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第153話:航空技術者は互いに冷静さを保つ

 皇暦2601年7月上旬。


 ウィルソンCEOとの交渉の前日。

 珍しく技研に訪れた西条によって呼び出された俺は、陸軍が用意した車へと案内された。


「そちらからお越しになられるとは……何かありました?」

「信濃。この戦車に見覚えはあるか?」


 やや急ぎ気味で単刀直入にとばかりに問いかけられたのは、ヤクチアの戦闘車両に関する情報提供の申し入れであった。


 どうやら北部戦線に"ソレ"は突然現れたらしく、上層部に少なくない衝撃を与えた様子である。


 西条がこちらに見せてきたのは……


 これまでの常識を吹き飛ばすほどに"巨大"な、まるで陸上を走る戦艦のごとき自走砲が大判写真いっぱいに映し出されたものであった。


「SU-100Y……ですね。シェレンコフ大将は回答できなかったものですか?」

「あの男もすべてに精通しているわけではない。ヤクチアが密かにこいつを開発していた情報を掴むことはできていなかった」

「いや、シェレンコフ大将は断片的ながらも情報を掴んでいたはずです。首相は一度は耳にしたはずでは?」

「まさか……では、これが13cmの艦砲を装備した戦闘車両だというのか!?」

「搭載を検討していたのは全く別の車両ではありますが、その開発者の案を聞いて興味を抱いた別の設計局が、"とある試作車両"をベースにとりあえず艦砲を搭載してみたのが本車です。シェレンコフ大将は艦砲を搭載する戦車の開発はすでに始まっているという情報を手に入れていたはず。おそらく情報が混在して混乱してしまったのでしょうが……彼はきちんと情報を手に入れてきておりましたよ」

「そうなのか……にしても、随分と冷静だな。もっと取り乱すかと思ったのだが」


 こちらの様子を見てその様子そのものに驚いている西条であったが、無論それには十分な理由がある。


 なぜなら本車は――


「――戦場に現れたのは2両ないし3両、以降に続く同車両はなかったものと思われます。合っていますか?」

「そうだ。北部戦線を切り開く目的で投入したのだろうが……あの狭く岩だらけで高低差の激しい地域での運用には無理があったのだろう。写真の車両は立ち往生して敵が爆破しようと試みて失敗し、最終的に放棄した車両だ。もう1両とは交戦したが、大した装甲ではなかったために何とか倒せた」


 西条が言葉と同時に見せたもう1枚の写真は、ロ号または百式襲撃機あたりの爆撃を食らって大破したもう1両のSU-100Yの姿であった。


 攻撃力は間違いなく優秀ではあるのだが……投入した地域が地域だけにさして活躍することはなかった様子である。


「本来ならば随伴車両と共に運用することが前提の自走砲ですからね。ですが、T-34との共用を考えた場合に機動力が無さ過ぎる。それでも投入してきたのは……こちら側の自走砲にそれだけ危機感を抱いていたというところでしょうか」

「榴弾の威力はすさまじく、我が軍は大なり小なり被害を出した。これが量産されると困る。しかし、その心配は無いと見てよさそうか?」

「今の所は間違いなく。ただ、彼らは実用性を度外視して別の車体に130mm砲を搭載してくる可能性は十分にあります。無論、それらをすべて想定した上で新型戦車を設計しましたが」

「ここに来てお前の主張の正しさが証明されつつある。10cm砲を推していた派閥も、こいつの登場に言葉を失ってしまったようだ。まあこのサイズ感を見ると……な」


 今一度西条が眺めた、最初にこちらに見せたSU-100Yの写真には、大きさの目安として皇国人を立たせてそれがどれほどの巨体であるのかを示そうとしていたが……


 超重戦闘車両と形容できるその車格は、現場で見た者を圧倒したことは言うまでも無い。


 なんたってこいつのサイズはマウスと殆ど変わらぬのだ。


 SU-100Y。


 元々はオイ車のような多砲塔戦車T-100として誕生したもので、こいつは後の未来においては割と知れ渡っている、ウラジミールによる「なぜ君たちは戦車の中に百貨店を作ろうとするのか」という主張を受けて、当初設計時において銃座と正副合わせて5門あった砲塔を試作型車両では銃座を合わせて3門へと減らしたりなど開発時において迷走した車輌であったのだが……


 そのT-100も砲塔を1門とした上で攻撃力を高めたKV-1に開発競争で敗北。


 結果残されたT-100の台車を用いて、KV-1の発展型たるKV-2路線を踏襲し、回転砲塔すら捨てて艦砲を搭載したものである。


 マウスと違う点があるとすれば、現在の技術にて実用的な速度ならびに走行性能となるようクラッチ等を設計したために重量削減が必要不可欠となり、装甲が相当分犠牲となって重量が70t未満である点であろう。


 開発局が開発局な影響もあり、その装甲は傾斜装甲ですらない。


 おかげで最近は北部戦線にも運ばれて使われているというシャーマンですら、ある程度近づけば貫通できる程度の防御力しか持っていない。


 だとしても現時点で60tオーバーの戦車を製造し、戦場に投入したという事実。


 それは間違いなく戦中において第三帝国と並び二大戦車大国と謡われたヤクチアの面目躍如ということなのだろう。


 だがこれはまだデモンストレーションに過ぎない。


 亡くなった者達にはかける言葉も見つからないが……今後こちらはもっと恐ろしい化け物を相手に戦わねばならないのだ。


 それこそ、このまま行くところまでいけば出会うであろう、同じ規模のサイズでありながら装甲が200mm以上あるネズミだって出会ったからには倒さねばならない。


 しかもあっちは一応は回転砲塔を装備した戦車。


 ここで恐れおののいて白旗を揚げるわけにはいかないんだ。


「爆破された車両には放棄されたと見られる砲弾も残されたままであったが……減装薬砲弾だった。あの重量では本来の火薬量では撃てないのだそうだ。我々が開発中の新型戦車砲より威力は劣るが……それでも脅威となりうる。釈迦に説法だとは思うが、新型戦車の装甲は大丈夫なんだろうな?」

「試験的に組み上げてみた仮設砲塔は、約600mで海軍の三年式12.7センチ砲による砲撃にも耐えました。問題ありません。均質圧延鋼の性能はNUPのものと遜色ありませんでした」

「よし。後はどちらが先に量産された戦車を投入できるかにかかっているな」

「ええ――」


 この時、実は俺は西条と受け答えをしながら若干の不安を感じていた。


 理由は超重戦車である。


 オイ車の開発を命じた西条、そしてSU-100Yを確認した上層部。


 双方が誤った方向性……すなわち「我々もやはり超重戦車を作るべきではないか」――という考えに至ってしまうことへの恐怖である。


 今最も命じられたくないのが、その開発命令であった。


 だが、どうやらいささか神経質になりすぎていたようだ。


 ついつい投げかけてしまった言葉に対して、西条は冷静さを保ったままだった。


「首相……その、まさかとは思いますが超重戦車の開発を改めて検討されたりなどはしておりませんよね?」

「どうやらお前は私や稲垣大将の戦車主観について少々勘違いをしている所があるようだな。たしかに私は数年前にオイ車の開発を裏から手引きした。だが、私が求めたのは陸軍がヤクチアなどと対敵する上で必要となる、"確固たる性能を持つ戦闘車両"だ。いわば、メーカーが我々の理想に対して示したものこそ、あのふざけた150tもの重量と巨体を持つ戦車であるだけ」

「そうだったのですか……」

「必要な性能を満たすならば、どれほど小型でも、どれほど軽くても問題が無い。いや、そうでなくては困る。我が国の領土は狭い。想定として本土防衛すらも考えねばならぬ以上、戦車はそう大きく、重くできん。正直なところ、40t未満という数字は舗装路等の整備された場所を中心とした運用とはなるので、もっと軽い方が良いのだが……それでも、どこで運用するのかわからぬ150tよりよほど現実的」


 皇国で急がれている主要道路の舗装ならびに拡幅。

 それは無論、この戦車の運用をも意図しての事である。


 すでに3年前から着手している各所の道路工事によって、皇国は従来までの25t未満という状況から40t未満という数値に大きく運用可能重量を引き上げることとなった。


 当然にしてこれは鉄道運搬を平行して用いることを視野に入れたもの。


 全ての段取りを行ってこそ、理想たる主力戦車は運用できる。


 まさか自分がその戦車の開発を行う事になろうとは思っていなかったが……一応形にはなったのだから、この際問わない。


「将校の中には確かにより大型の戦車を欲しがる者もいなくはなかった。王立国家のMk.Ⅳあたりは大きいものな。だが現状で新型戦車を小さすぎるなどと言う者はいまい」

「確かに、そのような声を聞いたことはありません」

「だろう? それにわかっているのか信濃。確かに開発中の戦車は今回遭遇した怪物よりかは二周り以上は小さい。事前にシェレンコフが入手したSMKなる重戦車と比較しても、やはり小さい。だがしかし、それらは大口径砲装備の自走砲や多砲塔戦車……いわば必然的に不必要なまでに大型化してしまう存在に過ぎない。回転砲塔を1門のみ装備した正しい形での戦車では、現状、世界でもっとも大きい部類に入るのがお前が作ろうとしている戦車だ。7m55cmもの車体長を持つ重戦車など、第三帝国すら作ってはいないのだぞ。未来においてこの車格より大きいのが当たり前だとしても、現状ではそうではないはずだ」


 確かにその通りだ。


 マウスを除外しても、車体長だけでが7m半ある戦車はT-35など、多砲塔戦車など限られたものばかり。


 間違いなく車格は大きい。

 シャーマンやチハといった、皇国陸軍が現状運用する戦車達と比較しても明らかにサイズ感が異なる。


 そうか、俺は主力戦車ばかりに拘ってそういう所を見過ごしていたのか……


「すでに完成した試験車両を私もみたが、あの大きさは威圧という面では十分な戦術的優位性となろう。九五式重戦車をも上回る巨体を、ああも機敏に動かせるだけの心臓部が我々にはある。間違いなく新型戦車は戦場を変える事になろう」

「先日の稼動試験を首相もご覧になられていたのですか? 私は忙しくて向かえずにいたのですが」

「多くの将校らを伴って見に行ったが、最高時速は50km以上間違いなく出ていた。あの巨体であの速度だ。凄まじい迫力に気圧されたわ。さすが電動機だけに加速もバツグン。後退速度についても情報が確かならば現状世界一のはずだ。防衛戦闘では攻撃後に即座に後退して敵の攻撃を防ぐことが重要となるが、現状の戦車達は精々10km程度の所、我々は前進と等速にて全速力で後退して配置移動が行える。ここに新しいゴム式の転輪が加わればさらに機動性が上がるという報告を受け取った。他の陸戦兵器の生産と開発を滞らせても、作る価値があるという意識を共有できた素晴らしい時間だった」

「車両は完全装備状態と同じ重量で試験運用していますので、ほぼ同じ程度の機動性を有したままとなるはずです。砲塔は仮設でしたが、試作品はすでに出来上がっており搭載秒読み。時間がかかっているのは……」

「戦車砲と照準関連だそうだな。企業には最大限の人員と予算を出す。例の常時追従式……いや、お前が述べた言葉の方が通りはいいか、"全自動照準補正"については補正予算を組んででも開発を推進させる。例の新型エンジンとやらを搭載する計画も平行して続けてくれ」

「軸焼けの可能性等指摘されてはおりますが……燃費改善効果も期待できる以上、確実に実行に移します」

「ああ……頼む」


 言葉と共に腕を組みながら神妙な面持ちとなったのは、新型主力戦車の弱点について思い出させてしまったからだろう。


 一部では無敵だとか神風そのものだとか持ち上げられてはいるが、この戦車には3つの目を背けたくなる弱点があった。


 1つ、燃費。

 1つ、装填速度。

 1つ、整備員の育成と整備に関わる専門技術の多さ。


 燃費に関しては必要な航続距離を有するようタンクは非常に大型ではあり、十分な距離を走り抜けるだけの力はある。


 だが、それは燃料が満タン状態に常に出来たら達成できるというカタログスペック的な数値。


 兵糧に関しての問題は常に付き纏うこととなった。


 補給が滞ればただの固定砲台となってしまう。

 一応、外部からの電源供給でも徐行程度の速度は出るのだが……それでは進軍に大きな支障をきたす。


 もう1つが装填速度。

 砲弾は分離式となっているが、装填速度は速くても分間6発程度。

 優秀な装填手でもって7発~8発が可能かどうか。


 元よりここは命中率で突破する設計であり、ロングレンジにて敵を打ち抜くことを考えて目を瞑ったものだが……半自動装填などを検討するに十分に値する問題。


 だが、半自動装填機構など知らないので、俺はそれを再現できない。


 元となった高射砲はドラム式による全自動装填。

 これにより分間13発~15発を可能としていたことを考えると発射可能回数は半減している。


 それでも、SU-100Yとは異なり火薬量はそのまま。

 威力はお墨付き。


 海軍の12cm砲を急遽改造して作った新たなマズルブレーキを装備したマズルブレーキ評価試験用の砲塔は、見事に反動を目標値にまで軽減することに成功はしていたが……


 自動装填機構が欲しくなるほど装填速度が遅いのは明確に弱点であると言えた。


 3つ目に関しては、才能のある若者を中心に育てるしかない。

 電気工学技師を少年兵らを含めて大量に雇用し始めているのは、他でもないこいつの整備のため。


 幸いにもPCCシステムなどは部品点数は非常に多いがアナログ仕様なだけに構造はそこまで複雑ではない。


 整備方法さえわかれば、後は電気関係に関する最低限の知識さえあれば各部の整備は可能。


 だが、各部隊において必ず電気工学や熱力学に秀でた者を入れておかねばならないなど、部隊編成においては一種の制約のようなものが付き纏うのは指揮官達の頭を悩ませる事になるのは間違いなく、これもまた弱点と言えた。


「……今の悩みは、この戦車をいかに適切かつ効率的に運用できるかを考えねばならぬことだな。指揮官たる将校はそのためにいるとはいえ、随分と勉強させてくれる。この歳になって電気工学について学ばねばならぬなど思いもしなかった」

「首相も学ばれているのですか?」

「部下達に説明が出来んからな。ここ数ヶ月、最低限の教養として多くの将校らには電気工学に関する勉学の義務を与えている。破損状況によっては周辺や内部にいる者が感電死する可能性のある戦車だ。炎上よりも怖い要素がある以上、無視できん」


 Pティーガーやエレファント、そしてマウスでは感電死したという報告は殆ど上がっていない。

 おまけに漏電しにくいアルマイト配線を用いているので、その可能性はさらに低い。


 かといって万が一はある。

 俺もそろそろ真面目に電気工学について学んでおかないといけないかもしれないな。

 流体力学ほど真面目に電気工学は学んできていない。


「ともかく、例の超重自走砲が量産されないと聞いて安心した。しばらくは重突で乗り切ることとなろう。本年10月には北部と南部を中心に国内より運び出す予定だ。来年1月頃から本格運用開始だ」

「例の新型砲塔搭載の訓練車両は、元クルップの方々が設計していただけるそうなので任せています。私はやはり専門ではないので時間がかかりますからね。彼らのおかげで新型戦車も何とか設計できたようなものですから」

「そうか……まあ形になっていれば十分だ。おっとそうだ。すっかり忘れていたが、お前にはもう1つ聞くべきことがあった」

「はい?」


 もう1つ……もしや百式機動二輪車のことか。


 あれの増産を行うために他の企業でも生産できないか陸軍が声をかけており、民需もあることから海軍なども興味を示しているとのことだった。


「実はお前が持ち込んで量産していた二輪車のことだが――」


 ――予想通り。

 45万台は現状の体制では工場を増やしても無理だ。


 しかも陸上関係の機械類を作る者たちは戦車製造に動員予定。


 自動車生産を行っているメーカーの技師にすら参画の指令がかかっている。


 恐らく、これまで例がないような業種の企業を生産させる……とかいう話ではないか。


「浜松の楽器工場がな、新型二輪車を我々も作りたいというのだ……現在"ラッパ"や"オルガン"を作っている会社だ。我々陸軍ではプロペラなどの製造を依頼しているメーカーなのだが……彼らは楽器の技術を利用してブレーキ類だけでなく、フレームなども作れるというのだ」


 やはり……か。

 背後にいるのは間違いなく宗一郎だ。


 頻繁に件の会社には出入りしている。


 "ここにいる技術者なら出来るんじゃないか"――なんて思って、社長に話を持ち込んだ可能性がある。


 そして社長は自動車関係に参入したかったので、興味を抱かぬはずがない。


「首相、その会社ですがね……是非その提案に乗ってみて下さい」

「出来るのか?」

「出来ますよ。なんたってその企業は、私が知る未来において二輪を作ることを許された四つの重工業複合体のうちの1つですから」

「……楽器メーカーだぞ? 皇国楽器だぞ!?」

「航空機以外なんでも作れるメーカーへと成長する企業です。本来より二輪の製造開発の機運の高まりが早まったら間違いなく声をかけてくる企業だと思っていました。皇国楽器は現時点にて浜松に3つも大きな工場がありますけどね……その中の2つを用いればかなりの台数を作れる可能性がある。現状で自動車を作っていたりするメーカーは戦車開発があるわけですが……楽器メーカーなら周囲から咎められる事も無い。これ以上にない選択です」

「よしわかった。お前が言うなら間違いないんだろう。やらせてみようじゃないか」

「仮に戦後があるとして、皇国が皇国のままでいられるとするならば……楽しみになってきましたよ」

「そんなにか? 大きくなる企業というのは何で成長するのかわからんものだな」


 西条は首をかしげているが、皇国楽器、山崎、もう1つの技研、そして浜松で自動車を作ろうと夢見つつも、二輪開発からはじめたスズキ


 この四社が現時点で二輪を作るというのは個人的に感慨深いものがある。


 ようやく揃ったんだ。


 東側はおろか西側をも席巻して無理してでも入手する者達が後を絶たないほど、優れた車両を生み出し続けた四大二輪メーカーが。


 ZDB125の遺伝子を得て彼らはその後の二輪をどう進化させていくのか……興味がある。


 皇国楽器が参加するならばスイングアームの導入について本格的に検討もしたい。

 時間があれば設計図をこさえて彼らに挑戦してもらおうか。


「よし。話は以上だ。時間を割いてしまってすまない」

「いえ、私も皇国楽器の件などが聞けてとても有意義な時間を過ごせました」

「例の交渉……明日だったな? こちらでも可能な限りの技術は提供する。向井と共に全力でもって応対しろ」

「はっ!」


 車から出ると西条は外にいた運転手を改めて呼び出し、自らの居所へと戻っていった。


 俺はそれを見送った後、昼下がりの時刻であったために昼食がてら神社へと向かう。


 SU-100Yによって被害を受け、亡くなってしまった者たちへ冥福を祈りたかった。


 自分がもっと手を尽くせば何か施せたのかもしれないと思うと、自然と足がその方角へと進ませたのである。


 夢の戦車はまだ完成しない。

 けれども、敵の虎はもうすぐ産声をあげるはず。


 今は苦労を重ねてしまうが、自分の行動も彼らの行動も決して無駄ではないと証明したい。


 数分間の黙祷の後に自らに喝を入れた俺は、彼らが歩めなかった明日へと静かに歩んでいった。

ヤマハ参戦

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― 新着の感想 ―
[一言] 1997年F-1ハンガリーGPで2位になったんですよね...あのヤマハは 最後マシントラブルが無ければ優勝だったのは当時レースを見ていて残念でした...
[気になる点] 元気、やる気、SUZUKI! でも魚はひどくない? [一言] 皇国チャレンジャーもお披露目できるところまで出来てたんだなー たのしみだなー
[良い点] 定期更新が遅れていたので不安だったが何事も無かったようで何よりです [気になる点] この世界だとオート三輪とか生まれ普及するんでしょうかね? 信濃技官だったら無反動砲も知っていそうだし乗せ…
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