流石におかしいよね、これ。
アイギス一人で魔物すべてを相手するのは無理だと思うし、魔力だって切れててもおかしくない。
それなのに、アイギスはピンピンしている。
逆にオリビアが肩で息をしていて……え? もしかして、これオリビアがやった感じなの?
もしそうなら、本当にオリビアは魔王の子孫なのかもしれない。まだ信じられないけど。
「……でもまぁとりあえず、無事でよかったな。お互いにさ」
「あぁ、そうだな。……ところでノロア。そいつは一体なんだ?」
「え? 何が」
「いや、いるじゃねぇか。お前の肩に」
「……えっ?」
いや、本当に何を言ってるの? 俺の肩に何かがいる? やめてよ、そういう怖いこと言うの。
俺はオバケとか苦手なんだよ。村の祭りの催しにあったオバケ屋敷がトラウマになってるせいでな。
というのも、アリスがそのオバケ屋敷にとんでもない仕掛けを施していて……あぁ、くそ。
思い出しただけで冷や汗が出てくるんだけど、俺はあのとき失神するぐらいの恐怖を感じたんだ。
だから、俺に心霊系はダメ。その場でお漏らししちゃう恐れがあるから……。
「教えてやんなかったのか? ジュジュ」
「…………」
「そっぽ向きやがった。……オレ様が言うのもなんだが、お前ほんと何した?」
「何したっていうか。『何』もないから拗ねてるっていうか……あ痛っ」
……ジュジュに脛を蹴られた。どうやら貧乳をイジったことがバレたみたいだ。
やっぱり、女はそこら辺敏感なのかもしれない。アリス然り、今回のジュジュ然り。
「で、アイギス。俺の肩に何がいるんだ?」
「……子どもっつーか、この感じは呪具だな」
「呪具? ……あー、もしかしてあいつか? 何で着いてきてんのかわからんけど」
それに、魔力欠乏症で気を失ったはずだけど……。
「覚えでもあんのか?」
「あぁ。こいつは魔王幹部が連れて来てたんだ。……そういやジュジュ、あいつの名前ってなんなんだ?」
「…………ベルゼビュート」
ベルゼ、ビュートだと……。か、カッケェ。アイギス然り、ベルゼビュート然り、なんなんだ……。
どうして魔王幹部は名前がカッコいい奴ばかりなんだ。まぁ、嘘を真に受けてるアホだったけどな。
そのおかげで助かった感じなのが癪だけど。
「ベルゼビュートだと……? すまない、ジュジュ。オレ様がそっちに行くべきだった」
「……平気ですわ」
「そうか、ならいいんだが……」
ふむ。この感じ、アイギスも知ってるみたいだな。まぁ、昔からの仲だから当然と言えば当然か。
となると、アイギスとベルゼビュートもまた面識があると思っていいのかもしれないな。
「ノロア。ベルゼビュートは倒したのか?」
「いや、逃した。今の俺に倒せる力はなかったからな。……で、着いて来た呪具だけど…………」
「……ん? 待て。オレ様、コイツの顔を見たことあんぞ」
「だろうな。アリスが言うには、王国魔法師団の研究室で作られた呪具らしいし」
「あぁ! そうだ! っつーことは、待てよ? ベルゼビュートがソイツを持っていたっってことはよぉ……」
……どうやら、俺と同じ考えに至ったみたいだな。
人間側に魔族と繋がっている奴がいる可能性と王国の中枢に魔族が入り込んでいる可能性の二つに。
とは言え、別にそれが絶対にダメだということもない。利用してやればいいのだ。
俺がベルゼビュートにしたみたいに、偽の情報を掴ませることができたら混乱を招くことができるだろうし。
まぁ、それをするには誰が人間で誰が魔族なのかを細かく知っておかないといけないけど。
「で、アイギス。ベルゼビュートの狙いはオリビアだ」
「……やっぱり、そうか。偶然のわけねぇよな」
「狙われる理由はわかってるのか?」
「あぁ。ベルゼビュートはオリビアを使って、魔王の復活を早めようとしている」
「オリビアが魔王の子孫だからか?」
まぁ、俺にはそれでどうこうできるとは思わないけど。
「そうか、知っちまったのか。……だが、厳密には少し違う。オリビアは魔王の妹の子孫だ」
「……なるほど。まだ少し疑問に思うこともあるけど、厄介なことに巻き込まれたのはわかった」
「すまない、ノロア。本当ならオレ様が解決しなければならないことに首を突っ込ませる形になっちまって」
「気にするな。ベルゼビュートはジュジュのためにも倒さないといけないし」
「……お前は本当にアイツと似ているな」
……? まぁ、とにもかくにもやるべきことはこれまでと何も変わらないみたいだ。
ベルゼビュートを倒すにしても、オリビアと一緒にいれば相手の方から姿を見せるだろうし。
俺はオリビアに王宮へと連れて行かれている身だから、しばらくは一緒にいることになる。
それに、何でかは知らないけど……オリビアは守らなくてはならないような気がするのだ。
この感覚は、どこかジュジュに近いモノを感じる。
「……さて、こんなところで立ち話をするのもあれだし、とりあえず近くの街に移動しようぜ。着いて来た呪具もどうにかしたいし」
「賛成! おにぃに抱きしめられてからずっと汗臭いし、早くお風呂に入りたいもん」
「ノロア、お前……」
「ち、違うぞ! 勘違いするなよ、アイギス。俺はただ……!」
「……ワタクシはセクハラされましたわ」
「どうやらオレ様はノロアを買い被りすきていたみてぇだ」
……ち、違うのに。確かに貧乳イジりはしたけど、逆にそれ以外は何もしていないのに……。
あぁ、ジュジュもアリスもアイギスも先に歩き始めてしまったよ……。
はぁ、女ってほんとめんどくさい。そう思っていると、
「……ん? どうしたオリビア」
顔を俯かせながら立ち尽くす第二王女の姿が視界に入った。
「ごめんなさい、ノロア。私のせいで……」
「ああそうだな。全部お前のせいだ」
「そう、だよね。やっぱり私は生きてちゃいけないんだ……」
あかん。ここに一番面倒なやつがいた。そういやコイツ、自己肯定感がめっちゃ低いんだったな……。
「……そういうのは人前では言うなよ。感じ悪いし、なんか俺が悪いことしたみたいな感じになる」
「…………」
「ほら、行くぞ」
「……うん」
……これはベルゼビュートをどうこうする前に、オリビアの自己肯定感を高めないといけないな。
とはいえどうしたものか……。
なんてことを考えながら、俺たちは近くの街――『フェルド』へと歩みを進めるのだった。
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