番外編22:上級曹長の名銃コラム Type5編(中編)
長いので前編、中編、後編に分けました。
――例えば強装弾に纏わるエピソードとしてこんなものが存在する。
戦場だと何らかの理由によりマガジンが落ちている事はままある。
ある第三帝国人がType-5のマガジンを拾った際、マガジンから9mm弾を取り出して自らのP-38に装填した所、戦場での射撃時に強装弾の火薬の圧力に耐えられずにP-38のスライドが吹き飛び、吹き飛んだスライドが顔面を直撃して気絶してしまい、結果捕虜となってしまった……なんて話が。
元々P-38は無理やり高速で連射しようとすると通常装薬の弾丸でもスライドを固定する金具が外れてスライドが弾き飛んでしまう欠点があったが、強装弾だと吹き飛ぶリスクが大幅に増大したのだ。(特に皇国が生産した9mm弾丸は弾頭重量すら増加させていてスライドへの負荷はより増大する傾向にあった)
「Type5はマガジン状態になってすら敵を倒すんだ」――なんて冗談半分で言われる逸話の元ネタである。
このエピソードが生まれた頃、Type5が強装弾を使用しているという事実はまだ浸透していなかった。
きっとその者も「なんだ9mmか! ならばせっかくだし使わせていただこう」――ぐらいの認識であった事だろう。
しかし同様の事故が多発した結果、第三帝国では改めて使用禁止の通達を出す事となり……第三帝国側は戦場に落ちている9mm弾を安易に拳銃で使えなくなってしまったという。
サブマシンガンとしてならば問題ないため、拳銃以外での使用は許可されていたが……その頃、第三帝国にはStGが既に普及していてサブマシンガンの生産が滞っており、9mm弾の使い道は主として拳銃に需要が集中していた。
このマイナス効果は相当なものがあったらしく、市街地戦での戦闘継続力に相応の影響を及ぼしたと統計学等に精通する歴史研究家などが検証して発表するほど。
実際問題自分の銃が壊れるかもしれないと考えると安易に拾えなくなるのは当然で、そして敵は関係ないわけだから、そのまま放置したら敵に塩を送る形で戦術的に優位な状況に立たせてしまう。
つまりType5は次元を超越した高性能によってゲームで言うデバフ効果を敵に与える事が可能で、そんなスキルを現実世界でありながら持っていたという事になる。
我々も教訓として覚えておかねばならないが、工業製品の性能差が時に戦場での戦力の決定的な差を生じさせることがあるということだ。
抑止力に類似する見えないパワーというものである。
また、敵だけでなく味方側に関しても強装弾のエピソードがある。
私の祖国であるNUPは戦中を通して当時様々な国や組織に物資支援を行っていた。
この支援先には第三帝国内で活動するレジスタンス組織もおり、自国民でありながらそれまでの政策に納得できない者などが所属。
彼らはその多くが自国の銃器を用いたため、拳銃弾は9mmを使用しているというのがNUPでの認識だった。
ある日の事、そのレジスタンス組織から弾薬箱にメモが添えられて突き返された事があったという。
そのメモには王立語で「火薬量が足りません。増やしてください」――と一言だけ添えてあった。
メモを見て驚いた担当者は装薬量を誤って減装薬状態としてしまったと考え、すぐさま戦場で活動している工兵のもとに向かい確認してみると……返却された9mm弾の装薬量に特に問題は無かったのである。
その場にあったとされる適当な9mm仕様の拳銃で射撃してまでテストしたところ、特に飛距離等が短いというような問題もなかった。
当然にして担当者はすぐにメモの意図に気づく。
増やせとはすなわち強装弾にしろという意味であると。
どうやら何らかの手段で該当の組織はType5を入手しており、それで武装していたらしい。
ゆえに通常の拳銃向けの装薬量だとストッピングパワーが足りないので強装化を要求したわけである。
先程のデバフスキルの件を考えると、あえて強装弾仕様にした方が敵が使ってこないし、万が一使ってきてもそれが原因で自爆するかもしれないから要求するだけの意義は大きい。
結局返品された弾丸は強装弾として改めて火薬を増やされて再び彼らのもとに送られたというが、過酷な戦場の中で人々は気づいていたという事である。
ゆえに敵も味方もType5が一度落ちていたら即座に拾っていった。
その手のエピソードには事欠かず、かつ戦場で撮影された写真を見ても敵が鹵獲して持っていただけでなく自衛用として市民が保有している事例も含めて保持しているケースが多々ある様子が伺える。
その事実に基づいて映画作品でも皇国軍人以外がType5を何らかの形で入手するシーンが描かれる事が少なくない。
例えば私が大好きな「ベルリン市民に告ぐ!」では、こんなやり取りがある。
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「ジャック見ろ! あの箱! 皇国の文字だ!」
「本当だ。どうやら銃器か何かを詰めた木箱のようだな」
「ああ……おっと、こいつぁとんだ拾い物だ。Type-5だ。10挺も入ってやがる。ジャック! マガジンもあるぞ!」
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このベルリン市民に告ぐは実際に従軍経験のある人間が書き記した伝記であり、実話に基づいているという。
彼は私と同じNUP出身の人間であるが、戦場においてはより多く撃てるというアドバンテージは大きく、配給されている1911A1はストッピングパワーこそ優れるが、装弾数の結果、より優位な状況に自分を置くことが出来るType5の方を求めるNUP軍人は少なからずいたことを述懐している。
サイドアームとして見た場合、7+1発の1911A1に対して2倍以上も撃てるわけだから、1発では倒せないといっても2発や3発ならどうだってな話になってくるらしく、Type-5の方が安心感があったという。(連射性能の影響もあった事だろう)
もちろんこれは敵も使ってくる関係上、7+1で戦っていると厳しいからという事も合わさっての話である。
先程のシーンは劇中前半の描写。
ある地点からある地点まで移動するシークエンスの最中に挟み込まれている。
主人公達の歩兵部隊はキャンプまであと少しというところで、つい先ほどまで戦闘が行われたと思わしき区域を通過する。
その区域内で、敵に倒されたと思われるM4戦車の付近に砲弾の衝撃か何かで土を被って半分埋まったような状態の木箱があり、取り出してみると中にType5が入ってたというシーンだ。
主人公達はそれを前線のキャンプまで持ち込み、ポーカーの景品としながら取り合うシーンがこの後に続く。(小隊の人数は15人であったため数が足りなかったのだ)
ポーカーに勝利した結果Type5は主人公の愛銃となるが、このType5は要所要所で活躍する他、物語上で主人公の心理描写を行う際に度々小道具として登場するのである。
銃を磨いたり、落ちている9mmを拾ってマガジンに装填したりする描写の裏でモノローグが展開され、軍人というのが信頼性の高い武装に心を寄せていく心理を綿密に描いている。
Type5がここまで名脇役と化している映画も他にないだろう。
戦争物だけではない。
Type5はNUPの様々な映画の主人公達が扱う拳銃でもある。
対テロリストを描くアクション物の名作映画であるハードデイでは、主人公のジョン・レーンマック警部補の愛銃としてType5が出てくる。
この銃が選ばれた理由は当時劇中で彼が所属するニューヨーク市警のテロリスト対策特殊部隊にType5が採用されていた事と、レーンマック警部補の性格を描写するにあたって.44マグナムみたいな銃は解釈違いであると監督や演出家らに判断されたため。
撃って当たる、当たれば敵を確実に倒せる、バカスカ撃てて、かつ正義感の強い者が好みそう。
この4つの要素がレーンマック警部補の人間性のイメージと合致したからだという。
実際にはレーンマック警部補が扱うまではどちらかというと生真面目な人間が装備している事が多かった。
例えばハードデイの1年前に公開されたコップトロンという映画では冒頭のシーンでType5の姿が確認できる。
この作品は殉職した警察官が一部の体内組織を取り出されてロボット化され再び警察官として蘇るものであるのだが、その殉職したアレク巡査の愛銃がType5だ。
劇中では冒頭の20分程度のシーンでガンスピンをする姿や二丁用いて射撃するシーンが描写される。
このガンスピンは彼がロボット化された後に同一人物であることを示す伏線ともなっている一方、リボルバーではなく自動拳銃をガンスピンするにあたって暴発しないイメージがある事や銃のイメージが真面目・勤勉・正義感を現わす点などからType5が選ばれたという。(なお仕様上チャンバーに弾丸が入っていたら暴発の危険性がある他、劇中の様子を見る限りガンスピン中はチャンバーに弾丸が入っていない様子で直後の射撃戦のシークエンス時に事前にスライドを引いてから射撃する演出がなされている)
最終的にType5はアレク巡査が殉職後、彼とパートナーを組まされた女性警官の手に渡る事となるが、さほど目立たたないものの以降続編の3作目で彼女が殉職するまでType5は登場し続け、彼女が殉職した後にコップトロンとなった主人公が遺品のType5に触れてフラッシュバックを起こし……
このフラッシュバックから完全に人間としての人格が目覚めて彼が戦う上でそれまで最大の壁として立ちはだかっていた、製造メーカーが施した行動を封じる4つ目の秘密指令を消去するに至るなど重要な役割を果たしている。(これは本拳銃が歴史上、様々な地域で抵抗及び解放の象徴となったことから演出されたと脚本家が述懐している)
このようにType5はNUP内でも広く受け入れられており、戦後においてはハイパワーと共に9×19mm弾仕様の拳銃が個人や組織に普及する原動力ともなった。
それではここから国内外でのType5の状況を改めて掘り下げていこう。
まず製造国国内での状況であるが、Type5は引き続き量産が続けられ各地への販売網を築いていく。
それに合わせ、国内では新たに再編する形で組織された警察組織の標準装備として採用された。
これは現代から考えると驚くべきことだ。
当時の警察官が所有する拳銃の主流は我が国も含めて小型拳銃が当たり前で、携帯性に優れ、万が一の時の護身用としての需要を満たすような最低限の威力のものが好まれていた。
そのため9mm弾ですら過剰威力と考えられ、当時の世界各国においても皇国の治安状況に対して過剰武装気味であった事から大変驚かれたとされる。(しかも当時においては装弾数が17+1発なんて多すぎるどころの騒ぎではない)
皇国が警察組織の標準として採用した背景にはType5の性能もさることながら、大量生産してコストを引き下げる量産効果を狙っていたからとされる。(調達価格も国外から輸入するより安価だったとか)
今後も陸軍や海軍内で運用するにあたって相応に安価で調達できるType5をさらに安価な状態として安定化させたかったわけだ。
当時の警察組織も過剰性能ゆえに多少の抵抗はあったとされるものの、17発入るマガジンだからといって常に17発装填する必要性も無い事(ついでに言えば強装弾である必要性もない)、拳銃の大きさは十二分にコンパクトであり携帯性については保証されること。
また、将来を鑑みるとまだ残存して裏社会で活動していたパルチザンによる破壊活動やテロ活動等が懸念されることから、万が一の際に命中率に優れ、かつ性能が保証されているType5を訓練を通して日常的に扱う機会を設けて銃に慣れさせておくことは大きなメリットに繋がると考えられ、世界に先駆けて強力な自動拳銃を標準装備する事となった。
この事は後に警察側における本格的な対テロリスト向けの特殊部隊を編成する際に大きく役立ったとされ、陸軍との共同訓練においても混乱が生じなくなり多大なる利点を生じさせたとされる。
テロリスト対策特殊部隊は陸軍側も保有している皇国であるが、事件の規模等から双方が臨機応変に現場に投入され、時に共同して活動することもあることから、平時より共同訓練などが行われており……
武装を共通化することは訓練時間の短縮や運用時に制約が生じず武器弾丸の融通も可能である事から、現在においても皇国では警察組織と軍組織において武装の共通化が図られていて、その流れを呼び起こした橋渡し役こそがType5だったわけである。
警察組織には軍を除隊して中途で採用された者も数多く所属するため、早い段階から即戦力として活躍が見込まれると言う点を鑑みても合理的な判断と言えよう。
なお当然にしてこれらの実情は皇国の映像作品にも落とし込まれており、戦後に放映された古い皇国の刑事ドラマや刑事物のアクション映画等でもType5以外の拳銃を刑事らが使用しているシーンを見る事が皆無であるぐらいに登場機会は多い。
皇国の漫画作品においても単行本で200巻以上連載された警察官を主人公としたギャグマンガの主人公が携帯していて、あえて他の銃を描こうという勇気を持つことすら難しいほど普及しているのだ。
なおこのギャグマンガの主人公は劇中でType5はその素性の良さからギャグ描写として扱う事が難しいことを作中内でメタ的に発言したことがあり、作者曰くギャグ要素が大変強い特殊刑事がこぞって別の拳銃を愛銃としている理由もそこにあるとしている。
射撃戦がある回において主人公が別の拳銃を使うのもType5のイメージによるものとされ、主人公はまだ時代が寛容だった連載初期の頃にしかType5を射撃した事がなく、上司に促されてメンテだけは真面目に行うためメンテナンスする姿ばかりが描写されているのは有名である。
本コラムのようにType5そのものがどういう拳銃なのか取り扱った回もあり、連載初期に市民に向けて発砲する姿を描いたところお偉いさんから厳重注意に近しいクレームが来たことなどを明かしている。(後に過去にタイムワープした回や過去の主人公を呼び出した時の回にはなんと所持する拳銃が回転式小型拳銃に差し換えられていた)
国外だけでなく、国内でもType5がいかに悪いイメージが無いのか現すエピソードだ。
次に国外の状況であるが、国外での普及については戦後すぐにおいては東亜やユーグの一部国家で進んでいった一方、多くの国が即座に採用していくというような事はなかった。
理由としては他の武装の更新に力が注がれて後回しにされた事や、サイドアームたる拳銃はどうあるべきかの検討が進んでおらずType5を積極的に導入するかについて賛否が分かれたため。
確かにType5自体は信頼性の高い銃であったのは間違いないものの、当時の諸外国の軍組織においてはスライドを今引いた状態としているのかそうでないのかが分かりにくいストライカー方式について軍用拳銃としてどうなのかという意見はあった。(運用法次第であるが運用法を見直すことがどうなのかが問われた時代だった)
またType5の重さの部分についてもやはり欠点とみなされており、多少装弾数が減るとしてもType5の長所を持つハンマー式の拳銃を開発すべきではないかという意見も多かったとされる。
といってもそんな銃を開発するのは容易ではなく、まず産声を上げたのがType5の4年後に登場したP210である。
本拳銃は元々7.65mmパラベラム弾仕様として開発されていたものの、そのポテンシャルの高さに気づいたシュヴィーツの企業によって権利が買い取られてさらなる改良が進められていた最中、Type5の登場によって設計が1から見直され、9mm弾仕様として再設計されて世に送り出されたというエピソードを持つ。
Type5のリバースエンジニアリングによって16+1発仕様のマガジンを持つ本拳銃は残念ながら強装弾仕様でなかった上にシングルアクション仕様であったものの、命中精度が高くType5に匹敵する拳銃であったため本国であるシュヴィーツを筆頭に一部のユーグの国々が採用した。
しかしながらType5と比較すると非常に高価であった事から思ったより導入が進まず、26年後に本拳銃をベースに新たにダブルアクション化されたP220が開発され、この頃にもなるとType5のリバースエンジニアリングが進んだ事と皇国がフラットスライドの情報を同盟国に共有したことからフラットスライドを保有するようになり、P220ではついにインナーフレーム構造こそ採用されなかったもののモジュラー構造によって多種多様な弾丸に対応できるように至る。(ついでに強装弾対応も果たした)
このP220はスチールフレームであったが、それなりに重量があり、この欠点を解消するためにアルミフレームとして軽量化したものがP226である。
本拳銃はType5と比較して高価であったものの強装弾対応でありながら軽量で、かつ堅牢で耐久性に優れていた事からライバル銃の1つとして名乗りを上げ、同時期には他にも多数の9mm弾仕様の高性能な軍用拳銃が続々と登場して一連のグループはワンダーナインと呼称されるようになる。(このワンダーナインには30年以上も前に登場したType5も含まれている)
ワンダーナインと言えばCz75も無視できないな。
Cz75はバルカン半島のとある国の名銃だ。
ハンマー方式の拳銃では1つの到達点に至ったとされる拳銃であり、Type5が持ち得ていた長所の全てを落とし込んだとも言うべき拳銃で、フラットスライド、下部ピカティニーレールなど既に当時要求されていた基本仕様はすべて満たしていた。
Cz75は高い工作精度で削り出された部品によって優れた命中精度を誇り、17+1仕様のマガジンも相まってアクション映画では主人公またはカリスマ性に優れる敵のボスが愛銃としている事が多い。
ワンダーナインが登場した頃には既に9mm弾の性能も世界的に認知されるに至り、我が国の機関や組織などで急速に45ACP弾の姿が見られなくなっていく。
そしてこの頃なのだ。
Type5が世界各国の警察・軍組織に相次いで採用されるようになってきたのは。
理由は単純。
先程私はP226についてType5より高価であると述べたが、この価格が問題となった。
実はワンダーナインの各拳銃については、性能こそ申し分ないものの価格の面においてType5に全く太刀打ちできていなかったのである。
結果、「調達価格考えたらType5でよくないか?」――となってしまい、せっかく自国の技術の粋を駆使して開発した拳銃達は、限定的な採用に留まってしまったのである。
警察や軍組織においては調達数の方が重要。
そのためには予算編成を行わねばならないが、予算編成においては編成時の審議においてそれなりの理由が求められる。
そうなると性能と価格が吊り合っているType5が引き合いに出された時の説得は難しく、一部の組織では逆にType5を積極的に採用するようになっている事から余計に説得難易度の高さに拍車がかかり……Type5以外を導入したい組織や機関においては言い負かされる形で導入する事になってしまうわけだ。
既にこの頃にもなると皇国は工業大国として名を馳せており、戦中とは比較にならない精度で様々な製品を大量生産できるようになっていたことから、Type5も性能が底上げされていて……
命中率については正直ワンダーナインの他の拳銃と遜色が無かった。
ワンダーナインの拳銃の多くは15ヤード(13m)でゴルフボール大、25ヤード(23m)で人間の頭部と同じぐらいの大きさの範囲に集弾する命中率の高さを持つ。
Type5もストライカー方式の拳銃の長所によってそのクラスの命中精度は余裕で確保していて、精度の良いものだと15ヤードではワンホールも可能であった。
となると他の銃の1/4ともなる価格の安さが際立つのだ。
しかもこの頃になるとType5にはアルミフレームのものが登場しており、重量の問題点もクリアしつつあった。
インナーフレーム構造を持つType5は恐ろしい事にフレーム素材そのものを別のものとしても内部の機構をそのまま維持できるという長所があり、設計者は当初からそれが可能と述べていたが、実現して市場に投入された形である。
なおこの第一世代のアルミフレームはスチールフレームよりやや大柄となっていて国内評価は高くないものの、大柄となった事でむしろNUPでは手に馴染みやすいという事から導入が進んだりしている。
レーンマック警部補の所有するモデルも2作目ではアルミフレームのものとなっており、グリップフレームだけ入れ替えたことが劇中で仄めかされるのだが、いかにアルミフレームのものがNUP内で人気が出たかということを現わしている。
つまりワンダーナインの拳銃達は結果的にType5の国外普及の手助けをしてしまったという事なのだ。
今を思えばハンマー方式に拘ったことが仇となったと言えるが、一連のワンダーナインの拳銃の性能は決して低くない。
そしてこのワンダーナインの反省として生まれた次の世代の拳銃こそがType5の真のライバルと言えるのである。
さらにその真のライバル達にすら追随してみせたのがまたtype5であるということも解説しなくてはならないだろうな。
ワンダーナインの拳銃達が市場に投入されて7年~8年程が経過したある年、市場にとある拳銃が投入される。
G17及びG19だ。
本拳銃はまさにType5の真のライバルともいえる存在で、史上初のポリマーフレームを採用しながらもストライカー方式となっており、全ての部分でType5を凌駕せんとばかりに意気込んだその仕様に界隈は震撼した。
マニュアルセーフティ等の一切を排除して部品点数を削減。
バレルの位置をトリガーに近づけ、マズルジャンプを抑制しつつ重心点を下げて命中率を確保。
Type5の持つ長所を全て有しながらも重量は約半分。
唯一の違いはType5がファーストステージ撃発型であるのに対し、セカンドステージ撃発型であること。
本拳銃はまさにType5に純粋に対抗可能な拳銃で、その性能の高さからすぐさま人気を博して市場を席巻することとなる。
本拳銃の成功はストライカー方式の優位性を証明して世界の軍用拳銃がストライカー方式のものに移行するきっかけとなった他、改めてType5が軍用拳銃として高い完成度を持つことが再確認されることとなるのだ。
だが、Type5は簡単にストライカー拳銃の王座を譲るような事はしなかったのである――