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オッサン勇者、実は盗賊?!  作者: としょいいん


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第28話 エミリアの過去

 オレがカティア王女に頼まれたのは王宮騎士団からの依頼で貴族の屋敷で犯罪捜査を行っている王宮騎士たちの応援だったのだが、カティア王女にはそこでオレの手が必要になると予め判っていたのだろうか?


 今回の捜査は服毒自殺をした貴族の動機とか証拠などについて調査をしていると聞いたが、そもそも犯人はオレなのでへんな言動とかカマ掛けには十分な注意が必要だ。

 あとこの件に関してカティア王女がどこまで知っているのかも調べておいた方がいいな。


 そして実際に依頼された場所へ行ってみると、カティア王女から護衛を依頼された魔術師が居て、隠し部屋の扉が施錠されていて困っているようだったので解錠しておいた。

 その扉には別の罠も仕掛けられていたが一緒に解除しておいたのでオレの用事はここまでと考え、後は依頼されている魔術師の女を今日の夕方まで護衛すれば任務完了となる。


 解錠作業をした場所には騎士っぽい偉そうな女性が居たので、作業を終えたオレは転移魔法で屋敷の玄関まで移動して女魔術師が出てくるのを待った。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


SIDE:エミリア


 これは今から十年くらいのお話し。


 魔王大戦の終わり頃、勇者パーティによって魔王が倒された後もまだ生き残っていた魔王軍残党との戦いは続いていた。


 両親が共に王宮魔術師だった私には魔術師の才能があったらしく、小さな子供の頃から魔術師団への出入りを許されていて団員の方たちに色々と教えて貰っていたから、いつも忙しくて実家へ戻って来ない両親と一緒に過ごせる魔術師団がわたしの家だった。

 その頃、もう12歳になってた私は初級魔術の習得を終えて中級魔術を習っていたので毎日楽しくて充実していたのを覚えてるわ。


 これでも貴族の家柄なので王都にある魔法学園に席だけは置いていたけど、あそこでは同級生のみんなと話が合わなかったし、みんなの魔術レベルも低かったので一緒に遊べるような親しい友達なんて誰も居なかったっけ。

 それでも両親が王宮魔術師でそれなりに実力を認められていたので、私の我儘は空気を読むのに長けた先生たちが見過ごしてくれていたみたいな感じ?




 でも、そんな幸せな日々がある日突然終わる。


 その当時、魔王軍の残党狩りを行っていた騎士団から急な要請があり、わたしの両親が所属する魔術師団にも出撃命令が出たのは魔王大戦末期の頃。


 敵部隊に魔法が得意なダークエルフがいっぱい居て騎士団だけでは戦線が維持出来ないと判断した司令部が増援として魔術士団の参加を要請したと当時の戦闘記録にあった。


 その記録には王国の東側にある大森林を超えて魔族領へと進軍を続けた騎士と魔術士の増援部隊が深い森の中で敵の待ち伏せを受けて大きな被害を受けた。それだけ。


 私が当時の記録で見たのは戦没者リストの中にあった両親の名前。


 もう10年以上も過去の事なので大丈夫だと思っていたけれど、大好きだった父と母の名前を見つけた瞬間、私の目からは涙が溢れ落ちていた。


 あの頃はまだ子供だったので両親について行く事が出来ず、たった一人で自分の部屋に残って二人の帰りをずっと待っていた時の記憶が甦る。

 自分の部屋でずっと女神様にお祈りをしていたのに、私の父と母はいつまで待っても帰って来なかった。


 寂しかった。辛かった。とても寒かった。


 その戦いでも最後に勇者が現れて味方の部隊を救ってくれたと書いてあったけど、それならどうして私の父と母は帰って来なかったの? 勇者も女神も私の両親を救ってはくれなかった。いや、見殺しにしたのだ。きっと。


 その後は親戚から後見人を立てて貰って実家を継ぐ事になったけど、わたしの両親を奪ったこの世界と勇者に対する恨みが消えないまま大人になった。いや……なってしまった。


 勇者はその後に元の世界へ帰っていったと記録にあったけど、そんなお伽噺が信じられなかったわたしは、この国に伝わる勇者の伝説について調べ始めた。




 あの魔王大戦の時、勇者を含む5人のパーティメンバーが魔王城へと突入したのはもう知ってる。だってそれは皆が知ってる御伽話と同じ内容だもの。そして帰って来たのは勇者お一人で他の仲間たちはみんな魔王城での戦いで力尽きてしまったと言うのもお話と同じ。


 魔王討伐後も勇者が各地を転戦して魔王軍残党を滅ぼして回るのだけど、魔王との戦いで顔に大きな傷を負った勇者はマスクでそれを隠して戦い続けた。


 あと、そのマスクは別のお話だと「仲間たちを失った悲しみを隠すためだった」とも書かれていたかしら。


 そして魔王軍を滅ぼした勇者は使命を終えて元の世界へと帰って行ったとされているけど、時空を超えるほどの大きなマナを消費する大掛かりな集団魔法が使用された記録は王宮魔術士団の過去の記録には無かった。

 もしかしたら私の今の立場で見られる記録に無いだけかも知れないけど、団の先輩たちに聞いても誰も知らなかった。

 こうなると後は王女殿下か国王陛下、それに魔術士団長と副長くらいしか聞く相手が思い浮かばないんだけど、そこまで行っちゃうと私から聞ける訳なんて無い。


 だからあの時の勇者は絶対この世界の何処かに居ると思う。今ものうのうと何処かで生きてるはずだから絶対に見つけ出してその正体を暴いてやろうと決めたの。


 でも、あれから10年もの時が流れてしまった。「喉元過ぎれば熱さ忘れる」なんて良く言うけど、私の場合は違ったみたいね。


 私が両親を失ったのは、魔王大戦末期に起こった隣国との国境紛争だったと知ってるから、もう子供の頃のように純粋な恨みをこの王国に抱いてはいない。

 私から両親を奪ったのは隣国との戦いであって、でも私の両親を守ってくれなかった勇者。


 この思いが逆恨みだと言う事も、勇者がこの王国を守るために毎日別の所で戦っていた事も知ってる……けど、この歳になっても心のどこかで勇者を許せないまま大人になってしまった。


 もし私が勇者を見つけ出してしまったら、その時私はどうすればいい? 教えて、お父さん。お母さん。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 地下室の鍵を知らないうちに解錠してくれたハルトさんが私とナタリーに一言も残さずに消えてしまったのは、ハルトさんが嫌いな王宮騎士のナタリーが居たからだよね。


 ハルトさんと王宮騎士団は今から何年か前まで、街中でバチバチでやり合ってたから仕方ないかも。


 カティア王女殿下からは事前に何かあった時の為にハルトさんに「現場へ行って貰うように頼んでおいたから」とは聞いていたんだけど、本当に彼の手が必要になるとは思わなかった。もしかして王女殿下には未来が見えてるのかしら?


 もうこの屋敷での捜査をほぼ終えていた私は、ナタリーに挨拶を済ませてから玄関ホールへと向かうと、そこにはちゃんと王家剣術指南役のハルトさんが待っていてくれた。

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