同棲開始
重そうな話にはなるべくしたくないのですが…どうなるかわかりません。
四月五日
電子的な音が聞こえる。目覚まし時計の音だ。
毎日のように聞いているが、この音はどうも愛着が湧かない。毎朝毎朝、自分の安眠を妨害してくるからだ。
四月から高校の寮で浅葱と一緒に暮らしている。何故、異性同士が同じ部屋なのか聞いてみたが、知らないらしく、なんでだろうと返された。だが、俺としては、知らない人なんかと暮らすのは御免なので助かる。
俺は布団から立ち上がり、今日初めて袖を通す高校の制服に着替える。もう四月だが、日当たりがあまりよくなく、暖房も付けていないこの部屋は寒い。そのため制服も冷たい。
今すぐ脱ぎ捨てたくなるけど、それを我慢し着る。
着替え終わり、朝食を食べるために台所へと向かう。たしか昨日買ってきたおにぎりがあったはずなんだが。
台所に向かうとそこには浅葱がいた。
「おはよう今ご飯作ってるからちょっと待っててね」
あぁと軽い返事をして、席に着く。
昨日、おにぎりが余ってるから明日は作らなくてもいいといったはずだが忘れちゃったのかなぁ。でも、浅葱の作る飯が食えるのは嬉しいからべつにいいか。もともと食べるつもりだったおにぎりは昼に食うとしよう。
飯を作り終わったらしく、落としそうになりながら持ってくる。
「ごめんね、待たせちゃって。はい、どうぞ」
「ありがとう」
俺の前の席に座り、食べ始める。俺もそれを見て、箸をとる。
「いただきます」
浅葱の持ってきた料理は、みそ汁や、焼き鮭など、日本の朝ごはんという感じがする。つまり、俺の好みだ。言った覚えはないんだけどな。
随分と食べ進めたところで視線に気づき、前を向く。やっと気づいてくれたという感じだ。
「どうかしたのか?」
「いや、おいしそうに食べてくれててよかったな~って」
「ああ、そういうことか。自分で食べて大丈夫だったんだから、気にする必要はないんじゃないか?」
「それでも気になるんだよ」
そんなもんか、よくわからない。
今日から学校が始まるところが多いらしく、ニュースでは小学生が期待に満ちた目をしながら歩いていく。その目を見ていると、昔の俺のことを思い出す。
浅葱は立ち上がり、食器を台所に持っていく。
「食べ終わったらかたずけておいてね、あとで私が洗っておくから」
「いや、俺が洗っておくよ。飯作ってもらったし」
「いや、いいよ。私が好きで作ってるだけだから」
「俺が好きでやりたいだけだからさ」
俺は飯に視線を移しながら言う。
「もう、素直じゃないな~。わかった、じゃあよろしくね。私、準備してくるから」
自分の部屋に戻る浅葱の背を見送り、俺も食器を持ち立ち上がる。
時間はあと少ししかないので、早めに食器洗いを終わらせ、俺も準備を始める。準備といってもそこまで大変ではなく、歯を磨き、寝癖を直すぐらいしかない。
準備も終わり、ちょうど八時になったところで、浅葱は玄関に向かってくる。
「そうだ、祐介君」
「どうした、急に名前なんかで呼んで?」
少し恥ずかしそうにうつむきながら、浅葱は声を出す。
「私たちも心機一転みたいな感じでさ、名前で呼んでもいいんじゃない?ほら、今まではずっと名字呼びだったじゃない」
そういうことか、俺も名字で呼ぶのは少し距離感があったからちょうどいい。
「ああ、わかった。希美」
「うん、ありがと…祐介」
恥ずかしそうにしてどうしたのだ、そんなに俺の名前は口に出すのが恥ずかしいものなのかなぁ。
「同じクラスだといいね」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、いこっか」
希美はドアを開ける、そして、俺の高校生活が始まる。
最後まで見てくださりありがとうございます!次の章はなるべく早く上げれるようにしますのでこれからも読んでいただけると幸いです。