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迷境クロニクル  作者: ふぇると
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1.邂逅

いやいやいや、冗談だろ!?!?夢だ、これは夢だ。

まるで異世界に紛れ込んだみたいじゃないか、なんだこれ。ラノベみたいにトラックにはねられて死んだとか、通り魔にさされたとかそんなきっかけがあるもんじゃないのか。こんなの、あまりに突然すぎる。まるで瞬きした瞬間に世界がまるごと変えられた、みたいな。

「・・・な、何処だよ、ここ・・・・・・」


例えるとしたら、明治、大正あたりだろうか。少なくとも、江戸とかそういう時代まで古くは無いだろうし、昭和ほど身近な気配が無い。頭の中は混乱と、馬鹿みたいに冷静な分析でぐるぐるする。


そう、呆然としていたら、影が落ちた。

はっと見上げると、大きな人影に太陽が覆われて視界が真っ暗になった。それが、俺の頭の混乱をより助長させる。

「手前、そんなところで突っ立ってると邪魔なんだよォ・・・で、どうしたんだァ?」

語尾を伸ばす特徴的な喋り方。影の主の顔は、彼の持つ傘の影に飲まれてよく見えなかった。こんなにも晴れているのに、何故傘を差しているのだろうという疑問も、嫌いじゃ無くても噎せるような強いタバコの匂いも、

・・・ただ、俺の脳内は、もう何が何だかわからなくて。

「・・・・・・あ、はは・・・」

声が震える。目眩がする。・・・逃げ出したい。・・・・・・・・・逃げよう。

「あ、おい!待てって!」

叫ぶ声を尻目に、ひたすら走り出した。行く当てなんか無い、ただ、ただ、逃げたくて。


人を掻き分けた。何度か転んだけど、そんなことなりふり構わず走った。みんな嘘みたいに時代錯誤な服を着ているし、道に並ぶ屋台も修学旅行で行った京都みたいだ。なにかがおかしい。いや、全部がおかしい。








「・・・・・・お、」

「へ、」

漫画だったらどん、という音がするのだろうか、それぐらい盛大に、俺は誰かの背中にぶつかった。

どうやら無意識で人を避けた結果、建物と建物の間の暗い路地に逃げ込んでしまったらしい。そして、その空間には、俺とその背中の主しかいなかった。

「・・・どうしたんだ、こんな所に、子どもが」

振り向いた人物を見て、一目でわかった特徴は、彼が・・・恐らく軍人であると言うこと。歴史の教科書とか、そういう系のソーシャルゲームとかで見たことがある、軍人の服。それを身に纏っていて・・・ただ、不思議とさっきほど恐怖心は無かった。冷静な目で、彼をまじまじと観察してしまう。不思議だ、ピンク色の瞳に、黒髪から覗く鮮やかな赤色の髪。

「どうしたんだ、と聞いているんだが」

「あ、・・・あ、すみません」

彼が眉根を寄せる。確かに不躾に眺めるのは失礼だっただろう。なんだか俺は恥ずかしくなって、いつの間にか間抜けに開けていた口を閉じた。

「・・・・・・?君、見ない顔だな。それに、・・・酷く汚いな。まだこの町にも、君のような貧しい少年がいたのか・・・帝の御前であるというのに」

俺を上から下まで眺めた後、彼は憐憫の目を俺に向ける。そういえば、転んで汚れてもそのままにして走っていたから、顔も服も随分と土で汚れてしまっていた。そのことに気づき、少し恥ずかしくなって服の袖で顔を乱雑に拭う。・・・すると、

「・・・ひ、」

思わず小さな悲鳴が漏れた。俺に見分ける能力なんて無いけど、多分、本物の、刀だ。軍人の腰にあるそれに、俺はまた恐怖を感じずにはいられなかった。

そんな俺の素振りに気づいたのか、軍人はああ、と呟くとその刀を鞘ごと腰から外した。そしてそれを、俺に差し出す。

「え?」

「これなら君の助けになるだろう。今すぐなんとかしてやりたいが、今は俺も重要な人物を追っている最中でな。・・・身を守るために使ってもいいし、売り払っても構わない。まあ、軍の特注の刀だ、それなりに価値はあるだろう」

「あ、え、」

「・・・・・・どうせ俺にはもう使えないしな、やろう」

目の前に押しつけられて、思わず手を出してしまった。そのまま彼の手は離され、ぽん、と俺の頭に置かれる。

「すまないが、俺はもう行く。・・・気をつけることだ。」

「え、ちょっと!?おま、これ・・・・・・」

俺の声もそのままに、彼はすたすたとその場を立ち去った。慌てて追いかけても、路地を出た先は人混みで。あんなに目立ちそうな服なのに、姿はどこにも見えなかった。


「・・・ありがとう・・・・・・?」


どうやらすんなりと、俺は助けられたらしい。なんだがむずがゆい気分で、誤魔化すように手の中の刀を握りしめた。

次に会ったときは、名前を聞こう。









なんて感傷に浸るのも束の間、突如俺の視界はぐるりと反転した。

「みーつけたァ。手前(テメエ)ェ、さっきはよくも逃げてくれたなァ!」

あ、この声、喋り方、さっきの。

文字通り、俺は肩に担がれているのか、視界はこの男のものらしき着物でいっぱいになった。

男の姿、顔すら見えない。

一拍置いて、俺は当惑から再び恐怖の感情を思い出した。


「だああああああああ!?何すんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


俺の絶叫が、青い空に木霊した。

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