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1話

挿絵(By みてみん)



あいつは一体何者なんだ...


クラスメイトと一切喋らず、常に一人で行動。だが、見た目は地味ではなく誰よりも派手。行動も見た目もこのクラスの中で明らかに浮いていて異質な存在、伊藤香織。





俺は健司。自分で言うのも何だかクラスで人気者だ。


健司の男友達「ぎゃはは!健司!お前ってやっぱ最高だな!」


健司の女友達「あんたの話っていつも面白いよねー!」


気が付けば、いつも俺の周りには人が居る。クラスのみんなが俺に注目して、俺の話に夢中になっている。


だが、俺が中心となっているクラスで一人だけ俺に全く見向きをしない奴がいる。伊藤香織だ。


周りの人がどれだけ騒いでいても、眉一つ動かすことなくいつも平然としている。まるで空気だ。


他の人と喋っているところも見たことない。見た目は派手なくせに行動は至って地味。


特にクラスで目立ったことをしているわけではないが、一人だけ皆と明らかに様子が違うので逆に目立っている。


健司「なぁ、あの香織と喋ったことある人いる?」


健司の男友達「俺が知ってる限りはいないな。」


健司の女友達「あたしも知らなーい。誰かと一緒にいるところも見たことないし。人と喋るの嫌なんじゃない?」


健司「でもそれなら、なんであんなに目立つ格好をしてるんだ?人と接したくないなら、もっと地味で目立たない格好をするんじゃないのか?」


健司の女友達「そう言われてみれば、そうかもねー。学校外で何かしてるんじゃない?実はヤンキーだったりとか(笑)」


健司「学校外ね...よし、じゃあ今日の放課後あいつと帰ってみるわ。」


健司「えー?あんたも物好きだね。多分断られると思うけど誘ってみたらー。」





香織「いいよ。」


健司「えっ....」


あっさり承諾されてちょっと動揺した。





無言の下校時間が続く...


気まずい...二人っきりになっても本当に喋らないな。こいつのこと、まったく知らねぇから話す話題も思いつかねぇ...こうなったら...





健司「なあ、何で今日急に誘ったのか気にならねぇの?」


香織「別に。そういう気分の時もあるかなと思って。」


健司「断ろうとは思わなかったのか?」


香織「うん、一緒に帰りたいって言われたから。」


・・・


もしかして、俺に気があるんじゃ...


健司「まあ、そうか。それならいいんだが...」


香織「うん...」


俺から話しかけたら話すけど、自分からは何も話さないな。よし、それなら。


健司「なぁ、伊藤って普段学校で何してんの?」


香織「うん?授業受けてるよ。」


健司「いや、それは知ってるよ。休み時間とかの話だよ。」


香織「休み時間?宿題をしてるよ。」


健司「家ではやらねぇの?」


香織「うん、家では宿題してる時間が無いから。」


健司「宿題してる時間が無い?部活もしてないのにどうして...」


「あら!伊藤さんちの娘さん?今日は彼氏と下校なのね!」


香織「おばさんこんにちは!あはは!違いますよ~」


健司「すっげぇ笑顔。」


香織「へへへ、営業スマイル。上手いでしょ」


香織「私の家は化粧品の販売をしてるの。今のは常連さん。私、家ではオシャレでイケイケの女子高生っていう設定なの。」


健司「なんでそんな設定をわざわざ。」


香織「その方が商品が良く売れるし、お母さんがそれを望んでるから。」


健司「嫌じゃないのか?」


香織「嫌...考えたこと無いからわかんない。」


健司「考えたことないって...普段何考えてるんだよ。」


香織「普段?...佐藤君は普段何考えてるの?」


健司「えっ...」


まさか質問を返されるとは思わなかった。


健司「そうだな。楽しいこととか。」


香織「具体的には?」


健司「えっと...友達と遊ぶこととか、面白い話とか...」


香織「友達とどんな遊びするの?面白い話って何?」


滅茶苦茶聞いてくるじゃねぇか...


健司「 んーそうだな、カラオケ行ったり、飯食いに行ったり。面白い話は流行ってる動画の話とかかな。」


香織「それの何が楽しいの?」


健司「え....なに、もしかして怒ってる?」


香織「別に怒ってないよ。私自分で何が楽しいか、面白いかわからないの。 だから何で楽しいのか気になって。」


健司「自分で何が楽しいか、面白いかわからない奴なんているんだな。」


香織「悪かったわね。」


健司「あ、怒ってる?」


香織「うん。」


健司「わりぃ。」


香織「罰として、私が楽しいと感じること探して。」


健司「えぇ...なんだよそれ。」


香織「できないなら、いいよ。」


健司「な!できないだと!俺はクラスのムードメーカー健司だぜ!出来ないなんてことあるか!やってやるぜ!」


香織「わかった。じゃあ、この下校時間で私に教えてね。」


健司「よし、わかった。えっとそうだな、まずは...」


香織「あぁ、もうすぐ家に着くからまた明日ね。考えておいて。」


健司「えぇ、明日かよ。参ったな。わかったよ。じゃあな。」


香織「ええ、またね。」


明日も俺に会いたいとは、やっぱりあいつ俺に気が...。 まあ、言っちまったし、あいつが楽しめそうなことを考えておくか。

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