5話
健司「なんだこれ...」
香織「今日は私の昆虫採集に付き合ってもらう。」
健司「昆虫採集?高校生で?...」
香織「....いいの!命令よ!付き合って!」
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健司「こんなことするの何年ぶりだ。わぁ!くそ服が汚れちまった...」
香織「あはは!見て!この大きい虫!何ていう虫なのかなぁ?佐藤君知ってる?」
健司「知らねぇな。」
香織「そっかー!残念!」
今までに見たこともないくらい楽しそうだ... この森に入った途端急に元気になったな...
まさか、こいつ実は人間ではなく森の精霊なんじゃないか! 自然を破壊した俺たち人間に恨みを持っていて、復讐するために学校に忍び込んで....
それなら、今までの疑問も合点がいくぞ。他のクラスの奴らと積極的に関わろうとしないのも、人間が作った娯楽に興味を示さないのも....
健司「香織...わかったよ。お前が何者なのか。」
香織「うん?」
健司「お前の正体は自然を破壊した人間に怒る、森の精霊だったんだな!」
香織「....はぁ?何言ってんの?」
健司「あれ?...違った?」
香織「私は人間よ。森の精霊でも何でもないから。」
健司「そっか...」
健司「こうやって遊んでいると小さかった頃のこと思い出すな。小学生の頃友達と森や川へ遊びに行ったなぁ...」
香織「佐藤君もこういう遊びしてたんだ。」
健司「ああ。友達と昔はなぁ。小学生の男子の遊び方って言ったらそういうのが多かったからな。」
香織「...実は私も小学生の頃、男の子と混じって遊んでたんだ。昆虫採集とか川遊びとかして遊んでてね。
でもある日、遊んで家に帰った時、お母さんに怒られたの。
「いくつまでそんな遊びしてるつもりなの?化粧品屋の娘らしくしなさい。もうそんな男の子みたいな遊びはやめて、女の子らしくしなさい。」
って怒られちゃった。それから髪型も服装も振る舞いも女の子らしくしたの。」
健司「そうだったのか...」
香織「あ、ごめんなさい。こんな話しちゃって。
自分で楽しいことわからないって言ってたけど、本当は何となくわかってたんだ。男の子がする遊びが好きだって。
私のわがままに付き合ってくれてありがとう。もう今日で一緒に下校するのは終わり。じゃあね。」
健司「あ...」
香織は一人で帰ってしまった。
なんて言葉をかければよかったんだろうか。香織を笑わせられる言葉が見つからなかった...