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第209話:航空技術者は炎をも遮断する(前編)

長いので分けました。

「――ッッ!」

「……」

「現実の話なのかこれは」

「手品の類では……」


 目の前の光景を前に黙り込んでしまう者、あるいは独り言のように何かを呟く者……

 多くの者が衝撃を受けるだけのものを見せつける事ができたのは間違いなかった。


 それは数分前のこと。

 俺は新たに1人の技研職員を呼びつけ、その場にとどまらせる。


 その者は見慣れぬ干し柿のごとき色の被服を纏い、特殊なマスクを装着していたが、「これからこの者に火炎を放射する」――という俺の一言により周囲には戸惑いの声が漏れた。


 慌てふためく周囲をよそに今日の日までに何度か実験してきたので問題ないと言い切り、実験を強行。


 実際の火炎放射器とは異なる、バーナー方式による1300度~1400度前後の火炎の放射を受けた職員はおよそ45秒耐え抜き、その間、真っ黒こげの状態となったまま姿勢を崩さず……


 火炎の放射が終わると職員は両手を広げて周囲に自らの状態に問題が無いことをアピールし、事前の手筈通りに身に着けていた防火服を脱衣し、身体に重大な火傷を負っていないことを示したのである。


 その姿に集まった将官らは西条も含め、ついに現実感を喪失する事態となってしまった。


「これは決して怪奇現象でも奇術の類でもありません。厳選された最新鋭技術の集約により到達しうる現時点で製造可能な防火服の性能そのものです」

「信濃、念のために聞いておくが……どうして45秒に留めた? 最初お前は60秒という指標を示していたはず」

「万が一を想定しました。残り15秒でも身体に重大な火傷を負う可能性は低いですが、何分試作品ですから万が一があっては困ります」


 西条の問いかけに対して毅然とした態度で返答する。

 事前の試験では60秒までならば人体に影響を与えうる火傷を負わない事は把握済みの上での45秒だ。


 未来の防火服用のISO規格等とは条件が異なるが、軍用で必要なのは戦闘、あるいは作業が継続できるかどうか。


 外気を遮断し、特定の時間の間に被服の中の温度が一定未満である事よりも炎が貫通して火傷を負う方が問題なのである。(ISOではそちらを重視しているが、現状だと技術不足により正しい計測が出来ないという理由もある)


「45秒にした理由はそれだけか?」

「現用の携帯式火炎放射器はタンク容量の問題から最大で50秒未満の放射しかできません。この火炎放射器は可燃性の液体をガスと共に噴霧することで効果を発揮し、付着した可燃性液体は対象物の表面で延焼します。ゆえに実際はその液体が身体に付着すると噴射時間以上に燃焼を生じさせるのですが、この防火服は繊維の性質上、防水であるだけでなく"自己消火性"と呼ばれる性質を持つので気化した可燃性液体はそれそのものが燃えても燃え移るという事がありません。液体だけが燃焼する程度にとどまります。このため、実験においては実戦に近い状況を想定し、45秒としましたが、これは自爆する危険性から20秒以上の連続放射を行う可能性が極めて低い現用の火炎放射器からの攻撃を受け、可燃性液体が気化しながら燃焼した際の時間を25秒前後と想定し、その延焼によって生じる熱をも問題が無いことを示すために45秒と設定しました」

「自己消火性とは?」

「それは――」


 自己消火性とは、防火服において非常に重要な要素である。

 燃焼とは熱を伴う急激な酸化反応。


 つまり火炎の放射を受けた時、通常の被服では原材料たる綿などを酸化させながら浸透していく形で燃え広がっていく。


 これが身体に重大な損傷を生じさせる。


 しかし防火服に用いられる化学繊維においては、一定の表層に炭化した層を作り出し、これが熱を遮断しつつ酸化を防ぐ保護層となるようになっている。


 業界用語ではこの時に生じる保護層を炭素残渣(Char)、あるいは単に残渣と呼び、金属で例えるならステンレスやチタンのような酸化被膜が炭素という形で燃焼時に形成されるというわけだ。


 ステンレスやチタンにおいては強力な酸化被膜が形成されることで酸化を抑制し、それが保護層となることで腐食から防ぐ仕組みとなっている。


 すなわち防火服用の化学繊維では燃焼という名の酸化現象において炭素残渣と呼ばれる保護層を発生させ、これによりさらなる酸化を防ぐため燃え広がらないように抑え込むので、一旦は表面が燃焼してしまっても一定程度で留まり、それ以上燃焼することを極限にまで抑え込む消火性というものを獲得しているのだ。


 これを自己消火性、あるいは自己消火性能などと言い、防火服の性能を左右する極めて重要な要素なのである。


「つまりその黒焦げとなりながらも形状を維持している防火服は、黒焦げの状態だからこそ火炎の放射に耐えていたというのか」

「そうです。加えて言えば、現用の市場に流通する化学繊維では熱による溶融、融解によって身体に深刻な火傷を引き起こしますが、こちらは溶融や融解が生じることなく、発生した炭素残渣が可能な限り柔軟性と形状を維持する特性があるため、極めて高い防炎性を持つに至っています」

「説明を聞けば奇術や妖術の類ではないことはわかるものの、納得できるかと言われて納得できるものではないな。エアロゲルとの組み合わせだけでこうはならんだろう」

「おっしゃる通りです――」


 西条の読みは鋭かった。


 そう、エアロゲルを用いただけではこのような性能を持つ事は無い。


 エアロゲルに炎が当てられた場合、温度が1800度以上ともなるとガス化して揮発するか、あるいは焼結して硬化して別の特性を持つ別の物質に変化してしまう。


 炭化させるには別の物質が必要だ。


 そのために今回調達したもの……それがPBOことポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールである。


 PBO。


 この素材は本来の未来と可能性の未来において異なる経緯にて誕生している。


 本来の未来においては、戦後亡命した皇国人がNUPの化学繊維メーカー内での研究室で現地の研究者と共に共同で研究して発明し、"可能性の未来"では皇国とNUPの企業が共同開発して発明された事になっている。


 その後の経緯としては、本来の未来においては僅かな資料をもとに製品として量産化に成功して市場に供給されるようになった。


 この理由はPBO製造に必要となるポリリン酸溶液重縮合法の発明者が他でもない皇国人であり、亡命研究者達が一連の技術情報をNUPに持ち出して発明したのがPBOであったからだ。(本人はかつて皇国と呼ばれた地に残ったままだった)


 彼は一般的ではないポリリン酸溶液重縮合法によるPBIの合成にも成功しており、ポリリン酸法における第一人者であったため、公開された情報から推測を立ててPBOの量産化にこぎ着けるための重要な技法や工程を見出していった。


 最終的にNUP側は製造を断念した一方、彼の助力もあり東側では製品化に見事成功するに至るのである。


 その後も当該人物は本来の未来では東側における耐熱スーパー繊維研究者の権威の一人として名を馳せ、NUPなどが新規開発した耐熱スーパー繊維について、公開された情報をもとに即座に類似、あるいは同一の製品を即座に合成することが出来る程のその道のスペシャリストとして、あの血も涙もないとされるヤクチアですら人材と研究費の投入を惜しまなかったことが記憶として俺の頭の中に刻まれている。


 一方の"可能性の未来"では同一の人物から助言を受けつつも、皇国企業側の独力によって製品化に目途をつけて市場供給するに至っている。


 どちらの世界も皇国を中心に製造されて運用されている化学繊維であるが……どちらの世界でも西側では重用されていないという点では共通する。


 一般的な防火服の場合、用いられる化学繊維はPBIと呼ばれるポリベンゾイミダゾールが主だ。


 PBOことポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールを用いているのはどちらの未来世界でも皇国を中心とした一部国家のみ。


 ではどうしてこのような状況となっているかというと、両者ともに極めて高い防炎性や断熱性を持つもののの、PBOには被服に用いるにあたって無視できない弱点があるからである。


 元々PBOの開発にはPBIが深くかかわっている。

 宇宙時代の到来と共に見出されたPBI。


 この優れた化学繊維及び物質はすぐさま世界に広がり防火服等に用いられるようになったわけだが、さらなる高性能化を求められ、研究が続けられていたのだ。(なお、PBI誕生には前述のポリリン酸溶液重縮合法が大いに関係しており、発明されたのはNUP及びNUP人によるものであるが、ともすると先に生まれたのはPBOだったかもしれないと言われることがある)


 理由はPBIそのものの強度がその時点で最も強度が高いとされていたケブラーなどのアラミド繊維に劣っていたため。


 技術者が求める真の化学繊維というのは、PBIの特性を持ちつつも化学繊維の強度が防弾などに用いられるアラミド繊維と並ぶ事だった。


 そんな素材を単一で用いて構成される被服こそが、次の世紀を象徴する衣服となると夢見て。


 耐熱性を持ちながらも炭素繊維並の強度を持つ夢の素材……


 PBOはまさにそのような未来のSF作品の戦闘服やファンタジー世界のロールプレイングゲームの終盤の頃に出てくる高い防御数値を誇る鎧ではないただの衣服を現実に生み出さんがために研究の末に誕生したものである。


 PBOが発表された当時、その衝撃は世界中に広がった。


 各地に試料として提出されたPBOの強度は当時最先端の炭素繊維と並んでおり、それでいてPBIよりも高い耐熱温度だったからだ。


 対炎性についてもPBIのLOI値が約42であるところ、68にも達していた。


 このLOI値とは何なのかというと限界酸素指数と呼ばれるもので、燃焼に必要な酸素濃度の最小値を示すもの。


 一般的に地球の大気中の酸素濃度は20%前後のため、20を下回る素材でなければ大気中において突然燃焼することはないが、20を下回る素材や元素などは自己着火点となる温度に達すると激しく燃焼する。


 燃え広がりやすいとも言い換えていい。

 逆に20を大きく上回る素材は極めて燃焼しづらいというわけだ。


 例えば未来のコンバットブーツのソールに用いられるシリカを含有させた合成ゴムは40~45程あり、比較的高い数値となっている。


 そして現実世界では60を超えてくる素材は極めて限られており、化学繊維の中では60前後だと他にはフェノール樹脂繊維ぐらいしかない。(といっても燃えにくいだけでフェノール樹脂は耐熱温度が170度前後しかなく耐熱性能で大きく劣る)


 なお現実の世界にはセラミック繊維やガラス繊維が100の数値を持っており、これらは完全不燃と呼ばれる、燃焼……すなわち熱による急激な酸化を一切生じさせない繊維であり、一連の素材も防火用途には用いられている。


 しかしこれらは鞄等に用いる事はできても脆くて折り曲げに弱く衝撃にも弱いため、防火服として使えるものではなかった。


 完全不燃とは言えないものの、LOI値68もある高強度化学繊維というのはまさに夢のような産物だったのだ。


 こんなもの存在していいのかなんて言われたものの……それは束の間の出来事だった。


 合成されたPBOは紫外線に極めて弱く、加水分解しやすい特性があり、対候性に難を抱えていてそのままではどんどん性能が劣化していく。


 日光に晒した状態では3か月もすれば強度が作製時の1/3ともなり、合わせて耐炎性や耐熱性も顕著な低下が見られるようになっていく。


 PBIが一定以上の対候性を持ち、性能低下が緩やかなのと比較すると、工業製品としての完成度は高いと言えなかったのである。


 それでも本来の未来で東側がPBOを用いたのは、原材料がPBIの多硫酸より調達しやすく安価で市場に大量供給されていたリン酸であった事と、改良するか工夫すれば性能低下を抑え込んで使いこなせると考えたら。


 実際、PBOは本来の未来でも自転車競技における競技用自転車のホイールスポークに用いられていたりなど、消耗品として最初から割り切れば圧倒的な性能なのは間違いなかったし、釣り糸として使われている事例もある。


 他にも建材としての利用や高高度気球のフレーム替わりとしての利用など、用途は幅広い。


 特に釣り糸では前述の炭素残渣が保護層となって対候性をも引き上げる特性を利用し、あえて火であらかじめ焙ったりなどして劣化を食い止めるというような形で製品化されていたりする。(PBO製の釣り糸が総じてどれも黒いのは表層を炭素化させているため)


 何らかの表面処理加工を施せば価格と性能が釣り合った優秀なスーパー繊維であることは間違いない。


 現状の皇国を鑑みた場合、多硫酸の生産量は極めて少なく、大量生産を行えるまでには時間と莫大な費用が必要となる。


 一方のリン酸は農業用途や工業用用途として幅広く需要があり、国内の鉱山から産出するリン鉱石などから大量に採取・精製できることから安価で市場に大量供給されている。


 なら選択肢なんてない。

 他の未来世界で皇国が歩んだ道と同じ道を辿るだけだ。


 すなわち、目を背けられない欠点がある一方、原材料が安価で生産ラインさえ組めば大量生産が望めるPBOでもって防火服を作り、軍用、民間用問わず量産して価格を引き下げ、必要となる場所に持ち込む。


 劣化しやすい弱点には表面処理を施して対策を講じつつ、消費期限を定めて。


 災害大国であるこの国においては、圧倒的性能を誇る防火服は早い段階で量産化に目途をつけたい。


 しかしそうなると、未来の事情を知る者ならこうツッコミを入れてくるかもしれない。


「本来の未来でも存在したスーパー繊維なら、なぜ今まで実用化を遅らせてきたのか……」――と。


 それにはPBIとPBOに潜む、製造法にある存在を仄めかす極めて重要な技術情報が隠されているからである。


 双方の繊維……実は製造するにあたり一旦液晶化してから繊維として紡糸する必要性があるのだ。

 そもそもが、双方の繊維の研究開発の裏には液晶ディスプレイ開発が相互関与している。


 液晶。

 液体のごとき流動性を持ちながらも分子構造が一定である物質を一般的に示す言葉である。


 すでに半世紀以上前から発見されており、およそ20年ほど前から応用研究がはじまっているもの。

 このような物質があることは軍の技術者の間でも相応に知られている。


 といっても一体何の役に立つんだというような状況で、工業製品としては2つの存在として昇華する。


 それが液晶ディスプレイと液晶から紡糸して製造されるスーパー繊維なわけである。


 双方においては特定の物質、素材における液晶段階での特性の研究は不可欠であり、スーパー繊維研究開発では常に液晶ディスプレイのために開発された新たな液晶の技術情報を気にかけていたし、液晶ディスプレイ開発に携わる人間も液晶から生み出されるスーパー繊維における、原材料の液晶状態の製造法や特性は常々気にかけていた。


 特にスーパー繊維は液晶ディスプレイ発表後から一気に研究開発費が増大して製品化への道筋がついたとされる企業エピソードが本来の未来には存在し……


 PBOの存在を探って液晶に辿り着いた場合、液晶ディスプレイにも感づかれて早い段階で液晶ディスプレイが第三国にて発表されるのを避けたかったのである。


 何を隠そう、液晶ディスプレイを最初に見出したのはNUPの研究者。

 しかも当初から軍用用途しての活躍が期待され、研究者はDARPAに所属してしまうぐらいだ。


 彼は現時点においてまだ生まれてから間もないが、NUPは液晶という存在に大きな期待を寄せており、現時点においてもエアロゲル共々かなりの研究費を注いで熱心に研究している状況下。


 本来の未来などではその応用研究の結果生まれた先にあるものが液晶から紡糸して製造されるPBIなどの化学繊維だったわけである。(かの有名なケブラーも液晶からの紡糸で製造される)


 すなわち、PBOをNUPと敵対するかもしれない段階で開発し、彼らが何らかの方法で技術解析に成功した場合、ケブラーやPBIを筆頭としたスーパー繊維の開発が加速し、さらには液晶ディスプレイの早期開発にまで目途をつけかねないという大きなリスクがあった。


 他にも皇国の化学繊維産業がようやく花開きつつある状況である事も足踏みしていた理由だ。


 技術水準が低すぎて生産ラインもまともにないような状況では、経営者は他社や第三国に頼ろうとすることがある。


 共同開発や技術者の召喚を行われた場合、そこから情報が洩れて大事に至る。

 自力でどうにかできそうな段階にまで至ってくれなければならなかったわけだ。(特にPBOに関して言えば現段階で製品化するにあたっては相当な技術理解が必要となる)


 超高分子量ポリエチレン繊維の製造に成功して以降、繊維メーカーは勢いづいている。

 出資者も増え、企業自体が大規模に生産ラインを整えつつある今だからこそ、PBOにも手が出せるというもの。


 PBOだけじゃない。


 本防火服にはPBOの弱点を補完し、長所を最大限に引き伸ばすもう1つ別のアラミド繊維が必要となるため、そちらも合わせて導入する。


 この繊維は未来の航空機やレース用車両のタイヤコードにも使われる、極めて優秀な繊維だ。

 応用用途としても期待される汎用性の高い存在。


 誕生の経緯は他でもない、アラミド繊維の代表格であるケブラーにある。


 アラミド繊維としてその名を歴史に刻むケブラーの誕生後、ケブラーを開発したメーカーは関連する技術を特許出願し、権利化して第三者が製造できないよう対策を講じた。


 結果、液晶状態から作製される一部のアラミド繊維においてはライセンス購入を行わない限り当該企業だけが製造を許される独占状態となってしまい、ケブラーは不動の地位を獲得するに至る。


 当時は冷戦も落ち着きを見せ始めた時代で、世界各地で西、東の境も無くならんばかりに国交が結ばれ、交易が盛んとなる時勢となっていた。


 世界各国においてガチガチに特許を固められた場合、特許を無視して製造を行おうものなら東側といえど経済制裁を食らって大変な事になるので、迂闊な事はできない状況下だったのである。


 つまり本来の未来においても可能性の未来においても特許を無視しての製造は不可能だったということだ。


 そこに待ったをかけたのが本アラミド繊維である。

 なにしろスーパー繊維市場におけるケブラーの独占体制を完全に崩壊させた存在だ。


 崩壊させたばかりか将来的にはアラミド繊維のシェアにおいてケブラーと世界を二分する極めて高いシェア率を誇る存在ですらある。


 仮に擬人化しようものなら面構えが違う。


 そんな気迫に満ち溢れたアラミド繊維は本来の未来と可能性の未来双方ともに同じ企業が開発し、本来の未来では名称が名付けられなかったものの、可能性の未来では"テクローラ"の名称で販売されているとか。


 なお誕生の経緯として双方の世界において類似した製法によって製造される前身となるメタ系アラミドの耐熱繊維が存在した事も無視できない。(強度の問題からスーパー繊維という扱いは受けていない)


 本パラ系アラミド繊維はこの時に培った知見とノウハウを最大限に活用して誕生したものであり、このパラ系アラミド繊維の最大の強みはケブラーに用いられる一連の特許化された製造法を一切用いないばかりか、液晶紡糸すら行わず高温延伸と既に枯れた技術となっている湿式紡糸に若干の改良を施した半乾湿式紡糸で製造される点。


 高額なライセンス料を支払わない限り、登録されて権利が切れるまで手を出せない技術の全てを回避して製造可能であり、ケブラーに匹敵する強度を持ちながら(引張強度ではケブラーの92%ほどの性能)、LOI値こそ30程度である一方で耐熱性能では最大580度まで耐えられる高い耐熱性を持つ。(ケブラーは300度前後)


 特に耐摩耗性と疲労特性に長所を持ち、過酷な環境で強い負荷が何度かかっても耐久性を損なわないという点ではケブラーを凌駕し、未来のパラシュート用コードや海底ケーブルのスチールワイヤーの代替に用いられるなど、高い疲労強度が必要な所で大変よく用いられている。


 他の強みとして加水分解への高い耐性があることも見過ごせない。


 アラミド繊維の宿命がゆえに紫外線には弱いものの、PBOの弱点の多くを補完できるため、一般的に防火服の場合はこの繊維と組み合わせて製造することが多い。(前述のメタ系アラミド繊維と複合するケースも多い)


 それを踏襲した形で今回も試作品を作り出した。


 その試作品たる防火服の詳細はこうだ――

X開設中

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