あたしと彼と誕生日ライヴ
こんにちは。葵枝燕です。投稿するのは、随分と久々ですね。
今日十月二十七日は、私の誕生日なので、毎年恒例の“誕生日モノ”、です!
何か、誕生日関係ない気がする話になってしまいましたが、読んでいただけたら嬉しいです。
「みんなー! 今日はあたしの誕生日ライヴに来てくれて、本っ当に! ありがとーっ‼︎」
キラッキラのステージのど真ん中に立って、あたしは叫ぶ。もちろん笑顔を忘れない。濃いピンク色のペンライトが、眩しく輝いて揺れている。
それなのに、どこか虚しい気持ちになるのは、なぜなんだろう。物足りないと思うのは、どうしてなんだろう。
「ミーコ、お疲れ様」
滞りなく無事にライヴを終えて、ステージ裏に帰ってくると、そんな言葉をかけられた。同時に、肩の荷がおりたように、身体が軽くなったのを感じた。
「ありがとう、サユさん」
あたしがデビューした頃から今年で八年、あたしの傍であたしを支えてくれているマネージャーに、笑顔で応じる。さっきまでのライヴとは違う、本心からの笑顔な気がした。
もちろん、ライヴもライヴで楽しんではいる。だからこそ、笑顔でやり抜くことができると思う。けれど、それでもある程度は気を遣う。観客を喜ばせなきゃとか、観客を落胆させたくないとか、そんなことをいつもどこかで考えてしまうのだ。
だから、こうしてライヴを終えて、サユさんの顔を見ると安心する。元の世界に帰ってこれたような感じがする。
「こちらこそ。すてきなステージをありがとう」
「いやいや、サユさんが走り回ってくれたから、超ステキなライヴになったんだよ。あたしのワガママも、たくさん聞いてもらっちゃったし……。だから、お礼言うのはあたしの方だよ」
「いやいやいや、ミーコの努力の結果だよ。だから、お礼言うのは俺の方」
ここまで来ると、後はもうお互いにお礼の言葉のなすり付け合いみたいになってしまうのはわかっていた。だから、あたしは肩をすくめて、“これで終わり”と意思表示する。それを汲み取ったのか、サユさんも同じように肩をすくめた。
そして、自然とほぼ同時に、控室までの廊下を歩き出す。私の一歩後ろにサユさんが控えるようにして、無言のまま廊下を歩く。あたしは何気ないふうを装って、口を開いた。
「言っとくけど、本番は今からだからね」
「え?」
サユさんが、驚いたように訊き返してくるので、あたしは振り向いてサユさんを見つめた。
「あたしの誕生日パーティーは、この後が本番なの。あ、ちょっと違うかな」
言葉を止めて、いたずらっぽく笑ってみせる。こんな顔、観客の前では絶対に見せないものだ。なのに、目の前の彼は、そんなことに気が付かない。
「あたしと、サユさん。二人の誕生日パーティー……だからね」
ついでにウインクまで投げてみるけど、やはり彼にはわからないだろう。あたしの気持ちなんて、あたしが八年抱いてきた気持ちなんて、彼にはわかりっこないだろう。
それでいい。それがいい。今は、このままでいいんだ。
「……へ? ちょ、ミーコ、何言って、は?」
混乱する彼を残して走り出す。込み上げてくる笑いを噛み殺しながら、控室の前にたどり着く。ドアを開け、中に入る直前、少し遠くに見えるサユさんに向かって、あたしは叫んだ。
「サユさーんっ! 誕生日、おめでとーっ!」
ライヴで満たされなかった気持ちが、今は満たされているのを、あたしは確かに感じていた。それは、少し苦い気持ちだったけれど、それ以上に幸せだと思った。
呆然と立ち尽くす彼をそのままに、あたしは控室の中に引っ込んだのだった。
『あたしと彼と誕生日ライヴ』、ご高覧、ありがとうございました!
以下、設定など列記します。長くなると思うので、面倒な方はスルーしてくださいませ。
主人公のミーコはともかくとして、マネージャーのサユさんには漢字というか本名があります。本名は“早雪”さんです。頭二文字取って、ミーコは「サユさん」と呼んでいます。
アイドルのミーコと、マネージャーのサユさん……という設定です。ミーコは、デビュー当初から自分を支えてくれるサユさんに、密かに恋心を抱いていますが、当のサユさんは気が付いてすらいません。
ミーコとサユさんは、誕生日が全く同じです。そこも、ミーコがサユさんに特別な思いを抱く要因かもしれません。
以上、設定などでした。
あらためまして。ご高覧、ありがとうございました!




