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11/16

if・・・

もしかしたら…な、お話です。

そうかもしれないし、違うかもしれません。

「ちょっと!お母さん起きて!!」


「んもう、こたつで寝ると風邪ひくっていつもお母さんが言ってんじゃん」


ーー幸せな声が聞こえる。いつもの夢かな。すごくはっきり……ゆさゆさゆさ。誰かにゆすられる。痛い痛い、肩が…いや腰かなおしりが固まってる感じ…


「お腹すいたから早くご飯作ってってば!」


ーー!!!!????!!?


「えッ?今何時ッッ?!」




 * * * * * *


「お兄様、わたくしカイル様に会ってみたいですわ!」


 14歳になる妹姫に頼まれ、兄王子はカイルを王宮に招待した。カイル17歳、学園三年目である。



 生徒会も始動して半年経ち、王子ともだいぶ打ち解けてきたある日。


「カイル、よかったら妹に会ってもらえないかな。薔薇のこともあって昔から会いたがっていたんだが、私も君に会えてなかったから。学園で再会したと話したら思い出したようでね」

「僕なんかでよければ是非お伺いしますが…姫さまに無礼なことをしてしまわないか心配ですね」


 やっと王子に慣れたところなのに、他のロイヤルファミリーに会うなんて緊張しまくる未来しか見えない。


「ははは、大丈夫だよ。妹は14歳だしそこまで気負うことはない」


 14歳とか一番難しい年頃じゃないですか。思春期真っ盛りで、あちらの世界なら中学二年生。娘もちょうど同じ歳で、お兄ちゃんの14歳の時よりは話すけど、小学生の時よりは格段に話をしてくれなくなった。しかもなにかやらかしたら牢屋に入れられてしまうかもしれない姫さまなのだ。王子がいるから庇ってくれるだろうけど。あぁ心配…。



 * * *


「ポート子爵家カイルと申します。お招きいただきましてありがとうごさいます。」

「ようこそおいでくださいました。わたくしユーリスと申します。仲良くしてくださいね」


 優雅な仕草で出迎えてくれる妹姫さまはとてもかわいらしかった。でもどうしよう…やっぱり娘を思い出してしまった…顔は全然違うのにイメージが重なるような気がするのはなぜだろう。


「………まいちゃん…」


 泣きそうになり俯いてしまう。

 ダメだ。今は妹姫さまに会いに来てるんだから。なんとか気持ちを切り替えて顔を上げる。


「すみません。失礼いたしました」

「……………」

「姫さま?」


 ヤバい気分悪くしてしまっただろうか。表情が固まっている気がする。思わず王子に助けを求めるように視線を向ける。

 すると、妹姫が王子になにかひそひそと話し出す。王子は頷くと、侍女を伴って部屋を出てしまった。

 

 え?ちょっと待ってよ。二人にしたらマズイでしょ!年頃の男女なんだよ!?


 そんな心配をよそに妹姫が近付いてくる。思わず後退りそうになるが、それも不敬になりそうで耐える。そして…


「……もしかして…お母さん?」

「へ?」

「今、『まい』て言ったよね?あたし、まいだよ」

「!!!!?????!!?」


 え?え?どういうこと!?まい?まいちゃんなの??娘の?えぇー???

 パニックです!エマージェンシーですよ!!


 そうとうの阿保ヅラでほうけてると、クスクスかわいい笑い声が聞こえる。


「やっぱりそうでしょ!カイルはお母さんだと思ってた!」


 小首を傾げて微笑む彼女に駆け寄って抱きしめる。会いたかった会いたかった会いたかった!ボロボロ涙が出てくる。


「もう〜泣かないでよ。お母さん」


 声は少し違うけれど口調は娘のそれなので、ぎゅうぎゅう抱きしめる。半分諦めたようにされるがままにしてくれていた。




「ごめんね、取り乱しちゃって」


 ようやく泣き止むと、恥ずかしくなって肩をすくめる。落ち着いてきたら、疑問が頭に浮かぶ。


「なんでカイルがお母さんだとおもったの?全然接点なかったでしょ?」

「だって、お母さんこのゲームやりながら『カイルがいない…』て言ってたじゃない。その時はよくわからなかったんだけど…きゃッ!」


 言い終わらないうちに肩をガッと掴む。


「やっぱりここはゲームの世界なの?それよりもお母さんはこのゲームを知らないんだけど!!まいはやったことあるの?中学生のうちはやらせないようにしてたつもりだけど」

「ちょっと落ち着いてってば!そんなにいっぺんに言われてもわかんないから!」

「…ごめん」


 落ち着こう。すーはーすーはー深呼吸する。よし!あらためて妹姫…まいの顔を見る。


「ちょっとあたしも混乱してるんだけど、あたしは17歳なのよ。ていうか、17歳の記憶でこの世界に転生したの」

「はぁ?ちょっと待って!まいは14歳の中学生のはずだよ。お兄ちゃんが17歳でしょ」


 あれ?でもカイルと姫は三歳差だから三年後の17歳で来たのか?そうすれば合ってるような??


「ま、ちょっとそこは置いといてもらって、あたしは17歳になってからこのゲームをやったってことなのよ」

「?」

「ん〜〜〜だから、たぶんお母さんがこっちに来た時はまだこのゲームはなかったハズなの。だって一緒にやってたし」

「???」

「時間軸がズレてると思う」

「!?」


 まいが言うには、ゲームが配信された時私が驚いていてすぐに始めたと。その時に「あれ?話が違う?カイルがいない…」と言っていたようで。

 てゆーか!そこじゃない!それよりまず確かめないといけないことがある!!


「お母さんは、帰れてたってこと?」

「うん。どのタイミングなのか話してもらったわけじゃないから正直わかんないんだけど、お母さんが行方不明だった時期とかはなかったよ。思うにあたしが14歳の時ってことだよね」

「じゃ、きっと同じ時間に帰れたんだよね。あぁよかった〜〜。それならその時までこっちの世界を楽しんじゃっても大丈夫なんだね」


 …は!でもまいは?まさか交通事故にあってたりとかしてないよね!?転生お決まりのトラック事故とか!


「あ〜覚えてないから絶対とは言えないけど、そういう記憶はないよ。だからいずれ戻れるといいな」

「なんだか大人になっちゃってる…成長したんだねぇ…」


 また涙が込み上げてくる。まだまだ話していたかったが、もう時間のようで王子が戻ってきた。

 あわててお礼を言うも、あきらかに泣いた後の顔をしたカイルに驚き妹姫をジト目で見つめる。

 誤解はきちんと解きましたよ。



「では、ロベルト王子、ユーリス姫ありがとうございました。また機会がありましたら、是非お話しさせていただきたいです」


 晴れ晴れとした顔で挨拶をすると、姫様とアイコンタクトをとり微笑んだ。


「わたくしも、是非またお話ししたいです。お兄様、よろしくお願いしますわね」


 ユーリスもそう返す。王子は複雑そうな顔をしていた。

 大丈夫だよー。カイルとして会いたいわけじゃないからねー。母と娘としてだから。




 そんな二人の内情など知るわけもないまわりから、妹姫の婚約者候補にあげられて戸惑うことになるとは思いもよらないのだった。




 

こうだったら平和だなーと思って書きました。

楽しかったです。

男爵令嬢さんはいつからきたのか!?とか。


ありがとうございました。

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