第20話 (オトコの)夢(が詰まった)魔導鎧
オレの人生初めての部下となる女性騎士が負傷した姿を見た時、居ても立っても居られなくなり無意識で彼女のケガを治してしまった。
正確に言うならあれはオレの力ではなく、かつて共に旅した聖女の力だった。
結果はどうあれ司教クラスですら難しいとされている、身体の部位欠損が完全に治ってしまったのだから後で冷静になって考えるとやり過ぎた感が半端ない。
素手のままだと両手が傷跡一つ無く治ってしまったのが周囲の者にモロバレなので、暫くの間は鎧の籠手だけでも装備して隠して貰おうと考えたオレは、直ぐに騎士団本部へ行き例の男性職員を探した。
それで女性用の鎧を支給して貰えないかと交渉したのだが「サイズも測定せずに鎧なんか渡せるか」と言われてしまい、確かにその通りだと納得してスゴスゴと帰って来るに至る。
それなら別に手が無い訳でもないので、以前に勇者から貰ったアレがストレージの中にあるはずなのでゴソゴソと手を突っ込んで探してみると、やっぱりソレはあった。
その魔導鎧は魔族領で手に入れたものを元に人族が装着出来るように改良を施してあるのだが、当時この装備を手に入れたオレたち四人(オレ以外にも勇者と聖騎士と賢者がいた)は、仲間内で唯一の女性だった聖女に是非これを着て欲しいと土下座したほどの一品だ。
魔導鎧とは魔法が付与された特別な鎧で、ストレージの奥に大切に保管されていたこの品は元は魔族の女性士官用だったと賢者からはそう聞いている。
そして魔導鎧は装着した者の身体のサイズに合わせて自動で伸縮するから、性別さえ合っていれば誰でも着用する事が可能な優れた機能を持っている。
ただ一つだけ問題があるとすれば、その装備がサッキュバス用だったので防具としては素肌が露出する部分がちょっぴり多かった程度の事だ。
元々は黒いラバーみたいな素材のみだったのだが、聖女に装備させるため勇者と賢者が持ちうる限りの魔法技術を詰め込んで、魔力による制御で聖属性の光を纏った白銀色のプロテクターが現れるように魔改造が施されていた。
これなら普通の金属鎧よりも軽くて強度も高く、聖女があの頃に着ていた白いローブなんかとは比べものにならないくらいの防御力を誇るはずだ。
それなのに、聖女の身体を心配して気遣ったオレたち四人が頭を垂れてまでお願いしたのに、結果としてオレたちが並んで土下座している地面に、突然光輝く聖なる十字が現れて全身から血が吹き出すほどのダメージを受けてしまった事は今でも納得がいかない。
まぁ、それでもあの時の聖女が本気を出していれば、残りHPが確実にゼロになっていたはずなので、もしかしたらアレは彼女なりのテレ隠しだったのではないかと思ってる。
「これは特別な魔導鎧なんだけど、右手首がそのままだとちょっと拙いから暫くの間はこれを装着して隠しておいてくれないか?」
そしてオレが手渡した黒いゴムボール状のアイテムをじっと見つめたアイシャが突然着ていた服を脱ぎだしたので、オレは勇者スキルを発動させて光の速さで後ろを向いた。
今のは本当にヤバかった。あと一瞬でも遅かったら部下となる女性の全裸を見てしまうところだった。直ぐに振り向いたのでちょっとしか見えなかったから、これはセーフだろう。
(3秒ルールは異世界でも有効だよな?)
そう言えば魔導鎧は身体に合わせて伸縮するから、下着などを身に着けていると上手くフィットしない場合があると説明された記憶があったっけな? それなら正騎士として教育を受けた彼女が魔導鎧の装着方法を知っていても不思議はないのか。
彼女が服を脱ぐ時の布が擦れる音が微かに聞こえて来る。
オレたち四人は超絶の美女である聖女と一緒に長旅をしていたおかげで、美人とか美女とか美少女の類には少々だが免疫が出来ている。
いくら美女だからと言ってもオナラはするしトイレにも行く。それに寝癖がひどかったり、寝相がメチャメチャ悪かったり、時にはその美しい容貌が鬼の形相へと一瞬で変化する事も勿論知っている。
つまり、何が言いたかったかと言うと、オレの直ぐ後ろで真っ裸になっている美少女が居たとしても、年齢が離れ過ぎている事もあって勇者パーティの皆と一緒に旅をしていた頃のドキドキ感はもう持っていないと言うこと。
「あの、どこか変じゃないでしょうか?」
もう着替えが済んだのか、思ったより早かったな。
そう思って後ろを振り返ったオレの目の前には、男を魅入らせる事で有名なサッキュバスもかくやと表現するほどのボディスーツ姿の美女が立っていた。
あれ、おかしいな……確かにさっきまでは少女と呼んでも良いくらいの年齢にしか見えなかったんだけどな……。
アイシャが全身に纏っているのは黒いラバースーツと呼んでも差し障りが無いエロっちいアレで、首すじ、両肩から二の腕、腹部のお臍まわり、腰骨から太腿上部までの絶対ゾーンまで露わになっており、その姿は鎧と表現するにはちょっとだけレベルが尊い。自分でも何を言ってるのか判らないが……。
「あ、この装備も装着してから身体に魔力を行き渡らせる必要がある感じですね」
アイシャがそう言うなり、黒いラバースーツの上に白銀色のプロテクターが現れて鎧となり、身体の各部位を保護してくれる様になった。だがこの状態でも動きを妨げないようメタルプレート部分の間に設けられた隙間からは彼女の素肌の一部とか黒いラバー素材が見え隠れして、よりマニアックになってしまった感じさえする。
鼻歌が聞こえて着そうなくらい機嫌が良くなった彼女が、魔導鎧に内蔵されている他の機能も調べていると、白銀色のメタルプレートを部位毎にオン・オフが切り替えられる事が判ったので、オレは彼女に全身を黒ラバーの状態に戻してから先ほど脱いだ騎士服を着て貰い、更に右腕の肘から先の部分だけ籠手を装着して義手に見えるように偽装しておくように頼んだ。
それとさっきの黒いラバースーツなのだが、その後に何故か10ダースほど見つかったので彼女にはとりあえず着替え用としてあと3つ渡しておいた。
それにしてもこれほど沢山のロマン装備が仕舞ってあるなんて全く知らなかったが、あの頃の勇者と賢者は一体何を考えていたのだろうか?
あと義手については、王都にオレが懇意にしてる魔道具屋があってその店の作品だと言う事にしておいたから、今からその店まで行って口裏合わせを頼んでおかないといけないな。




