第五話
「大変名残惜しいですが、以上をもちまして本年度のフラワーフェスタを終了いたします。ありがとうございました」
生徒会、実行委員ともに舞台に上がり礼をしてフィナーレを迎える。
小さなアクシデントはあれど、概ね成功できた。生徒会長である王子の統率力があればこそだと実感する。
「みんな、お疲れさま。準備から色々大変なことはあったけれど、このメンバーだからこそやり遂げられたと思う。ありがとう。限られた時間だが、楽しんで欲しい」
ここで「乾杯!」とはならないのが貴族様なんだよなぁ。すごく言いたい。
片付けも終わり(といってもほぼプロがやってくれる)お疲れ会がはじまる。パーティでは仕事に徹しているため食べられないので、実はお腹が空いていた。
「会長、お疲れ様でした。案だけ出して任せてしまってすみませんでした」
「いや、なかなか面白い企画だったと思うよ。先生方からの評判も悪くなかった。カイルもしっかりやってくれていたよ」
「それを聞いてほっとしました」
今期の生徒会が生徒達にとって良いものであったらいい。昨年の生徒会の方々も素晴らしかったのでプレッシャーもあった。それはきっと自分以外のメンバーにも。
「カイル、お疲れ様。大成功だね」
「サミュエル様もお疲れ様です。あ、そういえばパーティが始まった時何かありました?こちらを見ていましたよね?」
「ああ、それはコーレナに念を押してただけだよ。後はカイルにパワーをもらおうと思って。けっこうがんばったから褒めてほしいな」
「はい、今日は素晴らしかったです」
半分くらい内容はよくわからなかったけれど、いつもの様に頭をなでなでする。
それを見た実行委員が目を見開く。あ、ヤバい。生徒会メンバーは見慣れてるからうっかりしてた。副会長様になにしとんねん!てなりますよね。
パッと手をどけると「いつもより短い」と言いたげな視線を向けられる。アナタのイメージぶっ壊れますよ。今は勘弁してください。
あちらでは、アイリーン、トウア、フリッツが話している。本当に仲良くなったな。特にアイリーンがこんなに打ち解けてくれるとは感慨深いものがある。フリッツの図々しさも良かったのかも。最近は女子トークでもしているのか、トウアと二人で話し込んでいるのもよく見かける。
お酒も飲んでないのになんだか泣きそうになる。達成感でハイになっているのかも。
「今期生徒会も残るは次期生徒会の選挙のみとなる。あと少しだが気を抜かずに頑張ろうと思う。よろしく頼む」
これにてフラワーフェスタ終了!
* * *
次期生徒会も決まり、最後の試験が終わればもう卒業式・卒業パーティーのみだ。
卒業式は制服で参加するが、その日の夜に行われる卒業パーティーは皆ドレスアップして参加をする。パートナーがいる生徒は伴って参加するなど、社交場に近い雰囲気になりそうだ。前回生徒会として準備を手伝いはしたが、基本卒業生のみのパーティーなので様子はわからなかった。
で、冒頭に戻るわけだが。
「「「パートナーになってください!!」」」
今、目の前で令息令嬢が五人(まぁよく知る元生徒会メンバーなんだが)、手を差し出している。そもそも、なんでこんなことになっているのか。どちらかというと、なんで巻き込まれているか、なんだけれど。
「はいはい。みんな僕をダシにして何とかしようとしていませんか?きちんと整理しましょう」
パンパン!と手を叩いて声を出す。
「まず、ロベルト王子。あなたはどなたにパートナーになっていただきたいんですか?」
「私は、トウア嬢に…!」
「アイリーン様、あなたは?」
「わたくしは、ずっとお慕いしています王子様に!」
「サミュエル様は…ちょっと怖いから後にしましょう。知ってるけど、フリッツ、君は?」
「俺は、アイリーン嬢にお願いしたい」
「では、トウアさんは?」
「私は…フリッツ様にお願いしたいです!」
「では最後にサミュエル様は、どなたに?」
「僕はカイルに決まってる!」
いや、そんないい笑顔で言われても。
結局、王子→トウア→フリッツ→アイリーン→王子…とループしてしまうわけですね。いわゆる四角関係?てことかな。青春は複雑ですね。
「では、もうこうしませんか?」
にーっこりと強めに圧をかけて提案する。
* * *
卒業式。卒業生挨拶は当然王子で、在校生挨拶は現生徒会長。それぞれ素晴らしい挨拶で目頭が熱くなる。充実した学生生活だったと思う。学園に通えてよかった!
そして、卒業パーティー。
会場に入る前に待ち合わせをし、僕は新しいハンカチを取り出す。六枚。それを一人一人の手首に巻いていく。感謝を込めながら。なんだかハンカチが繋いでくれた縁だと感じていたから。
「はい、できました」
ドレスアップした衣装には少々浮いてしまうけれど、絆を感じられてうれしくなる。
それは他のみんなも感じてくれているようで。
「では、行こうか」
王子の号令で六人一緒に入場する。ワッと歓声が聞こえる。パーティーが始まる!
そしていつか、いつの日か………
カイルとサミュエルは四角関係からは外れてるんですが、そこは、ねぇ、察してあげてください。当然横をキープしてたと思われますが。
第六話で本編完結します。
読んでいただけたら、あやふやな部分がわかる…予定です。