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第107話:航空技術者は無謀を承知で量産する

「ダメだな……」


 皇暦2600年8月1日。

 今日までの日に形だけ完成したエンジンが出来上がる度に試験を行い、そして落胆してきた。


 状況は改善しない。

 1回の試験につき50~150箇所問題が見つかり、その度に改良する。

 それでも尚、ノズルの融解は止まらなかった。


 融解する原因は熱衝撃が安定しないためだ。

 今のところ融解に至る原理は二種類確認できている。


 1つはその部分に正確な比率の混合気のガスが行き渡らず、大気としての酸素濃度が上昇。


 そこに燃焼ガスが向かうことにより最大耐久温度を遥かにオーバーする高熱の熱だまりが発生。

 それが融解に繋がる。


 もう1つは急冷。

 同じくガスが行き渡らず該当部分の温度が急激に下がる。


 下がった後に再び高熱ガスが及びクラックが発生。

 そのクラック部分に熱だまりが発生して融解に繋がる。


 クラックはノズルを崩壊させるほどではなかったが、発生した場合にロケット本体の飛行に支障を与えうる姿勢制御の乱れを発生させる可能性があった。


 なんというか……現時点でそもそもが試験レベルで600秒動くという事自体が奇跡だ。


 いくらターボポンプの圧力が排気タービンより低いとはいえ、燃料ポンプその他の動作がどうにかなっているのが不思議で仕方ない。


 設計はきちんとしている。

 しかし精度がまるで出ていない。


 つまるところ各部の耐久性を保たせたことによる冗長性がかろうじて600秒を達成しているに過ぎなかった。


 今俺たちがやっている改良とはすなわち問題がある部分をさらに頑丈にするという事だが、このまま続けていると年を越える。


 もうだめだ。

 待てない。


「――やめよう」

「信濃技官? どうされました」

「試験はやめにしましょう。600秒は動く。400秒以内の試験なら融解は危険領域にまで達しない。ロケットは秒速300m付近で飛ぶ。400秒飛ぶならば射程を30kmほど短くして飛ばす。数打てば当たる作戦に変更しましょう。1日における製造可能数はいくつほどですか?」

「現段階なら2日に1本です。10月までに30発は確実に作れます」


 京芝の技術者はノートを見ながら開発状況を予測。


 もっとも重要な部位は彼らが製造しているため、ロケット製造本数は事実上、京芝と茅場の二社にかかっていると言える。


 ノズルはすでに量産体制。

 ノズルは1日1個できる。


 2日に1個はターボポンプに用いるためのタービンである。


 多くの工作機械が持ち込まれた艦内でこれを達成するために、エンジニア1000人という一度に失ったら皇国が敗北しかねない人数を集めた。


 製造可能数でいえばV-2より部品点数が大幅に少ない分、V-2の3日に1発より早く仕上がる。

 それも半分の人数で……だ。


 垂直に飛ばさないなどの理由でより簡易な構造となっているし、設計がより未来のものを利用している分、優秀であるからとも言えるが……


「GOOD。なら現時刻をもって一旦燃焼試験は終了。三段階目に移ります。飛行に問題があるほど大きな問題が発生しない限り、作るだけ作り、訓練用に何発か撃って状況を確かめて最終段階に移行。11月までにケリをつけましょう」

「了解です」

「融解はもう年単位で見ないとどうにもなりませんものね」


 多くの技術者達にとってそれは妥協であることはわかっていた。

 だが半年以内という条件で攻撃にまで持っていくにはそれしかない。


 30km射程を削り、数撃ちゃ当たる作戦で行く。

 それでも長門の3倍以上の射程なのだから、命中すれば第三帝国に少なくない衝撃を与えることだろう。


 ◇


「おい! 皇国人の旦那! この新聞の奴ぁ、付近の港をちょろちょろ飛んでる新世代オートジャイロだろ? 見てみろよ!」


 興奮した様子で俺に新聞を渡してきたのは港町のパン屋の店主だった。


 元共和国人で王立国家に8年前から移住してきてパン屋を開いているとのことだが、そのパン自体がとても美味しいので良く通っていた。


 その店主が見せ付けてきたものは……


「あらぁ……」


 自然と息が漏れるほどの何かだった。


 皇暦2600年8月11日。

 皇国は夏季五輪を強行した。


 撤回ができなかったのと同時に、撤退戦の最中に選手団を事前に避難させる形で皇国に呼び寄せ、平和の祭典に参加意向が強いユーグ各国の政府そして選手達の気持ちを汲んでのことであった。


 その開会式に現れたのはロ号もといキ70。

 何をやったのかというと聖火台への点火である。


 華僑の大陸のある方角から飛来したロ号は、五色絢爛な色彩のモコモコした綿か何かを用いた装飾が施され、見事なまでの鳳凰の姿となっていた。


 ご丁寧に足まで鳥を模した状態となっている。

 どうやってこれで着陸したのか謎だ。

 ヘタすると着陸台を作って飛ばした可能性すらある。


 足の先端には人間が片足で立つことができる小さな鉄板が装着され、トーチを片手に持った人間が競技場に降り立った鳳凰に掴まる形で聖火台まで運んでもらい、ホバリング状態のまま聖火台に点火したのだという事が記事内で解説されていた。


 記事を見る限り、機体上面に装着された鳳凰の翼は上下にパタパタ動いていたという。

 操縦席の類がまったく見えないが、どこに操縦者が乗っているのかわからない。


 キ70の操縦席は一般的なシングルローター方式ヘリコプターに順ずるが、写真のキ70はローター部分以外まるで形が違う。


 遠くから見れば鳥にしか見えないような着ぐるみを着せられていた。

 きっとパイロットは何度も練習を重ねてあんな危険な点火を成功させたのだろう。


 鳳凰の意匠は華僑のイメージと皇国のイメージが混ざっていたが、きっとこれは外交的な配慮なのだろうな。


 華僑の大陸のある方角から飛んできたというのも東亜三国共通の神獣だからなのだろう。


 俺にとってはハラハラするだけの映像が目に浮かぶが、最新鋭の回転翼機の登場に観客の度肝を抜いたのは間違いない。


 しかも甲高い音を響かせるジェット機だからな。

 年寄り連中がショックで心臓発作を起こさなかったか心配な所だ。


「――おやっさん。こいつはオートジャイロじゃない。ホバリング可能なヘリコプターだ」

「よくわからんな。何がちがうんだ」

「オートジャイロは空中で静止していられないのさ。だから各国の将官はアレを物欲しそうな目で見る。そのうちみんな使う時代がくる」

「昨日今日まで浮遊している存在なんざ気球と飛行船だったってぇえのに、恐ろしいもんだ」

「まったくそう思うよ。だから私は技術者としていつも恐怖と戦っている。同じ人間である以上、"我々ができることは我々以外でも可能だということだから"――ね」

「そうさなぁ……まあこの島を火の海にしないよう皇国のあんちゃんもがんばってくれよ。その新聞はサービスだ」

「はははは……」


 やや乾いた笑いでまくしたてつつパンと新聞を受け取りながらパン屋を立ち去りつつ恐怖した。

 排気タービン搭載のP-39の登場は間違いなくジェットエンジン開発促進に繋がる。


 Me262の登場は早い。

 なんとなくだがわかる。


 その前の段階で先手先手を打たねばならないのだ。


 加賀へと戻る帰り道に新聞を広げながら歩いていると、東京五輪の開会式にはゲーリングの姿があった様子でその事も新聞記事となっていた。


 なるほど。

 王立国家に降伏勧告をしている総統に対し、総攻撃を要求していたゲーリングは邪魔になったので皇国に飛ばして時間を稼いだか。


 総統はゲーリングの方が賢いことに気づいていない。

 俺達は現段階でやり直す前の世界よりもよほど多くの戦力を抱えている。

 ただしそれは歩兵人数であり、兵器の数ではない。


 そこが開戦当初最大のネックだった。

 ゆえに一旦撤退戦を行い、一番重要な兵士を引き上げさせて状況が変わるのを待つ事にしたのである。


 王立国家には今日までの間に大量の百式襲撃機などが持ち込まれているわけだが、百式襲撃機は統一民国と集の手助けもあって大量生産され、第三帝国の周辺に存在する各国にもそれなりの数が行き渡った。


 総統は包囲しようとして実は包囲されている事に気づいていない。

 オリンポス、アペニン、オスマニアの三国は近く行動に出る。


 ようやくではあるが、戦力が整ってきたからだ。

 ゲーリングを一時的にしろ皇国に追いやったのは失策だったな。


 とはいえ総統も馬鹿ではない。

 何かまだ戦力を隠している気がする。


 その何かがわからない。


 わざわざシュペーを利用して空母を叩こうとしたのは、皇国と王立国家が空母によって第三帝国の都市部を爆撃されるのを防ごうとしただけではないはずだ。


 それを理解したのは記事を見た数日後の事。


 ◇


「小野寺……中佐。昇進されていたんですね」

「信濃技官。結構前の話だぞ。気づいていなかったのか」


 小野寺中佐ははっきりとした目線をこちらに送りながら階級証を何度も指で叩いて中佐であることを示す。


 それは常識的に考えて失言ではあったが、特に怒る様子などはなかった。


「失礼ながらずっと少佐のままなのかと……」

「ここ数年ロンドンに埋もれていたからな。本国の人間が知らずとも仕方ないか」

「すみません」

「いやいい。気にするな」

「……それで本日はどのようなご用件で?」

「第三帝国海軍の新型空母についてだ」

「グラーフ・ツェッペリン? 空母グラーフ・ツェッペリンですか?」

「そうだ信濃技官。各地での情報収集の結果、第三帝国は空母グラーフ・ツェッペリンをすでに配備完了している事が判明した。いったいそれがどこに展開されているのかは不明」


 朝早くにロンドンから汽車に乗って現れた小野寺中佐は、西条の指示だからと俺に証拠となりうる資料と情報を渡してくる。


 彼の情報により、第三帝国海軍の戦力が俺の予想より若干上回るものであることが判明する。


「……確かこれまでの情報ではバルジの装着に手間取っていると聞いたのに……」

「皇暦2600年2月の段階で艤装は90%以上完成していたが、5月までにすべての作業が終了したとの事だ。どうも王立国家の技師に裏切り者がいて協力したらしい」


 誰だ一体……グラーフ・ツェッペリンを完成させて得する事など1つもないだろうに。


 小野寺中佐の情報はこれまでかなり正確だった。

 今回の情報も嘘だとは思えない。


 俺に伝えてくるのは常に信頼における情報だけ。

 グラーフ・ツェッペリンがすでに実戦に出たのは間違いないのだろう。


「それだけじゃない、皇国にも裏切り者がいたのか、古いデータだが空母赤城の設計図があちらに渡っている様子だ」

「ああ、それは海軍上層部が渡したんですよ」

「なんだって? それはどういうことか」

「宮本司令などが詳しいはずです。元々グラーフツェッペリンを建造するといった時、当時まともに空母を建造できる国は限られていた。皇国はその時に防共協定を結んでいた関係で当時の三段式空母の赤城と、鳳翔の設計図その他を譲り渡しています」

「チッ、それで合点が行った。どうして赤城だけあんなに被害が大きく、弱点を集中的に爆撃されたのか。三段式から通常式になっても各部の配置はそう変わらん。奴らは知っていたんじゃないか! 海軍は赤城をつれてくるべきではなかったんだ!」


 小野寺中佐のやりきれない気持ちはよくわかる。


 ただ、赤城にはエース級パイロットを多く乗せてずっと訓練してきたこともあり、実戦参加させるにあたりこれら一連の人員を例えば直前に翔鶴に乗せかえるなんてのは、作戦展開に支障が出そうなのでできなかったのだ。


 それに、条約上の問題もある。

 表向き皇国は軍縮条約を破っていないとされている。


 実際は王立国家などから黙認されているだけで破っているのだが、体裁の面から考えて条約無視の戦力を地中海や大西洋に持ち込むのは難しい。


 わかっていてもやめられない事情はあった。

 俺はそれを陸軍として理解できなくもない立場として彼に説明する。


「――まあ、早々に条約を破っていたことを認めてしまえばよかったんですよ。ただその発表は首相を通して行わねばならない、条約から離脱していたとはいえ、反故にしたのは事実。そうするとなぜか我ら陸軍が約束を破ったような雰囲気になる。首相としても立場上それは難しかったことでしょう」

「つまりは、戦況がある程度進んだ有耶無耶な状況で、新鋭空母と詐称して持ち込む予定だったということか」

「絶対にそうだとは言いませんが、そうなんでしょうね」

「他人の尻拭いをしなければならんとはなんとも気分が悪い。まあとにかくだ。第三帝国にはそれとは別にもう1隻空母があるのだよ」

「ペーター・シュトラッサーですか」

「さすが情報通だな信濃技官。奴らはこの二隻をより円滑に運用するため、できるだけ我々の空母を減らしたい様子だシュペーによるおびき寄せ作戦もその一環とされる」


 小野寺中佐が差し出したのは密かに進水式が執り行われていた空母Bの姿。

 ペーター・シュトラッサーである。


「艤装はまだなんですね?」

「1年半ほどかかる。来年末までにはこいつも近海に姿を現すだろう」

「二隻だけなら何とかなりますよ」

「そうだといいんだがな……」


 小野寺中佐は半信半疑の様子だが、俺に特に恐怖感は感じない。


 それなりに優秀だとされるカタパルトを装備した空母が二隻あったとしても、それを活用する航空機が第三帝国にはない。


 P-39はその構造上空母運用は絶対にできない。

 BF109の海軍運用型があったとしても百式戦どころか零の敵じゃない。


 第三帝国はおそらく二隻の空母は温存してこちらの空母を減らすだけ減らし、そして本土爆撃のため等に活用する程度で収まる。


 Me210を空母から飛ばすというなら話は別なのだが、Me210の翼形状からいって揚力が足りない。


 圧縮空気式カタパルトでは重量超過と思われるが、仮に油圧式カタパルトを手に入れていたとしても初速130km程度ではあの機体は飛べない。


 専用機を開発するなら別だが、第三帝国は派生機を作るのがあの国の工業スタイル的に難しい。


 今後開発されるであろう最新鋭戦闘機の方が怖いが、現状ではどうにかなるだろう。

 別に楽観的に見ているわけじゃないさ。

 現実的に見てもそうなのだと言えるだけの確信があるだけだ。


 ――そして小野寺中佐に対して俺はそんなことをありのままに伝え、彼は多少俺の話の信じた様子で去っていった。


 ◇


「よいか諸君。今日集まってもらった諸君らはこれより始まる反抗作戦に従事することとなる。いいか、これは玉砕ではない! 断じて玉砕ではない!」


 静かな港町に作戦司令官の拡声器による声が響き渡る。

 彼の背後にはもはや空母と言っていいのかわからぬ加賀の姿があった。


「――本作戦においては本国より最新鋭兵器を揃えられるだけ準備した。我々にできることは可能な限り進軍し、連合王国の支線塔を奪還することにある。この支線塔が我が国におけるさらなる新兵器を支えるための通信拠点となるわけだが、我々には撤退も許されている。突撃して玉砕するようなことは認められていない。必要な限り前に出て、そして将来の戦局を左右する拠点を取り戻すのだ! そのために我々は今日の日まで準備にあけくれてきた。今ここには十分な弾薬がある。十分な食料がある。十分な心持の兵つわものがいる! この作戦では少なからず死傷者を出すことだろう。だが決してそれは無駄死にではない。我らの屍の真上を、皇国の新型ロケット兵器が飛び越えて第三帝国を一喝するのだ! 我々が奪還に成功すれば、以降において大量の血を流すことはなくなるのである。つまり我々こそが、第三帝国に対する最初で最後の犠牲となるのである。後に続く者達のためにも命大事に連合王国の地に足を踏み入れるのだッ!!!」

「おおぉぉぉおおおォオオオ!」

「見よ! これが世界に先駆けて我が皇国が開発したロケット兵器である。艦砲射撃の3倍の射程を誇りつつ、生半可な砲弾よりも威力を上回る攻撃兵器。この改良型こそ我らの決戦兵器たりえるものだ!」


 轟音と共に空に向かって巨大な閃光を後部よりほとばしらせながら飛ぶのは、俺から言わせれば完成状態8割といった程度の新型ロケット兵器であった。


 皇暦2600年9月30日


 キ47などの活躍によりロンドン空襲を退けた王立国家は、ついに地中海協定連合軍と共に反抗作戦に出ることとなった。


 この日までに新たに24機のキ70回転翼機が到着。

 これらのうち20機がガンシップであり、残り4機が通常タイプ。

 つまり現時点の戦力で通常試験型が5機あり、23機のガンシップが存在する。


 5機には加賀艦内で急遽製造したアルミ合金のフレームと木板で形成された大型のゴンドラを吊り下げる予定。


 その上であることに従事してもらう。

 5機のロ号は外装として簡単なアルミ板を接着。


 その上でアルミ板を白く塗り、そして大きな赤い十字を描いた。

 まるでシュヴィーツと正反対の色合いだが、これでいいのである。


 5機のロ号が行うのは負傷者の輸送。


 まだ助かるかもしれない命を紡ぐために野戦病院まで重傷者を運ぶのだ。

 ヘリコプターが救護用として使われたのはこの大戦から。


 当然にしてシコルスキーR-4がその任務に従事した。


 これによって本来ならその場で苦しみながら息絶えるだけだった多くの兵士の命を紡いだNUPは、以降Medevacという専門部隊を組織。


 以降世界中にこのヘリコプター救護部隊は広がりを見せる。

 キ70は大型のゴンドラに約5名の負傷者を担架ごと収容できる構造。


 本来は機内に収容したい所だが、なにぶん実験機の特性が強いゆえにこんなむちゃくちゃな方法しか思いつかなかった。


 それでもすでにロンドン空襲にて多くの負傷者を救護し、王立国家の新聞にてこんな記事すら書かれるほどだった。


――ライト兄弟は大きな過ちを犯した。回転翼機という存在は無駄でしかないという話だが、今日我々は皇国が誇る最新鋭航空機に多くの命を救われたのである。

 滑走路が不要でホバリングし続けられる回転翼機は人命救助など多岐にわたる分野にて活躍の機会があり、今後世界に必要性を訴えられる存在として認知されていくだろう。

  少なくとも、多くのロンドン市民が命を繋ごうと奮闘するその姿を目撃した――


 5機のキ70は、後に皇国にてDr.ヘリなどと呼称される救命活動を行い、その結果各国からは何としてでも機体がほしいと渇望されるようになっていた。


 急いで手当てすれば助かるかもしれないという人間を病院まで迅速に運ぶ。


 俺がやり直す頃には当たり前であるソレは現時点で当たり前ではないのだから当然だ。

 できる限り早い段階でそれを当たり前にする。


 俺は皇国にて何人ものNUPの負傷者がR-4にて運ばれていく様子を見た。

 今度は皇国もそうできるようにする。

 皇国以外の人間もそうなれるような環境にする。


 そしてそんな当たり前ではない存在のもう1つが今、空に向かって飛んでいる。


 士気高揚を目的に加賀の甲板より飛行させたロケットは、特に空中で爆発することなく200秒ほど燃焼できる時間の燃料を積載して適当に飛ばした。


 視界から消え去るまで飛べばいいとのことだったので、本当に適当に飛ばしたが、40度ぐらいの角度で放物線を描いて飛んでいった。


 これが発展すれば本当に第三帝国に直接攻撃が可能になる。

 支線塔奪還はビスマルク攻撃作戦のための陽動も兼ねてはいるが、飛んでいった姿を見た彼らの覚悟が決まったのは目を見ればわかる。


「諸君、それでは参ろうか。皇国の明日のために!」

「皇国の明日のためにッ!!!」


 やり直す前の世界と違うことが1つ。

 今の皇国は勝つために戦っているわけではない。

 そのため、指揮官含めて勝利のためにとは叫ばない。


 皇国においてこの戦争に勝ちというものはない。

 西条も表向き言うように、俺達は負けないために戦っているのだ。

 この戦いの先、皇国にあるのは停戦または終戦であり、戦勝ではない。


 国の存続のために今は血を流す。

 技術者は彼らの血が少しでも少なくなるよう努力している。


 多くの百式襲撃機の配備が整ったことにより包囲していた第三帝国は包囲される。

 奴らが状況打開のために海軍戦力を出した所が勝負。

 すでに長門と陸奥は旅立った。


 120km先の奴らを射抜く。

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[一言] 大和の射程が40kmだから約3倍か...。 空母と艦載機の台頭で、もともと要らない子だったけど。
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