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オッサン勇者、実は盗賊?!  作者: としょいいん


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第24話 部下の悩み【2】

アイシャ視点のお話です。

 私が何日も掛けてようやく身体強化と同時に木剣の強化まで行って、漸く隊長と同じような「ヒュンッ!」という音が出せるようになったと喜んだのも束の間。私の直ぐ隣では隊長が振る木剣の風斬り音が「キィンッ!」と鳴ってまたレベルアップしていた。


 それはまるで金属同士を打ち付けたかのような、それはそれはとても高い音を響かせていたのは何かの悪い冗談だよね? 木剣でこれほどの威力が出せるのなら、もう武器なんて何でも良いレベルだと思った。


 まだ今の私ではあれほどの高音を響かせる事は出来ないけど、いつか必ず隊長のレベルまで追いついてみせます。絶対にやります。やり通すんです! この乙女の決意を甘く見ないで下さい!


 でも、いつまで経っても隊長と比べると素振りの音がシャンとしない。


 このまま普通に振り続けるだけではレベルアップの糸口すら掴めないと思い「たまには隊長から直々に指導を賜りたいのですが?」と言ってみたところ、「そうだな、たまにはそれも良いだろう」と軽い感じで承諾をしてくれたので少し嬉しかった。

 こんな簡単にOKしてくれると知っていればもっと早くお願いしたのに……。


 私はこれまでずっと自分の事を女だとは思わず、常に”騎士”として振る舞って来た。


 それでも隊長と打ち稽古がどうしてもしたかったので、宮中で貴族令嬢がよくやってるような上目つかいで瞳を大きく見開き、身体には女性らしい”しな”を作ってみた。何しろ初めての経験だったから上手く行くか判らなかったけど、今回の作戦は成功して本当に良かった。

 私的には王城の屋根から飛び降りる気持ちで挑んだ作戦だったから、もしあれをスルーされていたら流石に心が折れたかも知れないが上手くいって本当に良かった。この作戦はまた使って見る価値がある。


 素振りの音ではまだまだ隊長に及ばないけど、実戦練習なら私にもアピール出来るチャンスが……なんて思ってた時期が私にも……。(以下同文)


 だって最年少の正騎士とは言え、これでも隊長格の一人だった私が手も足も出ないどころか全く歯が立たないのは絶対におかしいと思う。


 私もこれまで西方騎士団で訓練をした時に自分より強い騎士が居る事は知ってるけど、これほどまでに子供扱いされた記憶は無かった。そう、まるで本当に大人と子供が遊んでいるみたい……で、一方的に遊ばれてるのが私。


 このままではダメ。全然ダメ。


「もう一本お願いします!」


 こうなったら私とて騎士のはしくれ。何度地面に転がされたって必死に喰らいつき格上相手の経験値を積むしかない。


「もう一本お願いします!」


 今気がついたけど隊長の木剣って何か淡く光ってたよね? 黒檀色の木剣が淡く白い光を纏っていて、それが振られる度に微かな光の粒子が軌跡を彩るのが見えた。


 それに気が取られたせいで回避するタイミングが遅れてしまい、手首と肘、そして脇腹の筋肉を痛めてしまったのは私がまだ未熟だったせいだ。


 この程度でケガしたなんて知られたら、せっかくの実戦練習が中断されてしまうので私的にはバレてないと思っていたけど、右手に持っていた剣を下げた隊長が左手でチョイチョイしながら私を呼んでる。


 やっぱりバレてないと思っていたのは私だけで、捻ってしまった左手首と脇腹に手を添えて治癒魔法を掛けてくれた。治癒魔法の時って、触れるか触れないかギリギリの距離で手を当てて痛いところを治してくれる。

 最初に左手首と肘を手当てしてくれた時は何も思わなかったけど、白銀色のプロテクターをオフにした状態で、黒い下着のような薄いラバー素材一枚だけとなり身体のラインが露わとなった私の脇腹に隊長の手が添えられた時は本当にヤバい。


 私を気遣って傷を治してくれるのは嬉しいけど、その場所が脇腹だったので乙女にとっては微妙に恥ずかしい気がする。


 でもそれを隊長に知られるのはもっと恥ずかしかったので歯を食いしばって何とか耐えて見せた私は偉い。


「隊長、ありがとうございます。ではもう一本お願いします!」


 私は恥ずかしさを何とか乗り切り、テレ隠しがバレないようにより一層の力を振り絞って木剣を打ち込む。


 私の体調の変化は直ぐに気取られてしまったけど、私が心の奥に仕舞っている想いは全く知られていないので安心すると同時に少し残念な気持ちがした。


 それでも隊長と二人きりで修練する時間をとても楽しいと感じる私は、その時間が少しでも長く続くように今日も全力を尽くす。


「アイシャ、今日はここまでにしよう。お前は少しガンバリすぎだ」


「はい……了解しました」


 隊長と出逢ってからまだ短い期間しか過ごしていないけどいくつか判った事がある。そして、その一つは私の技術がまだまだ未熟だということ。


 あの時、私が未熟な隊長だったせいで隊の仲間たちを全て失ってしまった。


 戦いに「もし」は無いと騎士団ではそう教えられて来たけど、もしあの戦いで小隊長を務めたのが私じゃなくハルト隊長だったら……。


 隊長と知り合ってから、いつも私の頭の中で繰り返す「もし」に終わりは無い。


 私は隊のみんなの声で語られる「もし」を聞きたくなくて、若しくは忘れたくて隊長との修練に没頭しているのかも知れない。


 「もし」の声は毎晩のように目を閉じた私に問いかけて来る。


 もし私が隊長じゃなかったら、みんな死なずに済んだのかな?


 ねえ、誰か教えて……。

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