8話
無言の下校時間が続く...
なんで何も言わないんだ。昼休みした話の続きをする為に誘ったんじゃないのか?
しびれを切らして話しかけようとしたとき、香織が口を開いた。
香織「あ、あの...」
健司「ん?」
なんだか香織の様子が昼休みの時とは違う。何かあったんだろうか。
香織「健司君、昼休みの時、その人のことを知っていくうちに仲良くなりたいと思うって言ったよね?」
健司「ああ、言ったな。」
香織「それってお母さんに対しても一緒かなぁ?私が本当に好きなこと言ったら、お母さん、私のこともっと好きになってくれるかな?」
健司「え?クラスメートと仲良くなりたいんじゃねぇのか?」
香織「うん...私は今お母さんと仲良くなりたいから。」
健司「お母さんと仲悪いのか?」
香織「ううん。お母さんと仲いいよ。仲いいけど、本当の意味でもっと仲良くなりたいの。」
健司「そうなのか。仲良くなれると思うぜ!自分のことをちゃんと話したら!」
香織「ありがとう。...でも不安...どうしたら...」
香織「そうだ、健司君LINE交換してよ。不安になったら連絡させてよ。」
健司「ああ、わかった。いいぜ。」
そういえば、香織はクラスのグループLINEに入っていなかった。
香織「ありがとう。これで頑張れる。」
健司「俺が傍にいなくて大丈夫か?」
香織「大丈夫、大丈夫。今日はありがとう。じゃあね。」
軽快な足どりで去っていく香織の後姿を眺めながら、初めて女子から連絡先を交換して欲しいと言われた俺の気持ちは高揚していた。