勉強会をいたしましょう!
一年生の後期のお話です
学園では試験が各学年の前期・後期の二回ある。
前期の試験結果はこうだった。
1 ロベルト
2 トウア
3 サミュエル
・
7 カイル
・
11 アイリーン
・
22 フリッツ
結果発表を見た時に何気なくフリッツが言った「トウアちゃん勉強教えてくれないかな〜」に、なんとトウアが了承をくれた。
それにより、後期の試験範囲が発表された本日、計画を立てることになった。
「と、いうわけで勉強会なんだけど、僕もトウアさんに教えてもらえるのはありがたいけど、自分の勉強もあるだろうし、三回くらいできたらと思うんだけど。どうかな?」
「そうですね。私も家のこともあって毎日は無理そうなので、三回くらいなら大丈夫です」
「無理言ってごめんね。ありがとう」
「おいおい!俺を無視して話を進めるんじゃないよ。頼んだのは俺だろ?」
「でもフリッツは教えてもらう立場だろ?三回でわからなそうなら残りは僕だけで我慢するんだね」
「う…わかったよ」
教室に誰もいなくなってしまったので、続きは歩きながら話す。トウアを門まで見送り、馬車の停車場に向かうルートだ。
場所は図書室で、放課後の一時間くらいで…と話がまとまってゆく。すると、後ろから声がかかる。
「集まってなにかするのかい?」
王子だ。そんな気がしてた。いつものようにサミュエルを連れている。
(そして離れて取り巻きがいる)
サミュエルの視線を感じ、目が合うとにっこりされるので、にっこりし返す。
「はい。試験の勉強会をしようと話していました」
トウアが弾んだ声で答えながら「ね!」という感じに僕とフリッツを見る。僕は頷きながら答える。
「トウアさんに勉強を教えていただこうかとお願いしたんです」
「カイルには僕が教えるよ!」
サミュエルが突然提案する。いつの間にかカイルの隣にいる。あれ?フリッツはどこに?
「ご公務は大丈夫なんですか?」
「まだ今は学業優先するようにしているから、試験の時は準備期間から公務は少なめにしているんだ」
「ではサミュエル様も一緒にやりましょうか。図書室でするつもりですがいいですか?」
「ああ。図書室なら使える特別室があるからそこでやろう」
頷きながら王子が提案する。
さすが王家。特別室なんてものがあるんですね。そして当然のように王子も参加なんですね。お断りなんてできるわけないですけど。
そうなると……あ、やっぱりいた。周りをうかがうとアイリーンが覗いている。取り巻きの方々と群れたりはしないんだよね。しかも、王子様も参加するですって?キィーッ!という顔をしている。気がする。
カイルはアイリーンの方へ近づくと、首を傾げながら話しかける。
「アイリーン様もご一緒にどうですか?」
「……!な、なんのお話ですの?」
えぇー。覗いてたのバレてないと思ってる?今めっちゃうれしそうな顔したやん。取り繕ってもバレバレですけど。
「王子様が図書室の特別室を使う許可をくださったので、そこで試験の勉強会をしようということになりまして。アイリーン様もそこなら安心して勉強できるかなと。他の生徒がいるところではお立場的に気が散ってしまうでしょうし」
「…た、確かにそうですわね。わたくしも落ち着いて試験対策をしたいと思っていましたの。王子様とご一緒出来ればこんな心強いことはないですわ」
ふふふ、乗ってきた乗ってきた。王子様効果抜群だね。これでトウアや僕を睨みつけたりしなくて済むだろう。みんなの元へ戻ると、フリッツが微妙な顔で尋ねてきた。アイリーンは王子に挨拶をしている。
「何であの子誘うんだよ。すげえいつも感じ悪いだろ。睨んでたり、キツイ言い方したり」
「好きな人のために頑張っちゃって、かわいいよねぇ〜」
「はぁ?…どこの経験豊富なイケメンの台詞だよ」
「フリッツもきっとわかるよ。彼女はツンデレさんだからね」
ウインクして答えると、呆れたような顔をされた。だがしかし!ここは押し切るべし!他の面々は…トウアはにこやか、サミュエルは無反応、王子はちょっと不思議がってる?……大丈夫でしょう。
第一回勉強会が始まった。
放課後、図書室前に集合して、王子に案内され特別室に入った。初めて入室したその部屋はさすがにランクが違って机も椅子も格調高い。部屋も広いし、机の大きさも十分で六人座っても余裕があった。なんなら倍の十二人くらいで会議とかしても圧迫感なく使えそうだ。
席は入口から見て右奥からアイリーン・王子・トウア、左奥からサミュエル・カイル・フリッツ。
勉強会といっても、はっきり言ってみんな上位の人達なので、それほどずっと教え合っているわけではない。基本自分で勉強をして、疑問点や不安な点があったら意見を聞いたりするだけだ。だけなはずなんだけど。
「あれ?うーん…」
「あ、それはねここの方式を用いて〜」
カイルには、なぜかサミュエルが付きっきりでみてくれる。家庭教師も真っ青なほどに。わかりやすくてとても助かるんだけど……ま、いいか。助かるし。気にせず勉強しよう。
フリッツは時々トウアに質問している。折角の機会を逃さないようにと考えているのだろう。トウアも丁寧に教えてくれている。
「ここは…で、これは…ん?そうすると矛盾するのか?」
フリッツが小さな独り言を言いながら考えていると、図書室へ参考書を探しに行って戻ってきたアイリーンが通りかかり、肩越しに少しのぞきこんで指摘する。
「そこは、これではなくてこちらの方の〜」
「ああ!そうか。そうすればきちんと当てはまるのか。そうしたら、こっちの問題も〜」
「そうですわね。同じように考えれば解けるはずですわ」
「ありがとう。よくわかりました」
「ふふ、よかったです」
フリッツがお礼を言って顔を上げた。アイリーンは笑みをうかべ答えると、自分の席に戻って行く。フリッツはバッと下を向き固まった。
「?フリッツ、何かわからないところがあるのか?手が止まってるぞ。あれ?顔が赤くないか」
「あ、あぁ…いや、何でもない。ちょっと考えてただけだ。大丈夫」
カイルの言葉にあわてて答えるも、フリッツは初めて自分に向けられたアイリーンの笑顔がしばらく頭から離れなかった。
王子は試験勉強なのか公務の一環なのか、参考書ではなさそうな本を見せながらトウアに話しかける。
「トウア嬢、ここの見解だが…君の意見を聞かせてくれないか」
「あ、はい。そうですね、私ですと〜〜と思いますが、王子様とは立場が大変異なりますので……アイリーン様はどう思われますか?」
「え?……そうですわね。わたくしも王子様とはやはり違う立場ですが〜でしたら〜であると…」
三人で議論を交わしている。トウアさんナイスアシスト!王子の向こうからチラチラ気にしてたアイリーンに気付いていたのかいないのか。トウアが意見を求めたことでいい感じに参加できたようだ。
そうして、第一回勉強会が終わった。
その後、第三回勉強会が終わった頃には、遠慮せずに質問できる関係が出来上がっていた。試験対策もそうだけど、こんなに人間関係も充実したものになるとは予想外で、大成功と言っていいと思う。
来年の試験前にも勉強会が出来たらいいなーと軽く考えているカイルだった。
さて、試験結果はいかに……!?
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