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24話 呪具の危険性

 飛行魔法で空を飛ぶ。流石にあの数の魔物を蹴散らしながら進むのは単純に面倒だった。

 ので、ジュジュに頼んで宙に体を浮かせている。まだアリスは他人に魔法を使う技量はないらしかった。


 あまり余計な魔力は使いたくないんだけど……。


「なぁジュジュ。あの魔力を増やす実ってさ、魔の瘴気を撒き散らしたりする?」


「よくわかりませんけど、多少は……? もしかして、いま食べようとしていますの?」


「まあ……。魔力も半分以下だし、魔力回復の意味合いでな」


「それでしたら、こちらを飲んでくださいまし」


 そう言って、ジュジュは謎の液体が入った小瓶をどこからともなく取り出した。

 どうやらジュジュは俺と違って、文字を書かなくてもイメージを投影することができるらしい。


 ……そうなってくると、文字を書かなくてもジュジュに言葉で伝えて投影してもらった方が早いのでは?

 と言っても、どのみち戦闘中に意識を割くことになるからあまり良くはないけど……。


 なんか、ほかにやりようがないのかなぁ。


「どうかしましたの?」


「いや、ほかに課題を思いついてな。……これ、もしかして魔力ポーション?」


「えぇ。それもジェイド様が作った、今は流通していない特製ポーションですの」


「へぇ……。そういや、ジェイドってどういう人だったんだ?」


「ジェイド様は変態の権化でしたわ。魔道具に人格を持たせようとした人ですもの」


「違いないな」


 ……ふむ。どうやらこの口ぶりからして、ジェイド=『あの方』ではないらしい。

 ジェイドはあくまでも創造者……つまりは親みたいな感じなのかもしれないな。


 まあ親を変態呼ばわりしているから、親と思っていない可能性の方が高いけど。


「……それにしても、ジュジュがジェイドに作られたなんてな。まぁいろいろ腑に落ちたけど」


 例えば、魔力を増やす果実のこと。普通はあんなの見る機会なんてないしな。

 でも、ジュジュが初代勇者パーティーと近しい関係なら、魔王領に行ったことがあってもおかしくない。


 それに、投影の条件になっている『見たことがあるモノ』……というのがどの範囲なのかはわからない。

 だけど、仮にじっくり見ていなければならないのなら、やっぱり勇者パーティーと距離が近くなければ難しいよな。

 

 初代勇者の身体能力と剣聖の剣技を投影するなんて……。


「アリスは知ってたのか? なんか、ジュジュのこと知ってる風だったけど」


「当たり前でしょ。呪具っていうのは代々受け継がれていっているモノ。……さっきも言ったけど、本当はあたしが呪具の所有者になる予定だったんだから」


「あー、言ってたな。俺が死んだら、アリスがジュジュの所有者になるって」


「……なのに、なんであんたが持ってんのよ。それは、あんたなんかが持ってちゃダメなモノなのに」


「え? それってどういう?」


「呪具は呪われた魔道具なのはバカのあんたでも知ってるかもだけど、ほんとのことは知らない。……確かにあんたみたいに使ってあげていれば、呪い殺すなんてことしない。だけど、使えば使うほど……積もりに積もった呪いが所有者に逆流しやすくなるの」


 ……と言われても、何がどうなってしまうのかわからないから、イマイチ危機感が…………。

 仮に俺に呪いが逆流したとして、どうなるの? 言い方的に呪い殺されるとかではないだろう。


 それに、積もりに積もった呪いって……。それは、一体どういうことなんだ?

 所有者を呪い殺したときに発散されるものじゃないのか? 


「その感じ、やっぱり知らないのね。なら、教えてあげる。あたしが言った呪いっていうのは、所有者に向けられているものじゃなくて、特定の人物に向けられ続けている憎しみや恨みを一纏めにした負のエネルギーのこと。もし、それが逆流してしまったら、おにぃはおにぃでいられなくなるかもしれないわ」


「俺が俺でいられない?」


「……と言っても、そういう話を聞いたってだけだから、絶対にそうなるわけじゃない。でも、その危険性があったから、あたしたち一族は使用することなく、外部に漏れないよう受け継いできたの、わかる?」


「…………」


 正直、何がなんだかよくわからない。俺たちの家系がどういったものなのかも知らない。

 だけど、こういう理由で俺たちの家に呪具があって、ジュジュが使われなくなった理由もわかった。


 仮に本当にアリスが言っていた通りなのだとしたら、使わない方がこの世界のためかもしれない。

 でも、俺はジュジュに寄り添うと決めたし、ジュジュが犯した罪をともに背負うとも言った。


 それに、使わなければ俺が死ぬ。

 

 だから、俺の取るべき選択は――


「――それでも、ジュジュを使い続けよう。俺が俺でなくなる瞬間でも……な」


「……はぁ。こうなることがわかっていたから、お母さんはあたしを後継者に選んだのに……」


「ごめんな、アリス」


「謝るぐらいなら、初めからこんなことしないでくれる? ほんとおにぃはめんどくさいんだから……」


 ……とか言ってる割に、いつもとトゲが少ないような気がしないでもない。


 もしかして、デレ期? 可愛いやつめ。もっとデレてくれてもいいよ。

 アリスを危険な目に合わせたくないから、俺がジュジュを引き受けるっていうのもあるんだからさ。


「……はい! もうこの話は終わり! 早く行くよ、ノロマなおにぃ。魔王幹部のところまであたしが案内してあげるんだから、感謝しなさいよね!」


「はいはい……」


 やっぱ可愛くねぇわ、この妹。だけど、このツンデレ具合がアリスなのかもな……。

 とか思いながら、アリスの後ろを着いていく俺。


 その隣で、ジュジュは――。


「ありがとうございます、ノロアさん。こんなワタクシを受け入れてくれて……。そんなノロアさんだからこそ、ワタクシはあなたを……」


 と、デレを見せてくるのだった。可愛い。

 

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