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第六話 ある転生令嬢の話

一応、こちらも本編になります。

 ありえないわ。

 

 こんな結末ゲームではありえない。


 ヒロインが好きな人と結ばれないなんて!!


 * * * * *


 私は男爵令嬢にして転生者でもある。

 この世界が乙女ゲーム『ダイヤモンドリリーに恋して』の世界だと気付いた時、もう終わったと思った。なぜなら私はヒロインではなく…名前も出てこない悪役令嬢の取り巻きだったから!!

 学園の入学前に父親の仕事関係で付き合いのあるレイルズ伯爵家に挨拶に行き、アイリーン様を紹介された私は膝から崩れ落ちそうになった。取り巻きBであることを悟ったのだ。画面に向かって右側のあの令嬢。

 夜、ベッドで大泣きしたのは言うまでもない。


 『リリ恋』はアプリの乙女ゲームで、毎日ストーリーを進めながら選択肢を選ぶことで『恋人エンド』か『友達エンド』のどちらかになる。バッドエンド系はない、気軽に楽しめるストーリー。ヒロインの瞳がピンク色で煌めいているのが〜ダイヤモンドリリーのようだ〜という王子の台詞がタイトルの由来だ。攻略対象は四人。


 ・ロベルト王子

 ・サミュエル侯爵令息

 ・フリッツ子爵令息

 ・担任 エドワード先生


 それぞれ、ライバルや障害となる出来事がある。アイリーンは王子の婚約者でライバルのはずだ。


 でもなぜか、入学時点でアイリーンが婚約者ではなかった。不思議に思いながらも、なるべくイジメには参加せずヒロインを見守ろうと決意した。


 入学式で王子と出会い、教室でフリッツとエドワード先生と関係を築き、試験で2位となり3位のサミュエルにライバル視される〜という流れのストーリー。

 

 なんか…なんか知らない登場人物がいるんですけど!カイルって誰ですか?!

 フリッツの友達として一緒にいたから、そんなに気にしていなかったのに。試験発表の時のアレは!サミュエルが笑顔で懐くとかおかしい!彼は子供の頃の事件がきっかけで心に傷を負い、ヒロインに攻略されるまで笑顔は一切見せないクーデレキャラのはず!

 イチ推しキャラだっただけにショックが大きかった。

 それだけでなく、アイリーンもカイルが干渉したことによりヒロインと仲良くなってるし。けっこうな存在感を出している。


 頭がこんがらがってくる。私のゲームの知識があやふやなのか、実は『リリ恋』の世界ではないのか。でも共通人物はたくさんいるし…

 考えすぎて頭が痛くなりそうになり、中庭のベンチで休みながらボーッとしていると、心配そうに声がかかる。


「大丈夫ですか?気分が悪いなら医務室までお連れしますよ」


『わーーーー!』と叫ばなかった私を誰か褒めてほしい。

 カイルじゃん!話かけられてるじゃん!大丈夫か?って、誰のせいでこんなに考え込んでると思ってるのか!こんなに不安になっていると思ってるのか!!


 そこでハタと気付いた。


 私は不安だったんだ。


 この世界に転生して、なんだか余所者が紛れ込んだような不安定な自分にとって、ゲームの知識が唯一のよすがとなっていたんだ。


「使ってください」


 優しく微笑んでハンカチを差し出される。

 私は泣いていた。涙がどんどん溢れてくる。

 固まったように動かない私の頬を、少し躊躇いながらハンカチでそっとぬぐってくれる。優しい手つきで心が落ち着いてくる。


「…っぐすっ…あ…りがとうござい…ます…」

「ふふ、どういたしまして」


 ハンカチを受け取り、自分で涙を拭く。私が泣き止むまで、隣で座っていてくれた。通りすがる生徒から隠してくれていたのかもしれない。

 

 この日から、カイルは私の第二の観察対象になった。もしかしたら隠しキャラなのかもしれないと思ったり。ほのかな恋心が芽生えていたのかもしれない。

 それからは挨拶をしたり、ちょっとした会話ができるようになった。


 二年生のフラワーフェスタでは思い切って花を渡した。離れたところで睨んでいるサミュエルを見つけて「感謝の気持ちです!」と言うことしかできなかったけれど。涙。


 * * * * *


 見守り(監視)し続けて早三年。

 卒業式まであとわずか。卒業パーティーでエンディングだ。

 私の見立てでは王子ルートに進んでいると思う。王子の恋人ルートでのイベントがいくつか起きていたし、王子がヒロインを見る視線にも熱がこもっている気がする。

 今日も今日とてこっそり覗いていると、噴水の前でカイルを中心に半円状に五人が手を差し出している。


「「「パートナーになってください」」」


 えーーーッ?カイルハーレムエンドなんてことあるの?!ヒロインのドレスは?攻略相手が用意してくれるハズだけど??と驚いていると、パンパン!とカイルが手を叩いて仕切り出す。一人一人に声をかけている。

 なんとゲームシナリオにあるまじき!四角関係とは…まぁ、サミュエルは置いといて。

 

 もう…なんだか笑えてきてしまう。見つからないように声が出せないから余計に笑いが込み上げる。


「くくくっ…くく…っっ…なんか…もう…面白すぎる!!ふふふっ…」


 

 あーー!卒業パーティーが楽しみだ!



 

 








解説回のようになってしまいましたが、これにて本編は完結です。

読んでいただきありがとうございました!


番外編(補足編?)が少し書けたらと思っています。

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