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トウアのドレスができるまで


「お集まりいただきありがとうございます。今日の議題は『トウアさんのドレス』です。卒業パーティーまであまり時間がありませんので、急ピッチで進めていかなければなりません。ご協力お願いします」


 卒業式をニ週間と少し後に控えたある日の放課後、トウアに内緒で生徒会室に残り五人が集まった。

 現生徒会長に許可をとって、部屋の半分を貸してもらった。忙しい時期なのに快く応じてくれた彼らに感謝だ。

 ついでに顧問であるエドワード先生にも来ていただいた。


 この学園の卒業パーティーはみんなドレスアップをして参加する。パートナーがいる場合はその方がプレゼントする事が多い。

 それをふまえて、数日前の大告白大会です。

 トウアさんはとても素敵な女の子なので、カイル的にはどなたかがパートナーになってドレスをプレゼントすると思っていた。ところがどっこい!『王子→トウア→フリッツ→アイリーン→王子』という四角関係が発覚!これではトウアさんのドレスを作ってくれる人がいない!

 いや、いないと言うのは違うか。王子は作りたがっていた。すごく。でも止めさせていただいた。貰えればいいというものでもないですよね?これは自分の中の女性目線で考えさせていただきました。


 そんなん気ぃ使うだけだわ。しかも王子がくれるとか、無理してパートナーにならないといけないかもとプレッシャー感じるわ。却下で!


 しかし、そうすると平民であるトウアはドレスを用意できるかどうか、という問題である。と、いうか仲間である我々が中途半端なドレスで参加させたくないのだ。


「僕と数人の意見として、資金を出し合って、デザインも考えて、プレゼントしようと思うのですが、やはり全員の意見を聞くべきかと。特にアイリーン様には女性としてどう思われるかをお聞きしたいです」

「僭越ながら先に意見させていただきます。まず、トウアにドレスを贈るということには賛成いたします。わたくしも彼女にはドレスアップしてパーティーに参加してほしいですもの。それに、男性だけが贈るよりもわたくしが加わった方が『仲間から』ということがより伝わると思います」

「ありがとうございます。では……」

「なにより!デザインを男性だけで考えるなど!恐ろしすぎますわ!!」


 なんだかヒートアップしたアイリーンにみんなが呆然とする。あれー?アイリーン様?ちょっと他の人の意見も〜などと口を挟める強者はいなかった。


「だいたい、ドレスの流行は年単位ではなく季節ごと、いえ、パーティーのたびに変わるといっても過言ではなく、今の流行の形は〜流行色は〜」


 まだまだ止まらない。しばらく黙って聞き続ける。アイリーンがトウアのことを大切に思っていることもわかるので、苦笑しながらもみんなで見守っている。


「……はっ!ごめんなさい、わたくしとしたことが!」


 唐突に我に返ったアイリーンがようやく止まった。実に20分は喋り続けていた。


「ありがとうございます。ドレスのことがよくわかりました。デザインはアイリーン様にお任せするのが良さそうですね。では資金の方ですが、意見はございますか?僕は均等にみんなで出すのが良いのではないかと考えますが」

「そうだな。その方が受け取りやすいだろう。私も参加させてもらうよ。大人だから倍にしてもらってもいいが」


 やった!エドワード先生も協力してくれるようだ。以前トウアに個人的に勉強を教えてもらっていたと聞いた事があった。だから声をかけてみたんだけど。

 すると、王子が眉を寄せて問いかける。


「失礼ですが、先生はそんなにトウア嬢に肩入れする理由があるのですか?確かに顧問としては関わっていますが」

「ああ、実は昔からの知り合いなんだよ。この学園に入るにあたって勉強を教えたりしていた」

「そう、なんですか……」


 あ、王子知らなかったのか。ショックを受けちゃってるな。


「フリッツはどう思う?」

「ん?いいんじゃないか?で、エドワード先生に少し多く出してもらえたら助かるし」


 答えながら視線はアイリーンから離れない。ちなみにアイリーンはドレスのデザインで頭がいっぱいでガン見されていることに気づいていない。


「サミュエル様はどうですか?」

「僕もそれでいいよ。でもみんなでプレゼントするなら、デザインも多少はみんなの意見も入れた方がいいんじゃないかな」

「……確かに、それもそうですね。アイリーン様、デザインをいくつかに絞って最終的にみんなで選ぶというのはどうでしょう?」

「ええ。それで良いと思います。でしたら、わたくしが懇意にしているデザイナーがいるので、任せていただいてもよろしいかしら。何としても間に合わせてみせますわ!」


 燃えている。アイリーンの背後にボーボー炎が見えるようだ。


「王子様、よろしいでしょうか」

「………。あ、ああ。皆でトウア嬢に喜んでもらえるドレスを用意しよう。卒業まで時間がないが、手分けしてなんとか間に合わせよう」


 王子がいい顔で会議を締める。

 でもすぐ横にいるカイルにはさきほどの呟きが聞こえていた。「事前にドレスの詳細がわかるならそれに合わせた衣装で出席できるわけか…それならいくつかこちらが衣装を用意しておけば…アイリーン嬢に上手くドレスの好みを伝えないと…」とかなんとか。

 王子ったらもしかしたら既にドレスを用意してあったのかな。自分の衣装とも合わせて…。怖くなったのでもう考えるのはやめよう。



 翌日の放課後、力技でデザイナーさんごと生徒会室にやって来たアイリーンと共にデザインを考え(既に二つの候補に絞ってくれていた)、色を決めたら即発注!サイズ合わせなども後日トウアを拉致して店に連れて行き、前日、なんとか間に合わせてくれた。すばらしい!


 そして、プレゼント贈呈式!

 毎回貸してもらって申し訳ないが、生徒会室にて。王子とアイリーンが仕切りながらドレスを贈る。トウアは大号泣だ。


「み、みなさんの…お気持ちが…うれしすぎて…こんな…こんな素敵なドレス…ドレスが…。ありがとうございますッ!!」


 がばりとアイリーンに抱きつく。男性陣には両手を握りしめて一人一人お礼を言った。


「エドワード先生まで!ありがとうございます」

「ゴウにも伝えたよ。アイツもお前がこんなにみんなに慕われてると知って、半泣きしていた。三年間よくがんばったな」

「はい…はい!ありがとうございました!」


 二人の会話に軽く感動していると、王子の目が!キラキラのハイライト消えて淀んでますよ!さっき僕があまりに泣くトウアの頭をポンポンしてハンカチで涙ふいてあげた時も、もしかしてそんな目で見てたんですか。最近隠すつもりもないのか感情ダダ漏れですよ。王子様として大丈夫なんでしょうか。


 なかなか泣き止まないトウアが、明日に響くからもう泣き止みなさい!とアイリーンに叱られながら、嬉しそうに明日のドレスアップ計画を話している。化粧やアクセサリー類は当日、アイリーンと一緒に伯爵邸で仕上げるらしい。



 色々ありますが、それも青春!甘酸っぱくてほろ苦い。明日の卒業式&卒業パーティーが楽しみです。

読んでいただきありがとうございます。


これを書くにあたって、第一話の内容を一部変更しました。

卒業までの期間  一週間→数週間


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