1.誕生日とお姉様
初投稿です。お手柔らかにお願いします。
お姉様と会ったのは、宮殿の中庭で開かれた私の四歳の誕生日パーティーの時。
美しく真っすぐな金髪と碧い目のケーリアン王国の第一王女。
ディアーナ・ジー・ケーリアン。
一つ年上なだけなのに、大人っぽいというか色っぽいというか。
ロングの金髪によく似合う青いドレス。リボンが沢山付いていて、どう見ても子供用デザインなのに。
私、ケーリアン王国第二王女。ヴィヴィエラ・ジー・ケーリアンはお姉様から目が離せない。
「ディアーナお姉ちゃま。ヴィヴィエラでしゅ。よろしくお願いいちゃしましゅ」
「ヴィヴィエラ!会いたかった!こちらこそよろしくお願いします」
まだ発音やお辞儀がうまくない私に、ディアーナお姉様は子猫でも見るような目で微笑んでくれた。
本当に一歳しか違わないのだろうか。
私も五歳になればこんな風になれるのかしら。
大好きなピンクのドレスも母たちに可愛いと評判の茶色いクセ毛もお姉様の前では褪せたように感じてしまう。
「お姉ちゃま…とってもきれいね」
「ヴィヴィエラもかわいいわ。ギュってしたいくらい」
「…かわいいっていうのは、あたちが子どもだから?」
「え?」
「ハワードお兄ちゃまが言うの。子どもだからかわいいって。本当はそうじゃないって」
「…ちがうわ。だって私も子どもだもの。大人が言うのと子どもが言うのと、ちがうと思うわ」
「そうなの…?」
「ヴィヴィエラの瞳は私とおそろいね」
ディアーナお姉様は、白いフリルの付いたエプロンをギュッと掴んでいた私の両手を取った。
お互いの碧い視線が混じりあう。
お姉様の手から熱いものが私の手に伝わる。入り込んでくる。
「!」
何かはわからない。
火傷すると思われるくらい熱くて痛かったが、嫌ではなかった。
「お姉ちゃま…」
熱が全身に行き渡って死んじゃうかも!と思った瞬間にそれは収まった。
「今のなあに?」
「…わからない…ヴィーも熱かったの?」
「お姉ちゃまも熱かった?}
「んー…」
お姉様は首を傾げてひとしきり考え込んだ後。
「…姉妹の証拠!…とか?」
と笑顔で答えた。
「しょうこ?」
「私がヴィーのお姉様ってこと」
その言葉に私は嬉しくなってお姉様の腕に縋りつく。
「あたちはお姉ちゃまのいもーと!」
お姉様が私の頬を指でツンツンつつく。
「いつまでも一緒にいて…ヴィー」
「うん!お姉ちゃまといっしょにいる!ずーーーっっと一緒にいる!」
ギューっと抱きしめあった。嬉しさで胸がいっぱいになる。
「約束する?」
「やくそく!約束する!」
少し離れた東屋から私達を呼ぶ声がする。
従兄で四歳上のクライドとディアーナお姉様と同い年のハワードだ。
「…お兄様たちが呼んでらっしゃるわ。行きましょう、ヴィー」
ディアーナお姉様は私の手を握り直し、従兄たちのいる東屋の方へ引っ張っていく。
もつれる足を懸命に動かしながら、キラキラ輝くお姉様の顔を見つめ続けた。
「お誕生日おめでとう、ヴィヴィエラ」
クライドが私の為に椅子を引く。
東屋にはテーブルセットが置かれ、色とりどりの菓子が並べられている。
「ありがとうございましゅ、クライドお兄ちゃま。…あたちお姉ちゃまの隣がいい…」
「はぁ?どこに座るかは決まってるんだよ!ヴィヴィエラはそこ!ディアーナ姉上はこっち!」
ディアーナお姉様をエスコートしていたハワードが声を荒げた。
「そんなの知らないもん!…なんでどなるの?」
「どなってない!」
「どなってるもん!」
「ハワード!」
クライドがやんわりと弟に注意した。
「ヴィーは今日が初めての誕生会だよ。知らなくて当たり前」
「うぅ…」
ハワードは渋々口ごもった。
「ヴィー、今日は主役だから特別だよ。お姉様といっぱいお話したらいいよ」
そう言ってクライドは自分の席をお姉様に譲った。
「ありがとうございます。クライドお兄様」
「王族の子どもは他にはあと数人しかいないし、仲良くしないとね」
長子っぽい言動の姉と兄を見て、舌打ちする弟とキラキラした瞳で見つめる妹。
「ありがとうごじゃいましゅ。クライドお兄ちゃま」
お姉様の真似をした。優雅に出来たかしら。
「いけない、忘れるところだったわ。…はい、お誕生日おめでとう、ヴィー」
ディアーナお姉様は持っていた小さなポシェットから白いレースの付いた幅の広い黄色いリボンを私に差し出した。
「きれーい!」
「他のプレゼントはもう部屋に送ってるけど…これもあげたくなって…使ってくれる?」
「うん!ありがとう!すっごくきれい…」
これを付けたらお姉様みたいになれるかな。なりたいな。