9話 魔の紋章
全速力で悲鳴を上げた少女の元へ向かう。その間にも、襲いかかってくるゴブリンを殺し続ける。
一体、どれだけのゴブリンを屠ったことだろう。軽く数百は倒しているはずだが、聖剣の切れ味はまったく落ちない。
それとは裏腹に、俺の体はすでに限界を迎えていた。本来なら、指一本も動かせないはずだ。
だが、俺は突き動かされるままに――言い換えるなら、操り人形のように魔を滅し続けている。
そんな俺の目に、金髪の少女の姿が映った。……が、すぐさま意識の外側に押し出される。
……あれは、一体なんだ?
彼女の周りには見慣れた緑の小鬼の群れと――紛れもないバケモノの姿が。
「ジュジュ、あいつは……」
初代勇者が活躍した時代から生きているジュジュならなにか知っているのではないか。
そう思い、後方にいる彼女へ視線を向けた。
「…………」
しかし、ジュジュはなにも言葉を発さない。というより、言葉を失っているというべきか。
まだ1日の付き合いだが、こんな表情の彼女を見たことがない。
それほどまでにヤバい相手なのだろうか?
そんな俺の疑問に応えるように、
「あれはもの凄く厄介ですわ……。まさか、もう……」
と、ジュジュは苦虫を噛み潰したような表情をする。
「なにか、知っているのか?」
「……あれは多少、姿形は変化していますけどゴブリン・エンペラーで間違いないですわ」
「ゴブリン・エンペラーだって!? ゴブリン・エンペラーって言えば、1匹で小国を落とせるっていう災厄級の魔物じゃ……!」
「えぇ。しかも、あれはただのゴブリン・エンペラーじゃないですわ。ノロアさん、額を見てくださいまし」
「額?」
俺は内心で首を傾げた。どうして急にそんなことを? と、疑問に思ったのだ。
だが、そこにジュジュが不愉快な表情をした理由がある、そんな気がして……。
もう、すぐ目の前まで迫っているゴブリン・エンペラーの額に視線を向けた。
「まさか、あれは……!」
「魔の紋章ですわ」
「やっぱりそうか。だとしたら、そう遠くないうちに魔王が……」
「えぇ」
なんということだ。魔王は100年周期で復活を果たすから、そろそろとは思っていた。
だが、それをいざ目の当たりにすると……無意識に体が震えてしまう。
どうやら、俺は恐怖を抱いているらしい。もしかすると、武者震いなのかもしれないけど。
とはいえ、前者だとするとかなりマズイ。魔王が復活していない今、魔の紋章は不完全。
だと言うのに、恐れを抱いてしまうとは……なんて軟弱者なんだ俺は……。
これでは、いざというとき戦えない。もっと、強くならなければ……。
そのために、今できることは……!
「なぁジュジュ、今の俺でもヤツに勝てるか?」
「……五分五分といったところですわ」
「え? そこは100パーセント勝てますわって言うところじゃないの?」
「だってノロアさん、もう魔力が尽きそうですし」
……あかん、忘れてた。この力、有限なの忘れてた。想定より長く保ってるから勘違いしてた。
運動量エグくて汗が滝みたいに流れてるから気づかなかったけど、いま思ったら冷や汗かいてるような気がする。
魔力枯渇症の症状の1つだ。ってことは、俺の顔面も蒼白になってるな。
そう思ったら、一気にしんどさが増してきた。
「……ちなみに、どのくらいで無くなりそう?」
「1分ですわ」
「1分……。間に合う?」
「大丈夫ですわ。たとえ、大国を滅ぼしうるゴブリン・エンペラーが相手でも、あの方の力なら……」
「ゴブリン・エンペラー強くなってね?」
「当たり前ですわ。魔の紋章は何十倍、何百倍にも力を高める――ってあぁノロアさん! 前、前を見てくださいまし!」
「え? う、うわあああああぁぁぁぁぁあああああ――ッッッ!?」
そのコンマ数秒後、俺とゴブリン・エンペラーは文字通り衝突する――!
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