第135話:航空技術者は反転二軸式スワラ燃焼型改良ジェットエンジンに挑戦する(後編)
「――また信濃が設計室に引きこもってなんかやってると言われてるんできてみたら、この図面はCs-1じゃないか。お前エンジン改良に挑戦するのか?」
「ああ、その通りだ」
「お前……熱力学は得意ではないと言っていただろう」
設計図に引きこもって5日後。
技研に寝泊りしてほぼ外に出ることなく、設計室以外にすら向かうことがなくなった様子を他の職員が噂にし、中山が心配そうに朝からちょっかいをかけてきた。
正直、もはや彼への応答もしたくないほど集中していた。
「確かにそうだ。だが今なら王立国家のエンジニア達もいる。彼らからの意見も参考に、850kgの推力を1300kgに出来るか検討中だ」
「1300kgって2発搭載したら音速に達するんじゃないのか」
「無理だな。音速突破には3000kgぐらい必要だ。ギリギリ到達しない程度の数値さ」
「それでも時速1100kmぐらい出そうなんだが……」
「そうかもな。悪いが今は集中したいんだ。あまり話しかけないでくれ」
「へいへい。凡人は退散しますよっと。おっとそうだ。例の耐Gスーツだがとりあえず下半身だけのものなら今年中に作れそうだ。訓練用に配備できるよう調達しとくぞ」
「ありがとう」
現在、中山は耐Gスーツの開発責任者の一人となっている。
まあ彼は設計には殆ど関与していないのだが、開発主任として主導的立場にあるということだ。
未知の領域の飛行服ゆえにそれなりに手間取っているものの、ゴム管を適度に膨らませて縛りつけて肌に密着させるという基本コンセプトはすでに理解がなされており、適切な形状および機構の開発に取り組んでいた。
この開発においては縄士などの協力を得ている事から周囲には"変質者が多く混じっている"――と噂する者も多く、パイロット達からも正直評判は良くない。
ただ、形状自体はそれなりに見栄えがあるものとするよう要望は出している。
最悪はインナーとアウター方式に分けて運用する予定だが、アウターがあると着脱が容易ではないので今の所は検討していない。
中山は試作品の完成が本年秋までに可能であることを示した報告書を俺の机においていくと、そのまま静かに立ち去っていった。
俺は再び無言のまま、脳内に眠る未来の流体力学をフル回転させて改良にとりかかる。
◇
「やはりネックは燃焼室か……こいつさえどうにかできれば……」
すでに夕暮れ。
カラスの鳴き声と共に夕刻となったことを知りつつも、計算書とのにらめっこが続く。
Cs-1の改良を行う上で最大のネックとなっているのはやはり特殊すぎる機構の燃焼室。
これをどうにかしなければ話にならない。
燃焼効率が悪すぎるこの部分が出力低下を招いている。
だが、ここを一般的なカン型やアニュラ型としたのでは全長が大きく伸び、出力が大幅に向上しないばかりか却って低下しかねない。
全長が伸びる分、燃焼効率が下がるからだ。
Cs-1の開発者は恐らくだが、それが嫌で嫌で不思議なリバース方式としていた。
新型戦闘機は構造上、エンジン全長が伸びても特に問題ない。
元よりアフターバーナー搭載を考え、アフターバーナー用のエンジン後方の燃焼スペースを用意している。
ここをエンジンの納まるスペースに置き換えても特段問題はない。
……が、燃焼効率が上がらないのでは意味が無い。
重量も上がり、多少信頼性が向上してサージングなどを起こし辛くなっただけのエンジンとなるだけだ。
その分の重量増大が洒落にならない……これでは駄目だ。
そして仮にここをクリアしても現状の一軸式では効率の上昇はある程度まで。
大幅な出力向上のためには二軸式は必須。
二軸式は設計次第でいくらでもどうとでもなるが、ただ二軸としてもこれまた推力の大幅な向上は見込めない。
全長を一切伸ばさず、二軸型でも大幅な推力向上が見込める構造……
――となると、最新鋭の中の最新鋭な設計で行くしかないようだな。
現代の技術でも再現が可能で、かつ最新鋭の中の最新鋭。
これで行く。
よし、設計を1から全部構築しなおしだ。
一度椅子から立ち上がり、気合を入れなおして再び作業へ。
もはや気力と根気だけで勝負する自分の姿がそこにあった。
◇
「これだ……これでいける。これで目標数値を大きく上回るエンジンにできる。これしかない。もうこうする以外に手はない」
気づくと珍しく夜を徹しての作業となっていた。
集中しすぎて朝となっていたことすら気づかないほどであった。
あれから2週間。
基本骨子の完成に至るまで、これほどまで何日も何日も集中して作業した事はない。
だが、原案となる構造は出来上がった。
計算上でも思った以上の数字に到達している。
俺は一端休憩のために仮眠を取った後、すぐさまメーカーのエンジニアを呼び出した。
◇
「せ……1440kg!? Cs-1のターボジェット型であるネ0を? その数値に引き上げる? これで……一切の耐熱合金を使うことなく?」
渡された計算書に対し、芝浦タービンや京芝、そしてG.Iの技術者らは疑問が尽きない様子であった。
なんてったってエンジンが一切大型化していないのだ。
それがいきなり推力1.7倍などと言われて理解できようはずもない。
だが、何度再計算してもこの構造ならそれが達成できるので、俺は自信をもってこの構造への改良に挑むことを進言しようとしていた。
「そうです。まだ原案なんで細部の計算まではしていませんが……計算上ではそうなる。この改良案によって改良されたエンジンに私はCs-2とネ0-Ⅱとそれぞれ名づけるつもりです。もはやこれは1などという領域にはありません。新たなエンジンと言えます」
「燃焼室の全長を伸ばすどころか短くしてくるなんて……これで本当にそれが達成できるなんて、にわかには信じがたいほどですよ。いや、いくつかの機構には見覚えがありますが……」
「ええ。皆さんも見覚えがある機構がいくつかあるはず。こいつは現段階において到達可能な地点に一歩足を踏み入れることで達成するエンジンなんだ!」
Cs-2として生まれ変わる新たなエンジン。
そのエンジンの燃焼室はアニュラ型であった。
しかし、ただアニュラ型とすると燃焼室の全長は大きく伸ばさねばならない。
そこで新たに俺が導入したもの……それがスワラと呼ばれる構造体だ。
スワラ。
これは簡単に言えば羽根車である。
燃料噴射機の手前側で風力を発生させ、燃料を圧縮して高熱化……
その結果燃焼を促すシステムだ。
元々は大型の発電用ガスタービン施設にて導入された機構。
2599年に実用化されたガスタービン発電においては、当然その機器が巨大となるためにタービン内の温度を均一にすることが難しく、常に不完全燃焼によるリスクが生じていた。
特に燃焼室においては、より大量の燃料を噴きつける関係でその影響はタービン内よりも増大する傾向にあり、高効率な燃焼を実現しなければ不完全燃焼によるタービンの破損などによって連続運転が不可能となる可能性が指摘されていた。
そこで考案されたのが前述のシステムである。
タービン側から一部の風流を取り込んで超高速回転させた羽根車により、噴射された燃料は別途送り込まれてきた推力に転換するための高圧ガスと混じり、渦を形成しながら燃焼していく。
まるで竜巻のごとく回転した渦によって噴射された燃料は即座に燃焼しきってしまう。
この構図を見ると未来のジェットエンジン関係技術者はその仕組みが何かに似ていると気づくはず。
そう、オーグメンターだ。
なんと燃焼室がオーグメンターに類似するような仕組みとなっているのだ。
あれも高圧ガスに燃料を吹き付けて着火するわけだが、その高圧ガスはタービンによって発生した流動によるもの。
スワラは燃焼室にてオーグメンター処理を行うものと考えられなくもない。
結果、即座に燃焼したことでエネルギーを一気に消耗することとなり、燃焼室はカン型や通常のアニュラ型などと異なり、逆にその全長を短くしなければ熱効率的には非効率となるほどだ。
後の未来においてはこれが何らかの別の機構によって蛇がとぐろを巻くがごとき凄まじい炎の渦となるわけだが、スワラによる渦はその前身なのか親戚にあたるもの。
俺はあのトグロを発生させる機構がわからないので再現はできないが、スワラ燃焼方式とは、その領域に一歩近づこうとするものだ。
前述するトグロを巻くがごとき炎の渦とはならないが、従来の常識を大きく覆す圧倒的な燃焼効率となることができる。
もはやその燃焼効率は現状と比較すると100%を大きくオーバーしている。
従来よりも大幅に少ない燃料でもって同じだけの出力を得られるほどの完全燃焼を果たすほどだ。
Cs-2となる存在は、殆ど黒煙を出さないエンジンとなるのは間違いない。
スワラの形状も未来の情報により、より高効率なものへと改めている。
軸の途中から大きく前進角が設けられたようなプロペラ形状で、ヘの字そのままといった羽根車形状だ。
このへの字は逆流を防止するものである。
スワラ最大の欠点は高い圧力を吹き込むことで、燃焼室の内壁に押し込まれたやや温度の低い燃焼高圧ガスが気圧差により逆流を起こしてしまうことだ。
これがスワラの燃焼効率を低下させる。
このことが判明するのは半世紀後だが、もはや手段など選んでいられない。
当然最初から最適解を選択する。
逆流させない方法は簡単だ。
内壁側の気流の強さをより増大させ、燃焼室中心部に逆に風流が向かうように調節してしまえばいい。
これによってもはや燃焼室内壁には殆どガスが及ばず、ガスの炎は燃焼室中心部を通ってそのまま後方の推力変換用タービンへと移動する。
この高効率極まったスワラ燃焼方式導入によって従来のリバース方式を捨てながら、従来よりも小型化した燃焼室をCs-1は手に入れたのだ。
これだけでも出力は1.3倍になる。
だが足りない。
そんな程度では足りない。
だからこの現段階にて最高峰かつ到達点である燃焼室に対し、同じく現段階における限界点に到達したタービンを用意することとした。
それが――
「嘘だろ……改めて計算書を見たら後方のタービンが二軸になっているだけでなく、反転してるぞ」
「本当だ……技官、なぜですか?」
「それが"反転二軸式タービン"です。私が計算の果てに辿り着いた現段階の究極系。ただの二軸式ならすでに存在します……船舶用などに。だが、それだけでは足りない。出力が稼げない上に構造的に無理があるからです!」
――未来のジェットエンジンは大半が二軸以上である。
この理由は正面で得た大気を圧縮した際に必要となるタービンの回転速度と、燃焼後にこれを推力へと変換するタービンの求められる回転速度が異なるからである。
ある時期まで整備性などの向上を目的に単軸に拘っていたヤクチアですら、最終的には二軸型などへと移行していった。
より高効率を求めて三軸としたジェットエンジンも存在する。
現段階において三軸など常識的に考えて不可能なのはいうまでもない。
そもそも三軸は実はそこまで高効率ではないのではないかなんて言われている。
そんなものを採用したって失敗に終わるのは目に見えている。
俺が今回採用した二軸方式……それは最新鋭ジェットエンジンが全長を短くするために採用した反転二軸式である。
反転二軸式。
未来のジェットエンジンにおいてこいつが採用された理由は案外単純である。
金属シャフトの回転速度というのは、当然ある程度までで限界がくる。
やはり素材の耐久限度というのが存在するからだ。
しかしエンジンの推力効率を向上させたい場合は、圧縮比を向上させねばならない。
だが従来方式では回転速度が必要になり、それがジレンマという形で襲いかかってくるのだ。
結局……一般的なこれまでの二軸式ではある領域までが限界点で、これ以上圧縮比を向上させられないわけだ。
どんなことがあっても破断しないような耐熱素材などあれば別だが……そんな都合のいい物はない。
そもそも回転速度が上がれば上がるほど摩擦熱などが生じて、金属の放熱現象が異常燃焼を起こしてエンジンがコンプレッサーストールなどさせかねない。
素材自体だって現代から比較したらもはや錬金術の領域とも言えるまで進化しているが、それでも限界に到達してしまっているのが未来のジェットエンジン。
だがこの時、同じ回転速度であったとしてもタービンが反転していれば大気の流動よりタービンが受ける相対速度は大幅に増大する。
つまり、より強い力が後方のタービンにはぶつかることとなるので、よりタービンによる圧縮率が向上するというわけである。
しかもこの時、前方のタービンによって揉まれた大気のもつ回転運動エネルギーが、全長の長さによってエンジン内部で消耗されて収まっていくことでその効果が薄まることから、よりエンジンの全長が短い状態の方が相対速度が上がって圧縮率が上がる点にも注目できる。
なぜなら、全長を短く出来るとは"タービン軸を短くすることで振動を抑制できる"ことに繋がるからだ。
技術的に未熟な現代において、とても長い超高速回転可能なシャフトなどNUPですらまともに作れないのだから……冷静に考えて利点しかない。
従来までのカン型やアニュラ型燃焼室と、従来の単軸によるエンジンはとにかく全長が伸びる。
そして最初に受けた内壁に押し付けられつつを回転した風流は次第にその回転運動が収まりながら後方のタービンへと向かうこととなる……というよりそうさせて向かわせねばならない。
なぜならば、同じ方向にやや回転運動をもつ大気の流れというのはすでにその方向にエネルギーを保持しているので、新たに圧力を増加させる上でむしろ不利となるからだ。
例えるなら、ある程度の速度で動いている物体を同じ方向へ向けて手で押してもなかなか加速させ辛いだろう。
しかしある程度の速度で手に向かってくる物体を押し出すなら大きく力をかけて押し出すことができるだろう。
ジェットエンジンにおいても同様の現象が発生するため、単軸式や同一方向で回転するタービンを用いた場合はこれに対処せねばならなかった。
すなわち、まっすぐにブレードに気流が向かってくるよう調節などせねばならず、そのために全長の長さがある程度必要だったりしたわけだ……従来型においては。
とくに回転速度が同じ単軸式においてはタービン形状である程度これを調整できるとはいえ、どう考えたって限度があったのだ。
しかし反転二軸式を採用する上では全長はむしろ短くしたほうが有利。
もはや未来においては短くせねばならないと言われるほど。
より大きな相対速度であればあるほど圧縮比は上がるからだ。
従来までは"非効率"の基となってしまっていた大気の流れをむしろ出力に変換できるのだから、そうしない手はない。
そしてそうすることで構造的に逆に有利になるということから、未来のジェットエンジンでは主流の1つとなりつつあった。
いわば構造的な難題を突破しつつ大幅に出力を向上するにはこうするしかないのである。
ちなみに重要なのはスワラの回転方向。
スワラの回転方向は前方のタービンと同じ方向である。
ゆえに発生した炎の渦はむしろ回転エネルギーが若干増加する形で反転するタービン側に向かう。
後方のタービンが受ける相対速度はさらに増加する結果となる。
エンジン全体はややコンパクトになったにも関わらず、圧縮比は大幅に向上。
全長が短く出来るスワラ燃焼方式と、全長が短い方が出力を向上させられる反転式タービン。
もはや最強の組み合わせの1つと言って過言ではない。
なんたってこいつはF-22、F-35、SU-57が採用するエンジンとほぼ同様の仕組みだ。
細かい部分……特に燃焼室などは異なる可能性があるが、少なくとも技術的にはその領域に足を踏み入れているはず。
それは一歩程度かもしれないが、もはや燃焼効率は21世紀の領域に入ってしまってすらいる。
だが構造的な無茶が全く無い。
後方のタービン軸は現在よりも短くなることで構造的に頑丈にできるからだ。
無論、構造をより強化するようシャフトを太くするなど改める必要性があるが、現段階においても特段不可能ではない。
ただ、ここに問題が1つある。
燃焼室を小型化したことで、より燃焼ガスがタービンと接近することだ。
異常燃焼などを考慮すると温度が660度を超えてしまう可能性がある。
少なくともタービンそのものだけとはいえ、それだけの温度のガスが到達する可能性がある。
そして出来れば燃焼温度は上げたい。
現在においては800度の燃焼温度で燃焼させたガスをタービンに移動させる間にやや冷やして500度としているCs-1だが、最低1000度に到達させたい。
スワラ方式なら内壁に高熱ガスは及ばないので内壁が融解しない温度に熱を封じ込めることが出来る。
問題はガスがぶつかるタービンである。
そこでこれまた最新鋭の方式でこれを乗り切ることにした。
タービンのフィルム冷却である。
タービン軸を空冷で冷やすことが出来るCs-1は、エンジンから得た風流の一部を空冷という形で冷却にも用いている。
つまりタービン内は中空で比較的冷温に近い大気のガスが中で流動して各部を冷却しているというわけだ。
ここに俺は着目した。
そこで新たにフィルム冷却を導入する。
タービン軸を流れる風流の一部をタービンまで移動するようにし、タービンに空けられた大量の微細な孔より噴出するようにする。
冷たい大気はより熱い大気の方向へと流れ込むのが熱力学の常識。
ゆえに熱量の高いタービン表面へと大気は流れていくこととなる。
冷たい大気はこの時、まるでタービンを保護する膜を展開。
こうすることで後方のタービンは1000度から約800度程度まで下がっている高圧ガスを受け止めても、タービン自体は600度を越えないままガスを膨張させて後方へと推力を発生させられる。
計算では1100度までのガスを発生させてもエンジンは融解しない。
全ての熱が封じ込められた状態であるからだ。
摩擦熱が問題化する場合は必要に応じてタービン軸すらフィルム冷却とする方法もあるが、ここは作り上げていくうちに検討していくことにする。
ここまで改良しきった影響により、外観は達磨型のような形状から一気に現代の……未来のジェットエンジンへと様変わりすることがわかっている。
ラフデザインで描いたジェットエンジンは半世紀先から取り寄せたエンジンそのもの。
合理性の極限点まで到達したことで……同じ領域に足を踏み込んだことで結果的にその意匠が酷似していた。
流体力学においてはよくあること。
極めれば自然と似る。
当然の摂理。
だが、こいつはアルミ合金を捨てないわけだ。
大量生産できる余地を残したままなわけだ。
これ以上の出力増加は望めないが、軽量ながら最大推力1440kgを発揮できるわけだ。
こいつを2604年までに実用化する。
未来の情報によって各部の構造には無茶がないよう出来ている。
NUPの力があれば微細な孔をタービンに空けるなんて容易。
G.Iの力があるからこそ、こいつは初めて完成できるわけだ。
こいつを双発とした戦闘機は計算上では最大速度は1170kmまで乗っかる。
後一歩で音にまで手が届くところまで来る。
恐らく水平飛行でなければ音を越える。
高度1万2000mまで上がって降下すれば、マッハ1.05程度まで普通にでるはず。
この領域ならMig-15に勝てるはずだ。
初期型のMig-17にだって十分勝負できる。
後はこいつを耐熱合金にしつつ、アフターバーナーを装備して音を置き去りにすればいいだけだ……
「面白い。本当にMr.シナノは面白い方だ。もはや貴方の知識は我々の理解の遥彼方にある。さっそくフィルム冷却型タービンなどの試験モデルを作成するとしましょう。これはとんだ大仕事だ。久々にしばらく眠れなくなりそうだ」
王立語で述べたG.Iの技術者はこちらの手を取り、握手を求める。
これが完成すれば文字通り、エンジン開発において主導権を握るのは間違いない。
NUP企業としても今後を考えたら挑まねばならない目標が出来たことを現していた。
もしこれが完成の暁には、戦車にも投入しよう……
モーター出力変換で1500馬力ぐらいにはなるはず。
できれば本気で最高時速70kmを目指したい。
完成すれば……の話だが、やらねばMig-15に負けうる。
作らねば。