15話 お墓参り
あれからわずか1日。両親のお墓が無事にできあがり、俺とジュジュは墓参りに来ていた。
時間は早朝。こんな時間に来たら母さんたちはやかましく感じるだろうけど、仕方がない。
墓参りが終わったら、この村を出発することになっているからな。
ちなみに、オリビアは別行動中。彼女にもやることがあるらしい。それが何かはわからないけど。
でも、まぁ結果的にそれでよかったかな。正直、母さんたちの死を、俺はまだ受け入れきれていないから。
「……まさか、こんなにも早く墓参りすることになるとは思わなかったよ」
最愛の両親の墓前でボソリと呟いた。……自分でもわかる。声が震えていることに。
……だって、仕方ないだろ。まだまだ一緒にいられると思っていたんだから。
……これが亡くしてから気づくってやつなのかな。正直、母さんのことは鬱陶しいって思ってた。
父さんのことも、母さんの尻に敷かれてダサいってバカにしてて、俺は絶対こんなのにはならねぇって……。
だけど、そんな両親でも俺にとっては大事な人たちだったんだと今更ながらに理解する。
でないと、こんなにも胸を締めつけられるような想いはしないはずだから……。
「……ノロアさん。ワタクシはここに来てもよろしかったんですの? ワタクシがいなければ、イリスさんたちは……」
「死んでいなかったと?」
「えぇ。そうですわ。実際、イリスさんたちを殺したのはワタクシですもの」
「……まぁそうだな。その通りだよ。もちろん、俺だってお前を許したつもりはない」
「でしたら……」
「それでも、お前にはここにいてほしいと思うんだよ。だけど、勘違いするな。この判断は、お前の――呪具としての在り方を考慮して下したわけじゃない。お前が今まで何人もの人たちを呪い殺してきたかわからないし、知ろうとも思わない。だが、お前は――お前だけはその罪から目を背けてはならないし、一生を賭けて償い続けなければならない。そのことを理解しておいてほしいんだよ」
そうでなければ、本当にただの人殺しになる。しかも、反省もしない最低最悪の……な。
もちろん、反省をしたからと言って、呪い殺した人たちが……その家族が報われるわけじゃない。
だからこそ、ジュジュにはその罪を背負い続けてほしいし、そうしなければならない。
それが、ジュジュにとって唯一の罰になる。
「……わかりましたわ。ノロアさんが言っていることは、ごもっともですもの」
「とは言っても、ジュジュ1人が背負うことはない。事故とは言え、今の俺はお前の所有者だからな。お前が背負うべき罪の……そうだな。1割……いや、2割は俺が背負ってやるよ」
フッ、決まった! 若干、カッコつけてる感は否めないけど、言っていることは事実だからな。
ジュジュが呪い殺した人数を知らないけど、100人なら20人の死を背負うってことだし……まぁ妥当だろう。
しかし、ジュジュは納得いっていない様子。はて? 何が気に入らなかったんだろう?
「……こういうときはツッコんでよろしいんですの?」
「……え? ツッコむところある?」
「どうしてわかりませんの……? 確かに嬉しい申し出でしたけど、そこは……ほら! わかるはずですわ!」
……わからん。何を言いたいのかサッパリだ。間違ったことを言ったとも思わないし……。
う〜ん。
「もういいですわ……。諦めますわ……」
「……? あ、そうだ。これ持ってきてたんだった」
ふと思い出して、俺はバッグの中から液体が入っているビンを取り出した。
「それはなんですの?」
「酒だよ。父さんは知らんけど、母さんは酒が好きだからな」
「……? イリスさんってお酒飲めましたの?」
「え? お酒は大人の飲み物だって言って、俺に見せつけるように飲んでたけど……」
「……残念ながら違いますわ、ノロアさん。イリスさんは見栄を張りたくて、強がっていただけのはずですわ。ワタクシ、見ていましたもの。イリスさんが泣きながら吐いているところ」
……マジ? もし本当にそうなのだとしたら、俺はまんまと騙されていたことになる。
これは、俺とジュジュの間で母さんに対する認識の違いがあるかもしれないな。
もう母さんは亡くなってしまったから、強がるも何もない。全部、暴いてやるからな。
「……前に言ってたこと覚えてるな?」
「ワタクシから見たイリスさん、ですか……」
「ああ」
「……イリスさんは、ワタクシから見て……――」
――こうして、俺たちは墓参りのことなど忘れ母さんのことについて話し合う。
お互い、どういう風に見えていたのかを中心に。
そして、そのままあろうことかお墓を後に……俺たちはオリビアの元へ向かうのだった。
「……ところで、ノロアさん。イリスさんに手を合わせましたの?」
「……あっ」
急いでお墓まで戻り、手を合わせた。ごめんな、母さん。ごめんな、父さん。
親不孝者で……。
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