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20話 強者の気配

「う、うわぁ……」


 目の前の惨状を見て、思わず声を漏らしてしまった。……自分がやったことなんだけども。

 まさか、ここまで壮絶なことになるとは思いもしなかったんだよな…………。


 だって、使ったの【ファイアボール】だよ? 一発なら、手のひらほどの大きさしかない下級魔法。

 しかも、温度は低い。昔、大切な物を母さんに捨てられて、我を忘れた俺は母さん目がけて魔法を使ったんだけど、火傷すらしなかったんだよなぁ。


 これって、俺の母さんがおかしかっただけ? それとも、魔力が増えたお陰で温度が上がったのか。

 流石に10000発同時に撃ったとしても、温度自体は上がらないだろうから……。


「よくわかんねぇなぁ、魔法って」


 魔力を増やしていくのと並行で、魔法の練習もしていく必要がありそうだな。


 じゃないと……


「……へっ? へっ? 一体、何が起こったの?」


 こうなるもんな。とは言っても、今回ばかりはテンパってしまうのは無理もない。

 俺だって何がなんだかよくわからないもん。本当にこれ【ファイアボール】? って感じになってる。


 だって、目の前に赤い海ができてた。轟々と燃え盛る灼熱の炎の……だけど。

 一体、この中はどのくらい熱いんだろうか?

 魔物たちの断末魔のような叫びが聞こえない辺り、一瞬で灰になっているんだろうけど……。


「な、なぁ……。俺が使ったのって下級魔法だよな?」


「何を言っていますの? 【ファイアボール】は上級魔法ですわ」


「え? じゃ、じゃあ、これは……?」


 そう言って、俺は手のひらに【ファイアボール】を作り出し、ジュジュに見てもらった。


「生活魔法の【プチファイア】ですわ」


「ぷ、プチ? 【プチファイア】?」


「えぇ。主に着火する際に使用する【プチファイア】ですわ」


「……な、なるほど?」


 俺が今まで【ファイアボール】だと思って使っていたのは【プチファイア】だった……と。


 え? これはどっち? 


 俺が【プチファイア】を【ファイアボール】だと思い込んでいたのか。

 それとも今の時代では【プチファイア】が【ファイアボール】だと言われているのか……。


 後者の場合、魔法が衰退しているということになるけど……。


「……ジュジュ。これは、後でお互いの認識を照らし合わせないといけないかも……」


「……ですわね」


 ……どうしよう。これからどうしよう。


 オリビアに手柄をやるとか何とか言っちゃったけど、流石にこれはやり過ぎててあげられない。


 想定外にもほどがある。


 ど、どうやったらオリビアを言いくるめられるかなぁ……。


「……あ、あー。す、すげー。今日の魔物はよく燃えるなぁ。油でもかけられてんのかなぁ」


「ノ、ノロア……?」


「ち、違うぞ? これは俺がヤバい魔法を使ったんじゃなくて、勝手に魔物が燃え上がってるだけで……!」


「もしかして、キミも私と同じなの……?」


「……へ?」


「違うの?」


 ……何が? とは言えない雰囲気になってしまった。まったく意味がわからないけど。

 俺とオリビアが同じなわけないじゃん。どこをどう見て、同じだと判断したのか教えてほしいぐらいだ。

 

 だけど、今ははぐらかしとこ。


「と、とりあえずこの火をどうにかしないと」


「そうだね。でも、もう大丈夫」


「大丈夫?」


「頼りになる人が来てくれたんだ」


 ――その瞬間、燃え盛りまくっていた炎が文字通り凍りついてしまった。

 しかし、その周りは凍りついてない。あくまでも凍らしたのは炎だけというわけか。


 一体、どれほどの魔法技術を有してるんだろうか? こんな大規模な魔法を狙った範囲にだけ発動させるなんて……。


 というか、言及するのが遅れたけど火を凍らせるってどういうこと? 


 そんな誰しもがしそうな疑問を浮かべていると、


「――【絶対零度ニブルヘイム】」


 聞いたこともない詠唱が耳朶を打ち、そして――。


「――ノロアさん。動かないでくださいまし!」


 俺の周囲が氷に支配された。

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