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大団円!? 卒業パーティー 1

途中から男爵令嬢目線になります。

 パーティー会場の扉をくぐると煌びやかな世界が広がっている。学園内といえど、独立した建物であり、正式な舞踏会や夜会などが開催できる程の素晴らしい仕様になっている。シャンデリアひとつとってもとんでもなく高級で、王族御用達の職人が作成したものらしい。それがメインの大きなものの他に少し小さいものが二つキラッキラに輝いている。色とりどりのドレスに身を包むご令嬢たちや寄り添うご令息たちも、晴れやかな笑顔をうかべ、まるで宝石のように煌めいている。


 日中、授業でダンスやマナーを学ぶことがあるので、もちろん何度か会場を使ったことはあるが、やはり雰囲気が全然違う。昨年パーティー準備を手伝った時も、本番は立ち入れなかった。


 カイルは元生徒会メンバーの王子・サミュエル・アイリーン・フリッツ・トウアと共に会場へ入ると、ワァーッ!と会場が湧いた。もちろん一番の理由は王子がいるからだが、他のメンバーも大変人気がある。自分は付き人の気分でどこか他人事のようだ。


「さすが、みんなすごい人気だなー」

「なんで他人事みたいなんですか。カイル様もですよ」


 トウアが優しく笑って言ってくれる。サミュエルも頷いている。気を使わせちゃったかな。


「(気を使ってくれて)ありがとう。そういえば、トウアさんはダンスの順番は決まってる?もしよければ、僕とも踊ってもらえるかな」


 にっこりとお願いしてみたら、何故か他のメンバー全員がバッとこちらを見た。え?目が怖いんだけど。

 とりあえず、パートナーが決まっていない状態なので踊る約束も誰ともしていなかった。なので、トウアとアイリーンがどこかで踊ってくれるといいなーと思っていた。思ってただけなんですすいません。


「……くっ…決めてなかったな…」

「ですね。どうします?ファーストダンスをまず決めておかないと」


 いや、王子よ。そんな目を伏せて力いっぱい拳握りしめなくても。対照的に軽く答えるフリッツも、よく見ると目は鋭かった。そういえば、四角関係だから、どの組み合わせが先に踊るかで次が決まる感じかな。

 予定ではダンスの曲数は8〜10曲のはず。全て踊らなくてもいいが、一曲も踊らないのも問題がある。中でもやはりファーストダンスとラストダンスは特別だ。こうして考えている間も、目の前では四人の静かなる争いが行われている。どちらかというと男性陣はファーストダンス重視、女性陣はラストダンス重視、て感じかな。

 お。決まったようだ。ファーストダンスは王子とトウア、フリッツとアイリーン。ラストダンスは王子とアイリーン、フリッツとトウア。案外すんなり決まってよかった。じゃ、予約お願いしないと…と声をかけようとしたら、サミュエルに腕を掴まれた。なんだ?


「カイルは誰と踊るの?」

「特に決まっていないから、トウアさんとアイリーン様にお願いするつもりですけど?」

「……僕は?僕とはいつ踊ってくれるの?」


 もしかしたら言われるんじゃないかと思ってた!うーん、でもやっぱり男二人で真ん中で踊るのはなぁ……よし、こうしよう。耳に口を寄せて小声で提案する。


「……これでどうでしょう?いいですか?」

「うん。それでいいよ」

「ありがとうございます。あ、それでお願いがあるんですが…」



 そうして話しているうちに学園長の挨拶がはじまる。ついにパーティーの開演だ!



 サミュエルと二人でコーレナの元に向かう。流石コーレナ嬢!ダンスを誘う令息たちに囲まれている。しかし、近付くサミュエルに気がつくと道をあけてくれる。やはり別格なのか?


「あらサミュエル様。それにカイル様も」

「やあコーレナ。今日もきれいだね。ファーストダンスの相手が決まっていなかったら僕とどうかな」

「こんばんはコーレナ様。素敵なドレスですね、よくお似合いです。僕も踊っていただきたくてサミュエル様に便乗させていただきました。よろしくお願いします」


 サミュエルは優雅に手を差し出し、カイルは胸に手を当てうやうやしくお辞儀をする。コーレナは淑女の礼を返すと色気たっぷりの声で答える。


「ありがとうございます。お二人もとても素敵ですわ。ではファーストダンスをサミュエル様に、次をカイル様にお願いいたしますわ」

「ああ」

「光栄です」


 サミュエルはコーレナの手を取り会場の中心に向かう。残された令息たちの視線が突き刺さって痛すぎるので、さっさとその場を離れることにする。さて、誰か踊ってくれるお嬢さんはいらっしゃるかな〜?


 あ、あの子は。


 * * *


 さあさあ!卒業パーティーが始まったわ!

 ヒロインのトウアとカイルの行動を追うわよ!



 わたくしは男爵令嬢。ご存知の通り転生者です。

 ゲーム本編では、攻略相手とダンスを楽しんだ後テラスか庭園に出て告白、ライバルの婚約者に婚約解消を宣言する流れ。

 でもどうしたことか、誰も婚約者がいないんだよねー。宣言することなくなっちゃう!しかも、両想いになっていない、ポかった!どうなるのか気になる〜早く探して観察しなきゃ!


 さっきはあの辺に元生徒会でかたまっていたのになぁ、とキョロキョロさがしていると、ふいに背後から声がかかる。


「こんばんは、お一人ですか?」

「はいっ?」


 驚いてうわずった声で振り向くと、さらに驚いた。カ、カ、カイルじゃん!なんで?探してたのに後ろから来た!?


「よかった。もしお約束がなければファーストダンスを踊っていただけませんか?」


 予想外の出来事に固まってしまう。しかもなんだかカイルが格好良い。制服と雰囲気が違うのはもちろんだけど、にこやかに笑った顔がいつもの五割り増しにキラキラしている。


「わ、わたくしでよいのですか?」

「ふふ、こちらからお誘いしているんですよ?オレンジ色のドレスがあなたの可愛らしい雰囲気とぴったりでとてもお似合いですね。素敵です」


 さ、行きましょう。と差し出す手を取る。

 やばいやばい!今きっと顔が赤い!でもファーストダンス誘われるなんて!断るわけない!

 心の中できゃーきゃー言いながら、導かれるままダンスホールに向かう。

 まわりにもペアになった男女が一定の距離をとって並んでいる。あ、ヒロインはやっぱり王子様と踊るのね。その近くにはフリッツとアイリーンのペアもいる。きゃー!これからクライマックスのダンスシーンなのよね!


「本命の方がいましたか?」


 うわぁ!耳元で囁かれたー!耳をおさえたくてもホールドしているからできない!!


「す、すみません友人を探していまして…わっ」


 ジャン!ジャン!タララ〜ラ〜♪


 楽団の演奏がBGMとして流れていたものからダンスの楽曲に切り変わる。言い訳もそこそこに踊りはじめる。


「大丈夫ですか?すみません、お話の途中なのに」

「こ、こちらこそ失礼しました。せっかくカイル様と踊れますのに、余所見なんてしてしまって」

「無理にお誘いしたようなものですから気にしないでください。相手してくださってありがとうございます」

「わたくしこそ、誘っていただけてうれしいです。カイル様には在学中助けていただいたり、お話させていただいた事も素敵な思い出です。忘れませんわ」


 思い切って見つめると、嬉しそうににっこり微笑んだ。ま、まぶしい!そして嬉しい一言をくれた。


「僕にとって生徒会メンバー以外で一番仲良くしていただいたのが、あなただと思っています」


 そして曲が終わった。あっという間に終わってしまった。楽しかった。踊れてよかった!


「この後も楽しんでくださいね」

「はい!カイル様も」


 カイルと別れ、足早に壁際の方に向かう。早くしないと涙がこぼれてしまいそう。

 うん。学園生活楽しかった!取り巻き令嬢だとわかった時は沈み込んだけど、終わってみたら楽しかった。悪役令嬢アイリーン様もプライド高いけど王子様に片想いしてるかわいい女の子だったし、ヒロイン観察も充実した趣味となっていた。

 よかった、楽しかったんだ私。よかった。

 なんだかスッキリして涙をふくとにっこり笑って顔をあげる。すると目の前に誰かいた。


「先程は楽しそうに踊っていましたね。よければ次はボクとも踊っていただけませんか?」


 顔と名前は知っているけど話したことはない伯爵家の令息だ。けっこう格好いいと人気もある。


「はい、ぜひお願いします」







後半に続きます。

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