第172話:航空技術者は歩兵戦闘の鍵を握る存在の運命を託される
2601年8月中旬。
NUPより実在した未来の技術を持ち帰った翌日。
俺は羽田にて帰国後すぐに参謀本部へと向かうよう促されたものの……到着時にはすでに夜も更けていてすでに西条が帰宅した後だったため、羽田で一泊した後に朝方より参謀本部へと訪れたのであった。
◇
「――すでに報告は四井経由にて受けている。入れ違いになったようだな」
「すみません……」
「気にするな。四井より報告書を受け取ったのはお前を乗せた飛行機が羽田に着く2日も前だ。恐らく超特急で書類だけ空輸してきたのだろう。そもそも呼び出したのは別件だしな。……それはそれとして、これまた随分と恐ろしい代物が秘匿されていたものだな」
別件?
今、妙なフレーズを聞いた。
西条が特にこちらがやや遅れて報告に訪れた事に憤りなどを感じている様子はなかったが、どうやら何か逼迫した状況があるようにも感じる。
すぐさま本題の別件に入りたいとばかりに着席しながらも貧乏ゆすりがごとく踵を上下させて足踏みしている。
しかしながらエポキシ樹脂に関する情報確認はしておきたい様子でもあった。
「……資料をお読みになられたのですか?」
「うむ。合成樹脂の進化については事前に渡されたお前の資料からもある程度把握していたつもりだが、その進化の中でもとりわけ影響度合いが大きい存在が既に量産実用段階にまで至っていたというのは素直に驚くばかり。すでに四井はあちらで本国のG.Iとの交渉も開始しているそうだが、G.IのCEOも椅子からひっくり返らんほどに驚いた様子を示していたと聞く。彼らにとっても瓢箪から駒だった様子だ。無論、こちらの働きかけに即座に了承を示したとのこと」
「それは重畳です。これでG.I内でも生産できれば……」
「残念ながらライセンス生産についてシバ社は首を縦に振らなかったようだ。向井が昨日の段階で私の下に来て報告してきた。原則としてライセンス契約を結ぶ予定は一切無いとのことだ」
「そうですか……残念です」
そもそもシバ社は発明者が発明した時点において目をかけていて、このもしかしたら凄い発明かもしれない一方で世紀の与太話かもしれない夢の新素材について莫大な予算をかけて量産にこぎつけているわけだから、そう簡単に譲るわけがないか……
もし俺が経営者の立場でも同じ意思を示したことだろう。
「安心しろ。支社という形ならば問題無いということから、四井やG.Iなどの力も借りて我が国とNUP内で生産できるよう大規模に出資する方向性で交渉を詰めている状況だ」
「……何とか首は繋がりましたね」
本当に首の皮一枚で繋がったような気分だ。
皇国内に支社を設立してくれるなら全く手に入らない状況には陥らない。
もうすでにそれを前提に設計を見直し始めていたからな……後戻りはしたくなかった。
本当に助かった。
シバ社には感謝しかない。
「それでな、お前が気にしているという納入価格についてだが……向井は利用用途が多岐に渡ることから、極めて価値が高く算定不能で天文学的な要求額となるかもしれないライセンス契約よりも、生産された商品を卸してもらう方が結果的に安上がりかもしれないと述べていたぞ」
「生産量にもよりますね。個人的には2610年代の相場を把握しているので現状の1/8ほどに下がってくれるといいのですけれども」
「国内生産できれば結果的に下がるはずだ。すでにシバ社の社員が用地の選定などのために皇国に向かってきているという。彼らは神戸港や舞鶴港から近い場所に拠点を構えようとしているらしい。豊岡や福知山周辺……丹波あたりだろうか。その周辺で調査を行う予定があるそうだ」
「横浜港ではなく神戸港なのですか? なぜ関西圏に……」
「現状でも皇国へ向けた輸出の貨物船の往来をそちらで行っており、手続きその他において捗る上に長年の取引から信頼もあるからとのことだ。それに、あの周辺には手先が器用な者も多い。私は悪い話だとは思わん」
「山間なので交通の便においていささか不便が生ずるような気がします」
「だが空爆には強い。それに、工場地帯と比較して機密確保もしやすいだろうしな。シバ社にとっては総合的な判断の上で優れた地域であると認識されたのだろう」
なるほど。
まあ運ぶにあたって最悪は交通網を拡充するなどいろいろ考えればいいわけだし、今はヘリもあるか……
しかし神戸港周辺の工業地帯ではなくあえて山間部を選ぶというのも、周囲の脅威に長年苦しめられてきたシュビーツらしい。
丹波周辺は確かに本来の未来においても空爆被害は殆ど無かった。
高低差の激しい山間にあって航空機による正確な爆撃照準が難しかったためだ。
ゆえに戦略方針としては正しいと言える。
とはいえ、現状では比較的安全圏にいるはずの皇国でですら万が一を想定して行動するのか……
そういう姿勢は見習わないといけないかもしれない。
さて、大体状況はわかった。
もう十分だろう。
本題に入ろう。
一体何が起こったというのだろう。
「首相……それで、別件というのは?」
その俺の言葉に無言で立ち上がった西条は立ち上がってゆっくりと歩き、執務室の窓に顔を向ける。
こちらに向けて話しにくい内容のようだった。
「2597年からというもの……我々はお前の情報を頼りに未来の不安に立ち向かうべく邁進してきた。だが、どうやら少々やりすぎてしまったらしい。合理的な手法でもって整えた戦闘力。それが裏目に出ているやもしれん」
「どういうことですか?」
「2つの脅威が間近に迫ってきている可能性がある。そういう報告を受けた」
「2つの脅威?」
「ああ、歩兵戦闘における2つの脅威だ」
歩兵戦闘……?
一体何の話をしている。
……まさか。
歩兵火力の話をしているのか?
だとすると思い当たるのは1つしかない。
「……それはもしや……私が首相に事前に伝えた、本来の戦史において後期に登場して未来の歩兵戦に大きな影響を及ぼした自動小銃だったりしますか?」
「ああ、そうだ。お前の報告を受けてから、私はこの4年の間にシェレンコフを通して複数の人物を監視していた。その中の1名、こと歩兵戦闘において最も脅威となりうる武装を考案せしめる人物については、暗殺をも想定して」
「……初耳ですよ」
「今始めて伝えたからな。一応言っておくが最初から暗殺を画策して行動したわけじゃない。そういう行動はむしろ未知なる脅威を生む事になりかねないというお前の忠告は聞き入れている。ゆえに、以前どこかでお前が述べたように誕生を遅らせる方向性を検討して監視しつつ外より誘導を試みることが出来ないか試していたのだが……彼は早い段階で北部戦線へと送られて負傷しており、いつの間にかヤクチアの工廠にて活動を開始していることが判明した。しかも、すでに相応の形にまで出来上がった自動小銃を考案している……それがこれだ」
振り向いた西条が胸元のポケットより取り出したのは、擦り切れた紙に何かの概略図を写生したと思われるメモのようなものだった。
最初はあまりにも線がつぶれていて何かよくわからなかったが……目を凝らすとどこか懐かしさにも感じる妙な悪寒が襲ってきた。
「こいつはお前が世界一著名な自動小銃として描いていたものとほぼ同一のものに見えるのだが……違うか?」
「間違いありません。AKです。…………早すぎますよ。本当だったら後2年は遅れていたはずだったのに」
「神のいたずらとはこういうものなのかもしれない。シェレンコフの話では、むしろこの自動小銃の開発は加速しているとのことだ。理由は第三帝国にある。我々が標準武装化を目指したM1921。それの脅威に晒されたあちら側は対抗手段としてより遠くから制圧射撃可能な小銃として開発していたMKb.42の開発優先度を上げた。そして完成したばかりの試作品が本年1月にヤクチアに提供されたことで、ヤクチア側でも急ピッチで開発がなされているという……そこに件の人物がどういうわけか居合わせてしまったということだ」
それはつまり……StG44とAKの双方が信じられないほどに早く完成する可能性があると……
冗談だろう。
片方どちらかならばまだしも、双方を相手にしろというのか。
今後こちら側でフルオート射撃可能でかつ携帯可能な自動銃なんてステンガンだのグリースガンだのが主流で、射程でも威力でもまともに対抗できないのに?
そもそもが華僑のおかげで大量に仕入れることができたM1921だって威力と射程で劣り、並ぶのは連射力ぐらいしかない。
その連射力だって反動が強すぎてフルオート時の取り回し及び集弾性は最悪で、150mも離れたらまともに当たらないぐらい拡散してしまう。
だがAKの7.62×39mmは150mまでなら普通に一直線の弾道を描くし、StG-44の7.92×33mmも弾頭が7.62×39mm弾より軽い分、より遠くまで直進性を保ったままの弾道を描く。
後者も伊達に300m以上の狙撃も可能だったと言われるだけあって、相当に優秀な弾丸であった。
そして双方共に伏せ撃ちならば十分にフルオート射撃で当てていける。
今のまま何もしなければ、M1ガーランドやM1921などでもって同時に相手をしろと。
想像するだけでも吐き気がする。
絶対にそんな戦場に出たくない。
「……つまり2つというのは第三帝国とヤクチアが世に送り出す突撃銃ということですか」
「そういうことだ。我々はM1ガーランドとM1921でもって第三帝国やヤクチアを叩きすぎたのかもしれん。結果的に彼らは既存の短機関銃などでは話にならないと考え、よりこちらにとって脅威となる方角へと舵を切った」
「……私が知る限り、総統閣下はMKb.42に極めて否定的だったはずなのですが」
「その総統を説得した者がいるらしい。むしろそちらで全てを統一する勢いで標準武装化した方が合理的だと、そう説得できた者がいるらしい。ゆえに総統閣下は統一化に前向きだという」
一体誰だッ!?
そんな説得が出来た人間は。
まさか首都建築総監か?
なんでそんな事に……
「ヤクチアの元帥殿も総統閣下に促されて開発を急ぐこととしたようだ。不思議なのは、現状ならば7.92×33mm弾で統一したほうがより合理的運用ができるはずなのだが、新たな弾丸を作って採用するとのこと……それはつまり、お前の資料に書かれていた7.62×39mm弾で違いないだろう」
「……ヤクチアはともすると第三帝国を裏切る腹づもりがあるのかもしれません。あるいは裏切られることを想定しているのか……7.92×33mmを使うと鹵獲された場合に弾丸が共有できる分、より不利となります。だからあえて共有できないようにしているとか」
MKb.42の試作品が提供されたという事は、間違いなく7.92×33mm弾も提供されたはず。
そこから着想を得て自国の7.62×54mm弾を短小化した7.62×39mm弾を見出したというのは本来の未来においての話ではあるが……
現状の同盟関係であえて新規開発するというなら、そういう意図があってのことだと思われる。
プライドとかではない。
ヤクチアはそんな安いプライドで非効率な行動は起こさない。
もっと打算的に戦略的に計算した上での判断だ。
「かもしれん。しかし真意の程はわからん。今わかることは、この2つに対抗策を早急に講じねば、歩兵戦闘において多大なる犠牲者を出しうるということだ。戦争が無駄に長引く可能性もある。それはなんとしてでも防がねばならない」
「自分にどうしろと言うんです」
「信濃。お前の未来の知識でもって最新鋭の全自動射撃式小銃に真正面から対抗しうる存在を作れるんじゃないのか。というか、何か優れた発想を隠していないか?」
「なぜそう思われたのですか」
「12cm砲の反動軽減機構。あれは砲や銃に精通する者でなければ間違いなく設計できない代物だと他の技師は口を揃えて言う…………信濃。蒸気機関車や潜水艦の頃はまだ航空技術の応用というお前の話に一定以上の理解を示せた。だが、12cm砲のマズルブレーキについては私も戦車学校に所属の技師らに詳細について報告を受けたが、どうも腑に落ちない。……信濃よ。君は銃器開発の経験もあるのではないか? もしそうでなくとも12cm砲の反動軽減機構を活用して何か生み出せるのではないのか?」
隠し通せないな。
間違いなく今動揺している。
それを悟られているのは手にとるようにわかる。
確かに俺は……それが流体力学に関するものだというならば何にでも手を出した時期があった。
生きるため、航空機という分野に活かせるのではないかという思いの双方によって航空技術者という肩書を捨てんばかりに活動していた時期もあった。
その中には砲の開発もあったのも事実。
だが銃器については殆ど関与出来ていない。
……ある1つを除いては。
たった1つ。
たった1回だけ……
これまでの人生において1回だけ銃器の開発に関わったことで、隅々まで熟知している銃器が俺の中に1つだけある。
ただ、これにはあまりにも大きな弱点があり……そもそもその銃の開発責任者は俺ではなく、あくまで協力者という立場でしかなかったので……"とある理由も合わさって"改善できる手立てがなかったんだ。
その"とある理由"によって銃器開発にも積極的に前向きな姿勢となれなくなって中途半端な状態で頭の中に眠っているため……できれば記憶から呼び起こしたくなかったものだった。
仮に本当にそれが歩兵戦闘の切り札足り得るなら、もっと早い段階で自ら挑戦することを願い出ていたことであろう。
「……やはりあるんだな?」
「他の技師達では駄目なんですか?」
「それは私以上にお前がよく熟知しているはずだ。我々はコピー品1つまともに作れん。M1921すらまともに製造できないのだ。2592年の自動小銃開発計画立ち上げからおよそ9年。我々はこの9年間の間になんら成果を出せていない。国産自動小銃の開発計画は華僑の事変も最小限に食い止められたことでむしろ加速するはずだった。しかし、M1ガーランドに匹敵する小銃はついぞ出てこなかった……先月行われた国産自動小銃の試作競合の評価試験では1丁たりともまともに作動したものが無い」
「1つも? 確か以前私は九九式軽機関銃をベースにBARのようなものを作ればどうにかなるかもしれないと伝えたはず」
「残念ながら、彼らは反動が強すぎるといってその方式に興味を示すことはなかった。これが現実。いつもそうだ……お前が使えるかもしれないと記した未来の知識を国内の専門の技師に活用するよう命じても、彼らは目を背けて明後日の方向に走り、時間を浪費して成果を出せないことをさも当然とばかりに報告してくる。苦しめられるのは自分達ではないからと、現場の思いをまるで理解していないッ!」
誰よりも歩兵の立場にたってものを考えることができる西条だからこそ、その辛さは他の将校らとは比べ物にならないのは容易に想像がつく。
戦車の時もそうだが、恐らく華僑の事変でより射程の長い自動小銃の必要性については戦車以上に肌身に感じていたはず。
感情を抑え込んではいるものの、もしもっと精神的に脆い人間だったならば無念さに耐えかねて自刃していたことであろう。
その様子を見て本来ならば即座に「ならばやってやる!」――と、言いたいところなのだが……あの銃には未来を見据えるとどうしても前向きになれない所があり、俺はただただ黙って心の中で花占いをするがごとく「やる」「やらない」――と自分の選択を決めかねていた。
その様子を見かねてなのか、西条が訴えかけるような表情でこちらに顔を向ける。
「……しかしな、状況を同じくして目を覆いたくなるような現実に苦しめられていた戦車はどうなったと思う? 今や我々は後一歩で諸外国に絶対に負けぬ戦闘力を得るかもしれない所にまで至っているではないか。歩兵火器についても同様にやりようはあったはずなのに、頭の固い連中のせいで……だからこそ最大の功労者に無茶を承知で言おう……頼む。戦地へ向かう歩兵が戦い抜ける武器を授けてくれ。他に頼れる人間はもうおらん。」
誰もいない……か。
そうであっては困るのに、どうして足を進ませることが出来ない人間が非常に重要な技術分野において大勢を占めているんだろうか。
きっと先月行われたトライアルだってそうなんだろう。
傑作自動銃がそこにあるにも関わらず、トライアルに出てきたのはどうせトグルアクションなどの古臭く信頼性におけず生産性も悪い機構で作られていたものばかりだったのだろう。
ともするとNUPなどと比較して我が国は軽機関銃などの分野で優れていたから"そんなもの不要だ!"――なんて言って開発意欲を削ぐ人間すら銃器関連の技術者の中にはいるかもしれない。
そんな悠長なことを言っている場合じゃないのにも関わらず。
……やるしか無いのか。
だとしても、アレでいいのかどうか念の為最後に確認しておく必要性がある。
アレは……"アサルトライフル"ではないんだ。
「首相……いえ、閣下。閣下は陸軍に必要な自動射撃可能な小銃についてはどういうものを望んでおられるのですか? それが私の中に秘めるものと相違無いならば挑戦はしてみたいと思いますが」
「当然、我が陸軍が発足以来突き詰めてきた機関銃の延長線上にあるもの……1名から使用可能でありながら全自動射撃可能であり、時に分隊支援の役割を果たし、時に白兵突撃を支え、あるいは自ら突撃を敢行し、時に狙撃銃としても使うことが出来る……文字通り全ての戦況に1丁で対応できる携行可能で、かつ移動射撃可能な軽機関銃だ」
……だろうな。
我が国がずっと追い求めてきた小銃はそれで間違いない。
いわゆる小口径化で逃げたりなど一切しない小銃と、そういうことだ。
「つまり私が未来の情報より示したアサルトライフルではなく……王立語にて"バトルライフル"と呼ばれる存在、それを形作りたいということで間違いないですね?」
「そういうことになる。信濃、お前の中に眠る銃はもしやアサルトライフルと呼ばれる交戦距離がより短いものなのか?」
「いえ、その逆のバトルライフルと言われるものです……ただし、生半可なアサルトライフルを過去のものとする、極めて高い火力と集弾性と命中率を併せ持つもので……それがアサルトライフルに劣る存在とも思っていません。ただ、ある重大な欠点を抱えているがゆえ、これまで開発することを憚ってきました」
「欠点?」
「ええ。1つ重大な欠点がありましてね……ともかく2日ほど時間をください。ちょっと略式図面を描いてきます。その小銃について納得いただけるというならば開発をやってみましょう」
「そうか……やってくれるか」
「それではッ! 信濃忠清! これよりバトルライフルの開発のため一旦立川に戻りますッ!」
「期待しているぞ」
敬礼の後で振り向き、部屋を後にしようとして気づく。
もう1つ確認せねばならない事があったことを忘れていた。
「……おっと、その前に伺いたいのですが……総力戦研究所から拒否されたりしませんよね?」
「問題無い。たった1丁だけなら開発と製造できる余力が残っている。他に一切を開発・製造しなくて済む小銃ならば何とかなる……逆を言えば我が国には1丁で全ての戦況に対応できるようにしなければどうにもならないほど力が無いとも言える。ようは唯一無二の開発・製造余力をもって1丁に全てを賭けたいわけだ」
「わかりました。がんばります」
参謀本部を後にして立川へと向かうために駅へと歩き出した時、虚しさと同時に怒りがこみ上げてきていた。
それは国内と、国外へ向けたもの。
なぜこちらの足を引っ張る技師が未だに様々な分野にいるのかということと……
なぜより多くの死者が出る凶悪な歩兵火器を本大戦に持ち込もうとするのかという二方面に対する怒りだ。
だがふと冷静になってみればその原因は皇国にあり、恐らくきっとありとあらゆる場面において今が正念場なのだと理解した。
なればこそ、やってやる。
かかってこいAK。
俺の中に眠るバトルライフルは生半可なものじゃないぞ。
反動も、集弾性も、取り回しも、全てにおいて勝るものだ。
なぜなら……俺の中に眠る銃は……