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オッサン勇者、実は盗賊?!  作者: としょいいん
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第3話 悪魔の契約

 最初にその契約を提示された時、それは魔王城から生還するほどの戦力であるオレを、この人族の国に縛り付けておく為の謀略だと勘ぐっていたので、相手を怒らせて向こうから契約を破棄させてやろうと考えていた。


 今から思えば国王陛下には手厚く優遇して貰っていたはずなのに、何故これほどこの国の者たちを信用出来なかったのかと思い返すなら、大公を始めとする貴族どもとの確執が元となっていたのだが、それでもオレが言葉にした数々の無理難題を国王が鶴の一言でその全てを約款に盛り込んでしまった時は本当に驚いた。


 もしこの契約内容が普通の紙に書かれていたなら、後で破り捨ててしまえば有耶無耶に出来たはずなのに、最後に国王が取り出したメダリオンを見た時、全ての王族たちが固まった。


「「「へ、陛下! まさかそのアイテムは!?」」」


 そう、リチャード国王陛下が手にしていたのは黄金色に輝く二枚一組のメダリオン。


 そのメダルには賢者が創り出したオリジナル契約魔法が込められており、その国宝級アイテムの本来の使い方としては他国との戦後契約や通商条約と言った、もし一方的に破棄されれば必ず報復措置を講じなければならない場合を想定して発明されたものだった。


 そんな貴重で危険なシロモノをオレ相手に持ち出すなんて、これまで王国に散々尽くしてやったオレの事をそこまで信用していないのか? と少し残念な気持ちにはなったが、国王本人の口から「どうだ、もしかして臆したのか?」なんて煽られた瞬間に思考が停止してしまい、そのままの勢いで契約をしてしまった。


 二つのメダルから発せられた真っ白な光が室内いっぱいに広がって消えると、そこにはニコニコ顔の国王陛下とその後ろで大公殿下(国王の実弟で後に次の王様になる)が真っ青な顔でオレたち二人を睨んでいたのを今もハッキリと覚えている。


 だってそうだろ? 今この契約を持って、オレはこの国の王族たちより遥かに強力な権利と発言力を保証されてしまったのだから。


 ただ、国王陛下本人だけがニコニコ笑っていた理由は他にあって、これほど一方的に有利な条件の中に、当時のオレ程度では気が付けなかった爆弾条項をいくつも書き込んでいやがったのだ。ほんと大人ってズルいよな。


 それらの条文については速読スキルが無ければ読んで理解するのに少なくとも1ヶ月以上もの月日が必要な文書量が”予め”用意されていたのだろう。重要な事柄については最初の一頁にまとめてあるが、それ以外の内容については二頁目以降を熟読する必要があったのだ。


 だからオレがその条文について正しく理解するのはその数日後のことだった。


 契約の一文にはオレの人生を左右する内容がこう書かれていた。「契約者(甲)はこの契約相手(乙)の中から生涯の伴侶を選び、その血を王国に残さなければならない」


 そう、リチャード王の野郎は自分に子供が居ないのを余所に、弟である大公の承諾も無しに彼のまだ幼い7歳と5歳の娘たちを売りやがったのだ。ちなみにオレにはロリ属性はない。


 この時はまだ3人目は生まれていなかったけど、既に可愛く育ちつつあった二人の娘を愛していた大公殿下が真っ青になっていた(口もポカ~ンと開いていた)理由は正にここにあった。


 そもそも今の王族の中にはオレと近しい年齢の女性は一人も居ないから、この条文が効力を発揮する事は無いのだが、何かある度にオレたち勇者パーティに小言で難癖をつけて来た大公殿下への意趣返しが出来たので内心では「いい気味」だと思っていた。


 いくら王国をくれると言ってもその実、オレをこの国に縛り付けて能力を利用し、あまつさえ他国への流出を警戒した契約内容の文章なのだが、一見するとオレが一方的に有利に見えるよう巧みに考え抜かれたこの文章は用意周到に準備された、ある意味”オレを騙すためだけ”作られたシロモノだった。


 だからオレは向こうから契約をしない、いや絶対に出来ないであろう内容の数々をその場の思いつきと勢いに任せて散々盛り込ませてやったのだが、それでもリチャード王が「これだけで本当に良いのか?」なんて煽って来るから本当にヤツは性格が悪い。


 最後はオレが自分で言い出した契約内容について余りにも非現実的過ぎて臆病風に吹かれたなんて言いやがるから、その時の勢いでつい契約してしまっただけなんだ。だからオレは悪くない。それにもしこの契約を破れば地獄行きだなんて、ちょっとヤリ過ぎだと思わないか?


 本当にあの時はどうかしていたんだ。本当に。


 まさかあの内容が、仮にも王族どころか、考えようによってはこの国全てをどうにでも出来る権利なんて貰ってもオレには迷惑でしかなかった。


 ちなみに、この王家との契約には胸クソ悪い後日談がある。


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