寺生まれの俺が異世界召喚した聖女に30秒でざまぁする
初投稿です。よろしくお願いします。
その日俺は幽霊騒動があった檀家さんの家に幽霊退治に行くため、教室で独鈷杵を磨いていた。何を言っているかわからないやつもいると思うが俺は代々密教系の寺で生まれ、今は高校生活の傍ら退魔師をしているのだ。それでもって今日は依頼があったので夕方のアポの準備をしていたのだが突然教室の床に魔法陣が現れ、真っ白な光に包まれた。俺は寺生まれだから曼荼羅だったら何か良いことだろうけど、魔法陣だとろくなことがなさそうだと思っていると、目の前に15歳くらいの白いシスター(俗にいうインなんとかさん)風の衣装をまとい、瞳を閉じた少女がいた。
そして開口一番
「ようこそおいでくださいました勇者様。驚かれることとは思いますが、いにしえの魔法によりこの世界に召喚させていただきました。この世界は魔王による侵略で危機に瀕しております。どうかそのお力をもってこの世界をお救いください。」
と光が収まってからここまで約30秒。そして瞳を開いた。
「ってあれ?ここどこですか?」
「君が誰だか知らないけど、ここは私立仏僧学園2年1組の教室だね。」
「失礼いたしました。わたくしは聖女と申しますが、大聖堂で勇者召喚の儀式をしていたはずなのですが、なぜこのような場所にいるのでしょうか?」
と周りをキョロキョロ見ながら変なことを言い出したので自分なりの推論を伝えておく。
「う~ん多分なんだけどそこに破れた札があるんだけどわかるかな?それは反魂符といって俺に向けられた外法を反射するためのものなんだよね。それが破れていたってことは効果が発動して俺にかけられた外法を術者である君に返して、そして君の召喚したという言葉から考えると、召喚魔法が君にかかりその結果この世界に君が召喚されたということなんじゃないかと思う。」
そう答えると聖女ちゃんは顔を蒼くして震えながら
「こっ困ります。元の世界に帰してください。それとあなたには世界を救っていただかなければ!」
「困るといわれても知らんがな!そもそもいにしえの魔法だか何だか知らないけど俺は術を返しただけで、自分でその術をかけたわけじゃないし帰せるわけがない。そもそも話を聞く限りこっちの予定?都合?を無視して連れて行くような口ぶりだけど、それって誘拐とか拉致とかいう話だから。しかも戦ってくれって戦闘奴隷と同じだからね。受け入れるわけないでしょ。というか犯罪行為だから。」
「えっ?だってこのままだと多くの尊い命が失われるのですよ。無辜なる民が可哀そうだとは思われないのですか?あなたが力を尽くしてくだされば多くの命が救われるのですよ。また召喚魔法のために既に100人以上の方が犠牲になっているのですから責任を取ってください。」
ひどい外法を使っている自供をいただきました。大量殺人というやつですはい。自業自得、因果応報というやつではないですかね。そりゃ反魂符も問答無用で発動するわけです。
「自分の世界のことは自分で何とかしてくれよ。別にお宅らうちの檀家でも何でもないんだから。見たことも会ったことも話したこともない人間のために俺の人生を捨てろという話?俺もこっちでいろいろとやることがあるんだけどそれを犠牲にしろって理不尽だよね。というか君の魔法で殺した人間を俺のせいにしないでほしい。」
「いえあの方たちは自ら望んで犠牲になったのです。その志を無にされるおつもりですか!」
「俺が頼んだわけじゃないしそんな恩着せがましく言われてもこまるよ。」
「なんてことをおっしゃるのですか!あなたに人の心はないのですか!」
う~ん・・・なんかぷりぷり怒っているけど価値観というか倫理観が違いすぎて全く共感できない。異世界人という割になぜか言葉は通じるけど話し合いはできないというやつではないだろうか?この手の狂信者を野放しにしたら何されるかわからないよね。
「オン・ナンタラカンタラ・ホエホエ・ソワカ」
聖女ちゃんの周りに梵字の列が取り囲むと数秒後、彼女の体に吸い込まれていく。
「なっ何をなさったのですか!」
「なんか放置するとまずそうなので、聖女ちゃんの体に封魔の印を刻んでおきました。世界が違うしこの世界でいにしえの魔法とかも使えるかわからないけど、取り合えず異能の力は使えないようにしたので頑張ってこの世界で生きて欲しい。」
「え?」
そう伝えるとなんか手を開いたり閉じたり、妙なポーズをとったりしたが何も起こらず、どんどん顔色が悪くなっていく。
「魔法が使えない?もっ、戻してください!あなたのことは諦めますから、せめて元の世界に戻らなければ」
「召喚魔法とやらで戻れるのかは別として、お試しでこっちの世界で100人殺されても困るしそれは無理な相談でしょ。でもよかったじゃないか君は滅びる予定の世界から抜け出したんだから。平和な世界で生きていけばいい。まあ戸籍も身分証明もないから大変だとは思うけどね。」
「わっ私だけの問題ではないのです。」
そういうと聖女ちゃんはあきらめたのか
「くっ仕方ありません。何とか元の世界に戻る方法を探すので、その間生活の面倒を見ていただきたいのですが・・・・」
相変わらず図太い。自分の都合しか考えていないのかそう言ってきたので、もちろん断った。
「俺に全くメリットがないので断るよ。」
「え?この世界で使えるお金もないのに寒空の下に放り出すというのですか・・・。くっ・・こうなっては仕方ありません、私の体を自由にしていいのでお願いします。こう見えても私処女ですよ。」
聖女のくせに女騎士のようなことを言っている。
「だが断る。というか聖女じゃなくて性女だったんだね。処女ビッチってやつ?」
「なぜですか。こんな脂が適度に乗った美少女が頼んでいるのに・・・ひょっとして美的感覚の違いというやつですか?それともロリコン?ババ専?はっ!男にしか興味がないとかいうそっち系ですか?」
そういって大きな胸を持ち上げながらとんでもないことを言い出したよこの自意識過剰系処女ビッチ。
「いやそういうわけじゃなくて、俺んとこは特殊な家系でね。代々政府の特務機関としての活動もしているんだけど、ハニトラとかにかからないよう子供のころに許嫁か決められてるのよ。そんでもって浮気なんてしようものなら・・・考えるのも恐ろしい。」
「そっそんなうまいこと私の体におぼれさせいいように貢がせるじゃなくて利用するつもりだったのに。お金も持っていないし、知り合いすらいない世界でどう生きて行けと・・・」
心の声が駄々洩れだぞこの自意識過剰系アホの子処女ビッチ
「この際だから異世界に一人で放り込まれることの苦しみと召喚とやらの業の深さを体感してみるといいんじゃないかな?体験したことがそののちの人生で活きるかはわからないけど」
「後生ですからお慈悲を・・・こう見えて私箱入り娘で神殿の仕事以外やったことがないんです。」
「君にかける慈悲はないよ。じゃあ頑張ってね!」
そういうと俺は当初の予定通り依頼先に向かうのだった。
その後依頼先まで泣いてすがられて引っ付かれたので世間体も悪いので、身分証も必要ないブラック農家を紹介しておいた。住み込みだけど1日10時間労働で日給3000円だしそうそう悪いことをしている余裕もないだろう。
一応念のため特務機関の関係先に情報を渡しておいたので何かあっても対処してくれると思う。こういうことは初めてではないしこっちも色々協力していてギブアンドテイクの関係なのだ。
その後見かけたときには元気に芋を掘っていたよ。箱入りという割に生活力というかバイタリティありすぎじゃないですかね。まあ面の皮が厚いというかメンタル強いからどこででもやっていけそう。なんというか彼女のほうが異世界向きだと思う。
因果応報・自業自得・無病息災・幽霊退治そして終わった後には焼肉定食。さて今日も仕事に行きますか。
生臭坊主?
知らんがな。