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姫の王女と王女の姫  作者: 香五七飛
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14.騎士団準備室と騎士の卵


 式典が終わった後、皆それぞれのクラスでくつろいでいた。

 私のクラスもお貴族様らしく優雅に歓談を想像していたのだが、隣の教室に声が漏れるくらいには騒がしかった。

「素晴らしかったですわ。流石ヴィヴィエラ様ですわね」「同じクラスで誇らしい事この上ない!」「良く通る声をお持ちなのですね」

 席の周りに令息令嬢が集まり褒めたたえる。初めての事で私は少し委縮していた。助けてくれるはずのクリスティーナ達も離れた席からうんうんと頷いてばかりで話にならない。私の悪評でクラスメイトにも遠巻きにされるのではないかと、ずっと心配していたから無理もないのだけど。


「ヴィヴィエラ様は教養時間は何をされるんですか?」

 すぐ前に居た女生徒に質問された。教養時間は授業終了後に生徒主体で音楽やスポーツ、ボランティア活動をすることになっている。

「一応全ての活動を見て回ろうと思っていますが、気に入りがなければ騎士室に入ろうと思っています」

 そう言うと皆は騒めいた後、すぐに静かになった。

「え!何故?騎士室は女性が入るところではありませんよ?」

 横に居た男子生徒が不快気味に声を上げる。

「ええ、でも入ろうと思っています」

 ニッコリと微笑んで力強く答えた。


 騎士団準備室。

 王立記念学院にしかない、その名の通り騎士団を目指す者が集まった団体。毎日数時間集まって鍛錬や入団テストの準備をしている。

 そこには貴族ならではの事情がある。

 王立記念学院には貴族の子女は十歳になれば全員入学しなければならない。だが、もう一つ十歳で入れる学校がある。国立士官学校である。

 国立士官学校は身分は関係なく試験に合格さえすれば誰でも入れる。成績優秀で卒業すれば十代で上官になることも夢ではない。男の子が複数いれば一人くらい士官学校に入れようとする親は少なくない。貴族とて同じで勉学に明るくなければ軍事の方へと考える。

 だが、貴族は学院に行かなければならない。士官学校への入学は学院を卒業してからになる。学院は五年制。この差は大きく、下手をすると市民の上官に仕えねばならなくなり、これを良しとする貴族はまだまだ少ない。

 その救済措置を取っているのが騎士団なのである。学院在学中に騎士団に入ることが出来れば、該当カリキュラムを省略し飛び級が可能になるのである。


「何か御用ですか。ヴィヴィエラ殿下」

 士官学校に進学予定のクリスティーナと共に騎士団準備室、略して騎士室を訪れた。校舎からかなり離れた場所に有り、高い塀に囲まれている。門の前はすぐ演習場になっていた。多くの少年が木剣で練習している。私はその熱気に興奮した。

「やっぱり大勢で練習しているのを見るのは迫力が違うわね!」

 近くで練習していた一人の上級生が私たちに気付き、礼儀正しく不機嫌そうに応対してくれた。

「入部希望です」

 クリスティーナがずいっと二枚の書類を上級生に差し出す。

「お二人共ですか?ここは女性がいらっしゃるところではありませんよ」

「活動紹介欄には女性は不可、とは明記してありませんでしたよ」

 食い気味に反論するクリスティーナに上級生は更に機嫌の悪さを顔に出した。しかし丁寧な仕草で会議室まで案内された。


「ジェイク、ヴィヴィエラ殿下をお連れした」

 上級生がノックをしてそのまま練習に戻ってしまった。彼の声掛けの仕方では中に居るのはおそらくこの案内してくれた上級生より年下なのかもしれない。

「ジェイク?」

 クリスティーナが聞き返す。上級生はそれを無視してドアを開けた。

 広い部屋の片隅で書類仕事をしていたジェイクと呼ばれたその人は立ち上がり騎士らしく出迎えてくれた。

「お待ちしておりました。ヴィヴィエラ殿下、クリスティーナ」


 先に入ろうとしたクリスティーナが立ち止まってしまった。後に続こうとした私は思い切りクリスティーナの後頭部におでこをぶつけてしまった。

「クリス?」

 クリスティーナの返答は無く、十秒ほど身動き出来なかった。


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