第215話:航空技術者は攻撃機の外観一致による戦術優位性に拘る(前編)
長いので前編後編に分けました。
「これまた想像の斜め上を行くものを考案されましたね。従来のスプレーノズル外側に溝を刻んで、カバーを被せて螺旋状の霧を発生させながら、それをスロットルバルブのあたりから噴霧するわけですか」
「試作品を作るのにそう時間はかからないはずです。製造企業についても、国内の多くの企業において対応可能かと。構造自体は単純ですからね。でも噴霧された霧の中の水滴は、完全に視認できないほど粒が小さく、それでもって分解せずに効果的にエンジンの洗浄を行う事ができると考えています。スロットルバルブ付近は元から整備のためにそのようなノズルを差し込める事も可能なようになっているので、機体の設計変更は必要ありません」
「早急に手配します。複数企業にまたがって試作品を作らせて、開発が進む鐘馗に使ってみます」
「後はよろしく」
「はい!」
若い技研の職員は足早に部屋を後にする。
西条との応対を行って数日後、二流体ノズルに関する一連の技術資料と設計図は完成していた。
その間に風営法に関する資料の提出も行い、正直言って人生を早送りしているのかというぐらい時間が足りない状況だ。
1秒が未来を左右する立場。
最近は食べながら設計図を書き、どこかへ移動中の最中に設計図や資料を書くといったのが当たり前で、よくこんな状態で手が腱鞘炎を起こさないものだと自分でも驚くほど。
可能な限り就寝時間を十分に確保しているのが功を奏しているのか、余裕はないがペースは維持できていた。
そして今日は大切な会議の日。
群馬は太田より長島の技術者が訪れ、ついにアレについて話す時が来た。
そう、試製重戦闘機である鐘馗の派生型たる重攻撃機である。
こいつについてはこれまで、鐘馗の完成度を見極めてからどうするか方針を決めようと思っていたため、鐘馗の開発そのものを優先していた。
原型となる鐘馗の完成度が低いと大幅に設計を見直さねばならなくなるため、迂闊に手を出せなかったわけだ。
しかし、鐘馗は量産ラインに乗り、来年には前線に出る事が確定し、現在は細かな不具合の確認等を行う段階で、既に40機が完成して最前線から本土に呼び戻した優れた能力を持つパイロットに乗ってもらい、転換訓練の傍ら、実戦を想定した形での訓練飛行を行い、問題点の洗い出しを行っている最中。
最近は立川や調布を行き来して西東京周辺を編隊飛行しているものだから、新聞等でも取り上げられる機会は増えてきた。
当然にしてこれは主力戦闘機を覆い隠すための措置で、バックアッププランかつそれでいて大戦後半の主力にもなる重戦闘機を主力戦闘機と混ぜて飛行させることで、NUPが探りを入れているレーダー監視を少しでも妨害できればということでやっている。
といっても速度が違いすぎるので大きな効果は出ないだろうが。
なお、一部の鐘馗の訓練飛行を行うパイロットの中には疾風の操縦者になりたいという希望を持つ者がいて、実際に対G試験などで極めて高い成績を出した者は疾風の試験飛行部隊への転籍を認めている。
彼らの想いは様々だろう。
疾風は確実に限定的な運用となるので最前線に向かう機会は少なく、死亡リスクが低いことから乗り換えたい者や、単純に明らかに性能差があって一歩劣る鐘馗に乗る事が自身のプライドとして認めたくない者、純粋に自らの操縦者としての実力を評価してもらいたい者など……
陸軍の考えとしては「優秀な者は疾風に乗り、将来に繋げる」――という考えであり、ここは柔軟に対応している。
ただ、一方で誉れ高いのはより最前線にて戦う者であるともしており、性能が劣る機体なのだから鐘馗のパイロットは評価しないという事はない。
より高いリスクを承知で最前線に赴く者に最大限の栄誉を与えるべきとは西条らに伝えており、俺の意思は十分に尊重され、鐘馗の転換訓練を行うパイロットの方が配給される嗜好品が恵まれているなど待遇が良い。
もちろん、疾風が最前線に飛ぶようになれば同じ待遇になることは事前に疾風のパイロットにも伝えられている。
いわば役割に応じた待遇だ。
重戦闘機に乗る者にモチベーションを落とされては困るのだ。
窓の外から垣間見える飛び立つ鐘馗とその周辺にいる者たちの姿を見ればわかる。
こちらの意図は十分理解されている。
そして、本来の未来において本当に必要だった重戦闘機の飛び立つ姿を見ながら複雑な思いを抱きつつ、俺は長島の技術者達が集う会議室へと資料を手に向かう事にした。
◇
「なんだこれ……外観が同じ?」
「信濃技官。どういうことですか。今日は鐘馗の攻撃機型についての詳細について話し合う会議の場であったはずでは? この外観は鐘馗そのものですよ。攻撃型には見えない」
「いえ、これは間違いなく別の機体です。外観がほぼ同じなのは、当然にして戦術的優位性を最大限に活用するためです」
朝方より集められた長島の技師達は困惑の声をあげる。
俺が彼らに配布し、さらに黒板の上に張り付けたブループリントやその他の技術資料を見る限り、外観は完全に鐘馗との差異が確認できないような状態であったためだ。
もちろん、想定の範囲内。
ゆえに彼らにどうして外観の一致をさせたのかについて改めて説明する。
まず、派生型を開発する上で最も重要なのは生産性を考えた時に同一製造ラインで製造できること、さらに機体の主要部品の共通化を高められるだけ高め、原型機体の部品の流用で基本的な修理が可能であること。
当然にして、自ずと拘れば拘る程に外観は似てくる。
しかし、今回開発する機体はおよそ85%以上の部品を共通化しながら攻撃機とするプランであり、外観的差異は全くない。
この理由は単純。
敵は遭遇した際、それが戦闘機か攻撃機か見分ける事が出来なければ警戒して距離をとる。(本来の未来においてもP-47D、Fw190G、A-36などが同様に外観がほぼ同じであるため、警戒されて交戦比率が低く、作戦成功率、生還率が高かった)
よって、攻撃を受けると作戦成功率が大幅に低下しうる攻撃機にとって必要な抑止力となる。
鐘馗の最高速度は武装した状態の試験飛行でも760kmを上回っており、エンジンの状態や大気の状況次第では770km/hを越えてくる。
750km/hを大きく超える水平飛行速度を持つような重戦闘機なんて簡単に挑もうとは思わない。
それは転換訓練を受けているパイロットすらも理解していて、「鐘馗が自国の戦闘機で良かった」――との声は良く聞く。
現状、レシプロ戦闘機において最強クラスの存在であるのは間違いなく、整備性の悪さはあるが性能についてのクレームは一切ない。
泣いてるのは整備関係の人間だけで、パイロットからは「百式戦闘機より重さは感じるが、機動性も運動性も必要十分。懸念事項はホ5の20mm×4の威力不足のみ」と言われていて、ここについては最悪は開発が急速に進んでいるガトリング砲をガンポッド化してぶち込むという事も視野にいれる。
元々派生型を開発するにあたり、主桁の強度は必要以上に見積もっているため、ガンポッド装備は余裕で可能だし、そもそも現状でも500kg爆弾×2を両翼で保持するぐらいは余裕。
つまり、最初から攻撃機にすることを意図した設計で鐘馗を生み出したため、最小限の変更で攻撃機に出来るというのが理想であって、そのための設計をしたし、その鐘馗がきちんと完成するかどうかが攻撃機としての設計を左右する分水嶺となっていたわけだ。
鐘馗がこちらの想定通りの状態で完成することが間違いないと判断できる今、やることは1つ。
いかにして問題点となる整備性を改善させつつ、外観を一致させた状態で、所定の攻撃機としての性能を保持させるかだ。
このため、俺は長島の人間が想像していた事をあえてやらない事を伝える。
「まず主翼ですが、主翼の形状は原則として一切弄りません。翼端を除いて同じ状態で行きます。製造ラインを考えた時、主翼の構造変更は開発を遅らせ、さらに前線での整備性を低下させる。特に鐘馗の主翼は全く新しい、王立国家ではスーパークリティカル翼などと呼称される翼。設計変更は容易ではありません。他方、当初よりそれを想定して翼を設計してもあります。よって弄るのは基本内部構造。主桁とその周辺です」
「翼端には妙なねじり下げ構造が施されていますね。外から見た状態では違いがわかりづらいですが。この部分は?」
「そこが攻撃機とする場合に非常に重要な構造物になります。外観的差異は生じますが、ここだけは避けて通れない」
長島の若き技師が指摘した翼端構造は、一部航空機メーカーではフェンスと呼称し、広義の意味ではウィングレットと称される存在。
本来の未来におけるA-10等の、比較的低速で飛行する攻撃機に設置される存在である。
なぜこのようなウイングレットが必要なのかというと、飛行中の主翼にかかる荷重を減らす効果があるためだ。
ウィングレットというのは一般的に翼端で生じる渦を小さくし、さらには形状次第では渦の発生を翼より後ろ側にズラすことで、抵抗を低くすることで燃費を改善するのが基本。
しかし実はそれ以外にも形状次第で大きな効果を発揮させることができる。
翼端で発生した渦というのは、ロール時等で翼表面を流れて胴体の方向へ向かうことは流体力学上知られているが、そもそも水平飛行中にも乱流が生じると同じように翼端から胴体に向かって気流が流れ混むことがある。
当然、この時においては翼に大きな曲げモーメントの荷重がかかり、主桁への負荷は翼が重ければ重いほど……いわば爆装状態などで負荷がかかればかかるほど増大する。
それに合わせて必要な分、主桁の強度を確保していこうとすれば、重量はどんどん上がる他、重心位置がより外側に向かうことでロール速度等の低下が起きる。
一応、重心位置が外側にある方が水平飛行時の安定性は上がるのだが、ロール速度の低下は運動性の低下そのものであり、この手の攻撃機においては緊急回避等のために最大限運動性を確保しておきたいのにそれが出来ない大いなる矛盾を抱える事になる。
よって未来の技術者は知恵を絞り、何か方法は無いかと思考を巡らせ、最終的に辿り着いたのが翼端に渦の発生を遅らせる構造物をつくり、それによって水平飛行時の乱流やロール時における主翼表面を流れる気流を減らし、もってロール性能を確保しつつ、さらに主桁の強度を大幅に緩和させる方法だ。
水平飛行時の安定性についても、気流を上手く制御できるので減らさない。
さらに実は低速時における翼端失速も大きく解消できる装備のため、低速安定飛行が求められる未来の攻撃機ではほぼ必須装備である。
ようは航空機というのはこういう試行錯誤によってどんどん進化していったわけわけだ。
いわば、翼端でスーパークリティカル翼と同じ効果を持つ構造物を取り付けたことで、大幅な重量増大を回避しつつ、可能な限り運動性を担保したというわけである。
攻撃機にするためにはこの翼端のウィングレットは必要不可欠。
絶対条件。
なんなら戦闘機でも効果は見込める事から戦闘機側に装着したっていい。
生産性の問題から俺は攻撃機にしか装備させたいとは思わないが、この翼端構造物だけは必須だ。
その上で何をやるか。
それは未来では一般的な、補強材を主翼内部に施す方向性での構造強化である。
まず主桁には、2本あるIビーム双方の両サイドに縦貫通構造部材を仕込む。
王立用語ではウェブスティフナなどと呼ばれるものを。
スティフナに関しては2600年代現在でも船舶等で設計変更が生じた場合や改修時に用いられているもので、ようは桁に追加の縦貫通補強材を張り付けて強化するもの。
Iビームに施す場合は一般的にウェブスティフナと呼ばれ、Iビームそのもののを強化する必要性がある時に使われるが……現代においてはこの補強部材、航空機分野においては主流ではない。
いや、未来においても限定的だ。
存在はするが、航空機に用いる事は稀。
理由としては2つある。
1つ目は未来における主桁は箱型が基本となり、Iビームは主力ではない事。
未来においてはトルクボックスやウィングボックスと呼ばれる箱状の主桁が主。
こいつの内部に補強材なんて入れようもんなら手間だけがかかり、コストが大きく跳ね上がる。
やるとしても製造時の段階から内部に何か仕込むぐらいで、そこからさらに強化するなんて事はやらない。
2つ目は局所的負荷が高まりやすく計算が厄介なので、より計算がしやすい補強材が一般的となったから。
今回と異なり、スティフナは多くのケースで局所的に配置される構造部材。
この場合、重心位置が変化しやすくなるデメリットがある他、局所的に応力が集中してしまう事に対する調整が容易ではないため、未来においては避けられ、存在しないわけではないが最小限の使用しかされていない。
そればかりか、現代においては構造力学への理解と強度計算の計算方法が未熟。
本来の未来における皇国においても、ほぼ使われていないものである。
だが、今回用いるIビームのウェブ両サイドに仕込むスティフナというのは工法や方法次第では局所的負荷を分散できる上、重心位置の変化も最小限になる。
これは古い形式のIビームだからこそ出来ることで、鐘馗を設計した時点においての皇国がウィングボックスやトルクボックスと呼ばれる箱型主桁の製造能力が無かったことが幸いしていると言える。
避ける必要性が無いのだ。
Iビーム方式の鉄骨を用いた船舶や建築物においては、未来においてこの手のスティフナによる強化というのはよくやることで、単純に主桁の構造そのものにおいてIビームが主力とならなくなったので航空機の世界では用いられないだけである。
当然にして仕込む。
なお、スティフナにおいては適切に設置させなければ効果が不十分で、装着精度が必要となるわけだが……
ここは全く新しい工法を使う。
接着リベット接合だ。
王立語ではBonded-Rivet Jointと呼ばれるもの。
考え方自体は現代にも存在するし、2600~2610年代においても一部の航空機で局所的に用いられているものだが、完全に実用化するのは数十年後の話。
ただし、実用化しなかった理由は工程内における諸所の注意点や工夫が足りなかったからで、それらを満たせば2600年代でも実用化は可能。
工法としてはエポキシ樹脂などの航空機用接着剤でもって固定してからリベット用の穴を空け、そこからリベット接合するものである。
強度的には接着剤が強度を支える90%ほどを受け持ち、リベットは僅か10%程度しか担当しない。
このため応力集中が避けられつつも、極めて高い強度を得る事が出来る。
しかも、後から適切な場所に穴を空ければいいので、局所的負荷が生じる事を冗談抜きで最小限とできるのだ。
正直エポキシ接着剤だけでも十分に強度は保たせられるが、強度について最大限確保しておきたい場合、こっちの方が圧倒的に精度を高められる上、50年後ぐらいの未来から他の補強材と外板等を接合する際に旅客機等を筆頭として採用され多用されていく工法のため、50年先の未来の工法を先取をする意味でこの方法でスティフナを追加装着する。
しかもここに追加するのはただのスティフナじゃない。
超高分子量ポリエチレン繊維を内部に仕込んだ複合材としてのスティフナだ。
スティフナというのは局所的な負荷をかけやすいもの。
どんなに上手く計算しても、どうしてもここの問題は0とできない。
これを緩和するため、超高分子量ポリエチレン繊維を張り巡らせた複合材とすることで、この問題点を完全に解消することができる。
超高分子量ポリエチレン繊維は変形靭性が高く、疲労に強く、衝撃吸収力が極めて高いため、単体では熱に弱い事から使われないが、複合補強材として未来の最新鋭戦闘機ですら使われているという話は可能性の未来よりもたらされている。(エポキシ樹脂と複合させても150度程度の耐熱温度のため、使用は限定的とされる)
未来において補強材の複合材化はもはや当たり前。
金属部品だけでの強化はやっていない。
ただし、超高分子量ポリエチレン繊維を複合材に用いる場合、若干の注意点がある。
超高分子量ポリエチレン繊維は引張強度に極めて高いが、圧縮に極めて弱い。
したがって、そのまま用いたのでは曲げモーメントが主翼に発生した際、圧縮が生じる部位では圧縮によって破断するリスクがある。
ではどうするか?
なんてことはない。
未来のコンクリート橋内部のワイヤーがそうであるように、予め引っ張って張力を保たせればいいわけだ。
計算上、圧縮が生じないような状態に引っ張った上で複合材のスティフナとして成立させればいい。
こうすることで補強材の重量と落としながら、翼の外観をほぼそのまま、攻撃機として必要となる強度を保たせることが出来る。
重量増大は最小限に。
効果は最大限にだ。
俺はここにさらにストリンガーと呼ばれる縦貫通材も追加で仕込む。
こいつは現代においても多用される補強材で、主として現在は軍用戦闘機でよく使われる、外板の内側に張り巡らされた板あるいはワイヤー状の補強部材。
一般的に主桁の重量増大を調整するため、かつ、外板が歪まないように補強し、その上で主翼にかかる負荷を分散させるために標準で施されている補強部材であり、この発想が強化されていくことで多主桁方式へと繋がっていくものであるが、翼が木製モノコックだった時代から概念として存在する補強材で、金属製単翼機が主流となった現代になればなるほど多用されつつあり、現代に繋がっている。
こいつを現状より追加するわけだ。
なお、余談ながら未来の旅客機においてはスティフナを追加せずストリンガーだけを追加して主翼の強度を高める事が標準化している。
なんのために強化が必要かというと、通常機体の胴体延長版を製造する際において翼の強度がより必要になるため。
通常の胴体の長さでは強度的に不要ながら、搭乗人数を増やすために増大した負荷を、翼そのものの翼型の設計変更を行わず重心位置の変化も最小限に強度を上げるには、最も適している補強部材であるためにこちらの方法のみでの主翼強化が多用される。
他方、未来においては旅客機において良く行われる事とはいえ、ジェット戦闘機に事例もないわけではなく、近代改修の一環で重量が増大した際、ストリンガーを追加して主翼強度を確保することがある。
F-16等で事例がある。
F-16に関して言えばAからCに至る際にスティフナを局所的に追加、さらにそこからBlock50ではストリンガーが通常の状態よりさらに追加されて主翼の強度上昇が行われた。
このように、近代改修等において補強材の追加は珍しい事ではないが、スティフナの追加は局所的か、あるいは行わないのが一般的。
一方でストリンガーの追加は重武装を施した際に外板にかかる負荷をより分散させるため、どうしても必要になるので、こちらも並行してやるわけである。
ただし、ストリンガーには超高分子量ポリエチレン繊維は特性として不向きなので仕込まない。
理由はストリンガーは主桁とは比較にならない強い圧縮を抱え込むための補強材で、主桁と異なり圧縮に弱い超高分子量ポリエチレン繊維では厳しい。(翼の状況次第では強い張力も発生する)
未来においては圧縮に強いエポキシ樹脂と、同じく圧縮にも強い炭素繊維が使われるが、炭素繊維は現代ではほぼ製造不可能。
繊維を製造するために必要となる不純物の除去は最悪どうにかなるとしても、炭素化する際、超高密度に制御された張力と不活性ガスによる温度管理による炭素化が必要で、これは現代ではとてもではないが再現不可能。
よってストリンガーそのものは通常のものを使う。
こんなことを言うと「スティフナの時のように同じように超高分子量ポリエチレン繊維を引っ張っておいたら?」なんて言われそうだが、金属製のストリンガーは基本的に最小限の強度で構成される。
張力をかけた状態で複合化させたら金属部分が部分的に、あるいは全体的に歪んだり曲がってしまうし、歪んだり曲がらないような構造にするための最適化のための計算なんてほぼ不可能で、そしてそんな複雑構造のストリンガーなんて計算上で図面を引いても2600年代の技術水準では作れない。
それだけではない。
万が一少しでも曲がれば外板に業界用語でいうバックリングと呼ばれる座屈が生じ、翼表面の気流を乱し、最悪は揚力を失いかねない深刻な悪影響を主翼にもたらす。
なので、ここは一般的な金属製ストリンガーに留める。
以上のようにして翼を強化することで、主翼の生産ラインはほぼそのまま。
一部の工程を追加することで、攻撃機として使用可能な、両翼3000kg以上にも耐える主翼を生み出す事が出来る。
設計的には初期型の装備重量は2500kgを標準とするが、エンジン性能が強化されればA-1と同様、両翼で3t以上の爆装をすることも見据えて主翼の強度については余裕を持った設計とする。(ここはもうほぼエンジン性能次第。ハ44の出力が上がれば、搭載できる兵装の量も増えるという事だ)
ただし、現状では攻撃機として使うには大きな問題がある。
低速時の安定性の確保や揚力の確保。
現代からおよそ30年後ぐらい先の考えでは、攻撃機として作り直すなら翼面積を増やすしかないと考える。
ようは攻撃機のために異なる主翼を装備するという事。
だが、本来の未来を含めた次の世紀の未来では違うアプローチで調整する。
それは補助翼の調整でもって低速時に必要な揚力を確保し、低速時においても失速しないようにすることだ。
ではどうするか?
それをこれから説明しよう――
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